――ッ、げほ、……、そうだ、な。
樫木の方が、ずっと生きていくのが上手そうだ。
………、俺も樫木くらい口が回れば、緊張しても上手く話せるんだろうなぁ。
[寄せた眉はすっかり解けて、今は情けなく下がるばかり。
彼の話す西訛りの言葉を聞きながら、立て板に水とはまさにこの事かと思いつつも、ぽつりと呟いた言葉は本音。
そう、樫木くらい口が回り、今のように面白い冗談の一つも飛ばせる質をしていたのなら(樫木は真剣なのかもしれないが)、"あの人" の事も退屈させずに済むのだろうかと。
此方に身を乗り出して斜め前の座席を見やる樫木>>437の後頭部に、僅かな羨望を滲ませた視線を向けつつ考えるのはそんな事で。
そうして通路を挟んだ逆側から飛んできた声に視線を向ければ、そこにあるのは先程見かけた見知らぬ顔と、隣には何度か見た事のある顔>>428。
成る程、見覚えの無い方は "なめたろ"で、見覚えの無い方は……何となく "カイロ" よりは "キール" ぽいと結論付ければ、その名前だけは頭に叩き込んでおこう。
そんなこんなで漸くバスが出発すれば、窓の外の景色は緩やかに変わっていく。]**
(8) 2015/11/20(Fri) 01時半頃