[闇に紛れて存在する日陰のいきものとはいえど、この魔族の根城は古くからある「アヤカシ」のイメージとは聊か異なったつくりをしている。
気紛れでコレクションする「人間」の中で魔と相性の良い者の持つ技術を取り入れた私室は複数の高画質モニターやスイッチが沢山ついた機械に彩られ、一見しただけではここが魔族の根城だとは気づかれまい。
革張りの上質な椅子に腰かける和装の男も、元が吸盤を持つ軟体動物の化身には到底見えないだろう。
その名残の長い指をひらひらとさせ、卓上のスイッチを入れると、モニターに一人の男を映し出す。
四肢をぬめぬめとしたグロテスクな触手に戒められ、恥部を曝け出した人間を見て、男はにっこりと微笑んだ。]
よーし、じゃあ自己紹介言ってみようか?
上手に言えたら褒めてあげるよ。
名前と年齢と――そうだな、今までの経験人数聞いちゃおうかな。
[モニターの向こうには、ホログラム化した男が映っている。
その視線から逃れようにも、首を背けられないように繊毛のような触手が頬近くに控えているだけに困難だろう。
男はただじっと、若い「対魔忍」が口を開くのを微笑んで待っている。**]
(2) 2018/02/18(Sun) 22時半頃