―201X年3月21日・AM11:50・白鵬高校1年2組教室―
[左から右へと抜けていくだけの教師の話も漸く終わり――途端に色鮮やかにざわめき始める教室の空気の中、目の前の彼>>2の首が傾ぐのを見て螢一は目を瞬かせた。
明らかに眠っていただろうその姿勢、あちらこちらから聞こえる話し声に混じって耳に届くどこか気の抜けた風にも聞こえる呟き。
マイペースだなと……級友の背中を見て苦笑する。
けれど気持ちは分からなくもない。
ポケットの中の右手、掌に握りこんだ小さな鍵を弄びながら思う――退屈な休み中の心得なんて、誰も聞いちゃいないに決まっているのだと。
下塗りを終えたばかりのキャンバスの事、あの無人の美術準備室の事。
自分も居眠りをしていた彼の事は言えない程度には心ここにあらずだ]
いい夢見れた?
[取り敢えずは購買で昼食でも調達しようかと立ち上がり、扉へと向かう通り過ぎざまに蒼真へと声を掛けた]
(4) 2015/03/28(Sat) 22時頃