ー回想・数年前ー
[何度来てもこの大聖堂は素晴らしいものだと思う。来るたびに心が洗われる心地になる。
今朝の礼拝の説教を担当するのはチャールズである。他の神父の説教は適当に聞いているというわけではないが、いつも以上に身が入る。
礼拝がまさに始まろうという直前、大聖堂にのんびりと入ってきて自分の横に座る者があった。
ヴェスパタインはその人物を見て顔を顰める。ホレーショーか…。自分は彼の不真面目な態度が気に入らなく、正直あまり関わり合いになりたくないとすら考えている。
やがて礼拝が始まりチャールズの説教が行われる。
よもや居眠りでもしてはいまいなと彼は横のホレーショーをちらりと見る。
そしてハッとした。ホレーショーは居眠りするどころか真っ直ぐに説教するチャールズの方を見つめており、その瞳の色はどこか見覚えのあるものだった。
そうだ、父を崇拝していた兄のものに似ている。当時はまだヴェスパタインは父と兄の関係に気づいていなかったために、それを尊敬だと解釈していた。
ホレーショーは適当な人間だと思っていたのを彼は見直した。
礼拝後ヴェスパタインはホレーショーに声をかけた。]
今日の説教、良かったな。
(2) mikeru 2014/07/01(Tue) 15時頃