[>>7聞こえた声にぴくりと肩が揺れたのは、近くにいた伸睦には気付かれてしまっただろうか。
きゅっとすがる様に太刀の鞘を抱く手に力を込めて、少しの間沈黙が降りる。]
……雪、知らないもん。
雇主が死んだのに、東軍の武将に満身創痍で単身挑むような忍びなんて。
[怒ったような、拗ねたような口調。
顔は意地でも見せなかった。伸睦には全てお見通しだったかもしれないが。
聞きたくなかった声だ。
来ると分かっていても、出来るなら聞きたくなかった声だ。]
雪、知らないもん。
[小太郎が、自分を誰かと重ねてみていることにはうすうす気づいていた。
それが誰かは知らなくとも、人の意識の内に認められることを請い求め続けてきた子供は、自分に向けられたようで自分を見ていない忍びの視線を敏感に感じ取っていた。
それを一度も確かめたことはなくとも。*]
(8) souya 2015/05/23(Sat) 11時半頃