【人】 宗主 雪代

[胸を一度突いただけでは、
死ぬまでに時間がかかるだろう。
解っていても、彼女の胸元を刺し貫いた包丁はそのまま。
下ろしたての着物が汚れるのは、困るから。

一歩、二歩。
よろめく様に交代して。
そうして、ある種悲しげな瞳で、それを見下ろす]


　さようなら。
　…………すまないね。

[白々しい謝罪は、言うべきでない。
解っていても、つい口から滑り落ちて。

一つ舌を打てば、踵を返す。
もう、此処に居る必要は無いのだから]

(4) 2017/05/22(Mon) 00時半頃