………シュウルゥ、すまない。
すまないな……
[謝罪を途切れてしまった子守唄の代わりに告げて、目覚めぬ彼の顔を覗き込む。
首から流れる朱を見て、自身の舌に歯を強く立てた。
せめて目覚めた時に怠くならない様に、と願いながら傷の治癒を助けるべく、切れた舌でシュウルゥの唇を割り開き、熱と共に歯茎を、口蓋を軟体に這わせながら血液を注ぐ。
一時的な死に似た惰眠を貪るシュウルゥの舌も、口腔も酷く冷たい。
眼瞼を下げ、彼を温める様に一方的な愛撫を繰り返していたが、ドールの視線に気付き、唇を離す。
シュウルゥの動向を監視する為に自分が放った、呪いを上書きした呪術人形。]
は……、彼を運んであげて。
アムネシアへ、……
[朱混じりの銀糸を指で拭い、シュウルゥの身をドールに託した。
一方、同じく地面に寝ているラルフを背負う。
この時は未だ、ラルフが掛けられた呪いに――気付けていない。
城と異なる方角に運ばれてゆく彼の背中に、穏やかな声音で届かぬ「おやすみ」を送る。
指に絡んだままの漆黒なる髪の毛を握り込んだ**]
(8) 2014/02/04(Tue) 08時半頃