ま、人間それぞれ違った命の流れがあるからなぁ。その流れを滞りなく死者に分け与えるには、ちいとばかし時間がかかる。
長く生きてる悪魔の知恵が詰まってんのが、お前さんが紡いでくれた糸だ。
[アシ公と呼んだねずみをもう一度指先で撫で、男はそんな呟きを落とした。
此度の儀式へ参加する夕月の者は五人。
その者達を男が管理する屋敷へと暫し住まわせるのは、儀式用に紡ぐ糸に、先ほど口にした人間それぞれの命の流れを染み込ませる為だ。
用意された糸はまるで区切る目印の様に一層細くなっている箇所が四つあり、区切られた箇所からの糸は、それぞれほんの少しだけ紡ぎ方が変わっている。
糸車を走らせる前に口にさせたブルーノの血を緋色の糸として生成していくねずみは、屋敷にいる夕月の者達の命の流れを読み、それに合わせて紡ぎ方を変えているのだ。]
(4) 2015/01/15(Thu) 21時半頃