―廃ビルを経て―
[仲間の助けを借りて医療班へと拾われたケイイチは、まず体中を洗浄され、隅々まで検査された。
結果は、陰部以外は異常なし。
肥大した陰茎を戻す手段は不明だが、趣味の悪い悪戯だろうと思われる。暫くは医務室に留まらせ、様子を見るように。
――という報告をするように担当の看護師を洗脳できたほど、能力を成長させたのがここ数日の成果と言える。
お陰で今は本部内でも自由に行動ができる。人の目を誤魔化して、夜中にちょっとした散歩まで出たこともある。]
ふふ、順調順調
[検査という潜伏期間を経て、ケイイチの中に潜む魔は、彼の記憶と能力の大半を掌握することに成功した。
特に能力に関しては、宿主よりも習熟したと言っていいだろう。今では少しのハミングから音波を操作して、催眠のようなものをかけることまで可能となった。
上層部からの音声通話を改ざんし、「芙蓉」という名の呪術師を招き入れるように手助けしたのもその一助。
攻撃に拘りさえしなければ、これほど使える能力もないというのに。全く宿主は随分と勿体ない事をしてきたものだ、と魔はほくそ笑んだ。]
(8) 2018/02/21(Wed) 01時頃