─回想/6日目・仮想空間内、トレイルの部屋─
[彼はもう寝ているだろうと、見当をつけ音を立てないように開いた扉の向こう側>>6:-94、呼び声に少し驚いたように動きが止まり。
瞬いた双眸を薄っすらと細め、そのまま部屋に入った。後手に戸を閉める]
…なんだ。まだ起きて、──、
[言いかけ。ふと、立ち上がったトレイル>>6:-95の、常とは違う様子に、続けかけた言葉を自然と飲み下す。
彼の唇から、切に、吐き出されたような、言葉。
瞬間直ぐには、不意に感情の最奥を衝くように放り込まれたそれに、反応ができない。
緩と双眸が見開かれ、口が開いて、詰まった呼吸の末、思わず掠れた呼気が漏れた。
これまで重ねられてきた甘さに、言葉に、何よりも今の彼の態度に、自分への言い訳など最早通じず無力でしかないのだと、
理解を、したような一拍。
誤魔化しようもなく、首から頬まで駆け上った熱。赤面し、しかし棒立ちになってしまったような体は咄嗟に動かすこともできず。
あまりの顔の熱さの所為もあるだろうか、トレイルを映しこんでいた目の縁にじわりと覚えた湿り気に、漸く小さく揺れた左手が上がって、顔を覆い。声にならない声が息になって掌に滲む]
(8) yakan 2014/03/27(Thu) 20時頃