―――嘘、なんで、なんでそんなこと、言うの。
なんで、俺が言ったこと、そんなに気に障った?
ここから、俺と一緒には帰ってくれないの、なんで。
[かくんと、首が後ろに反って、濡れた頬を拭う気力もない顔が、呆然と麻倉の顔を見上げる。
その首は何度も何度も、いやだと。信じないと、横に振って。
誰かに捨てられたことなどない、末っ子の甘ったれは。
誰よりも捨てられたくない人を目の前に。]
……ねえ、失くしたのが、いけなかったの。
[冷たく降る台詞を認めたくない感情が、必死でその理由を、「飽きた」以外の、理由を、原因を、混乱する頭の中で、探して探して探して。
自分の手の甲の。浅い傷を見て、留めて。あぁ、と。乾いた声を漏らした。
右手が麻倉の落としたナイフへ伸びて、此方を向いた刃先を摘んで引き寄せて。それから、その柄を握り締める。]
(7) 2015/04/04(Sat) 02時頃