は、はは。実験、される側に回るなん、て、久しぶりですね……。
[男は、扉に背を向けたまま、遠い過去を思い出す。
それは、『実験』と呼ばれていいものなのかどうなのか。ただ、一つ言えること。白衣を着た男性に告げられた言葉]
あの時、は、ちょっと不快、に感じたものです、が。感染しているか否かが、本当、に、分かるのであれば。
これほど、助かるものはありませ、ん。
[何しろ男自身でさえ、感染後の経緯をじっくりと観察できたことがないのだから。
男の体に、おそらくウイルス、が、入り込んでいるのかどうかは明確には分からない。
ただ……]
……仮に、感染していたとした、ら。
俺は、どうすれ、ば……
[男はかすかに思案しながら、じっと、リンダの結果を待つ。
疲労しきった……いや、疲労しきっているはず、の腕の震えは……
まだ、止むことがない]
―生物学教室の前で・了―
(6) 2011/12/03(Sat) 01時頃