物騒ですねえ。
[触手とは感覚を任意に共有出来る。
濡れた表面に落ちる呼気の熱さ、声を押し殺すわずかな呻き、彼の得手である脚の震え、ぎりぎりのところで耐える彼の、虚勢の笑みを崩すのは簡単だ。
しかし親指まで下げて見せる意地は感嘆に値したから、頭を撫でるように、臀部をなめくじのような触手でぐちゅぐちゅと舐り回すだけに留めた]
少し、休憩にしましょうか。
[本を閉じて腰を上げると、座っていた椅子が呻いた。
「椅子」──もとい心が壊れた他の隊員達の身体を積み上げた山を飛び降りると、背を向けて部屋の出口へと歩く。
触手を解くつもりはない。ただ、男がこの部屋を一時的に去るだけだ。
時として気の緩みを与えることも、調教には必要だ。どこにいても、触手が得た情報は手に入る。
不意に、振り返り]
そうそう。貴方を助けるために特別部隊が編成されて、こちらに向かっているようですよ。
何人ここまで辿り着けるか、楽しみですね。
[付け加えて、ばたんと、扉を閉めた]
(9) 2016/06/04(Sat) 00時頃