[ 一つの体に二つの心、そして、命。
人としての精神と命を喪えば、氷の精に祝福された者としての精神と命が目覚める。
他の魔術の類は全て捨てて、氷の王子の末裔として氷雪の力を行使する。冷たい体温をもつ女、言わば「氷の魔女」となる。
それこそがジリヤが「特攻」に志願した理由だった。
一つ目を失くしても、二つ目の命でその場にあるもの全て凍らせる為。
祖母はジリヤの両親が殺された時に力を目覚めさせた。
それから森の奥深く、静かに暮らしていた祖母はしかし、戦争が始まってすぐに白軍に目をつけられ、軍部に連れて行かれた上、力を酷使したせいで死んだ。
ジリヤは復讐のために剣をとった。神獣を操る素養はなかったし、何よりも騎士ノアに憧れていたから――女性でありながら戦場に身を投じ、国王に勝利をささげていた戦乙女に。
だからジリヤは黒軍に走った。
ノアの前で己の力を話し、駒となることを誓った。
――漆黒の戦乙女はただ、妖しげな笑みを浮かべていた。]
(0) 2014/07/20(Sun) 07時半頃