―5月3日朝6時頃、第二封鎖線付近―
[昨日の雨が嘘だったかのように晴れ渡った空。囀りながら梢から飛び立つ小鳥の声のみが静寂の中響く。もうそろそろ処刑の件は知れ渡り始めている事だろう――老いた祖父母とそれにマドカ、三人と顔を合わせる事が出来ずにここへと逃げ出してきた。
逃げた所で何があるというのか。この糞下らない悪夢みたいな世界からは逃げることなんて出来やしないのに。一昨日のトレイルの言葉をふと思い出す――非常な現実。
ああ、まったく腹立たしい事だけれど、今だけは同意してやるよ。俺もそんなもの大嫌いだ。
物資のヘリがやって来るまでにはまだ時間はある。ボランティアは――恐らく期待はできないだろう。のろのろと、片付けられていないままの荷物へと寄りかかって空を見上げる。飛ぶ鳥のように何処かに逃げ出せればいいのにと]
(5) 2013/07/23(Tue) 00時頃