[ 黒い影は『何かの強い怨念』を持っているかのように、
この街に住む『パルック』という男を引きずりこんでしまったという。
彼はその男を見たことがないのだが、それなりに名の知れた男のようでパルックの失踪の噂は瞬く間に街中を駆け回っていた>>#0
人通りの少なくなった街を歩く。
遠巻きに突き刺さるニンゲン達の視線が、いつも以上に痛い。
どうせ亜人を疑っているのだろう。
それが魔法が使えないリザードマンだろうが、なんだろうが]
( ……昨日、買い物を済ませておいて正解だったかもしれん )
[どこか冷静にそんなことを思った。
――そういえば、と昨日聴こえた狼の鳴き声を思い出す。
あれは、この前店に来た黒い人狼の声だろうか。
モスキートが仲良くなった「狼さん」だろうか。
黒い人狼には、野菜の礼をしなくてはならない。
彼はゆっくりとあてども無く街を歩いて、南へ**]
(9) 2015/01/11(Sun) 04時半頃