[ピスティオ、と叫び声がして、跳ね起きました。
昨夜はあれからかぶのスープとバターの香るローストを少しいただいてからというもの、部屋に戻ってもほとんど眠れずにベッドの上に転がってばかりだったのですが、その声は警鐘のようによく響いたものですから、寝不足などすっかり打ち払ってしまいました。
まさか。ピスティオが。それはあたしの中で、一番あってほしくはないことでした。
いいえ、誰であってもあってほしくはないのですが、それでも昨日の話の中から、ピスティオがいなくなるのは本当に喜ばしくないことだったのです。
あたしは身支度も整えずに部屋の扉をあけて――]
……マリオ?
[隣の部屋から、ひどく嫌なにおいがする気がして、足を止めました。
ほんの少しだけ開いたドア。僅かに赤いものが、隙間から見えて、見えて、見え]
(5) 2018/07/29(Sun) 14時頃