― 廃墟 ―
[幟乃の表情が、明るくなりました。今度こそ古びたこの民家の前で、足音が止まったのです。映る影をじーっと観察します。入ってくるのは女王だと思い込んでおりますから、何の警戒もなしです。]
───…
[女王が中へ入ってくれば、幟乃は大きな瞳をより一層開きました。何の警戒もなしでしたが、仮に敵が入ってきたとしても幟乃といったら死なない自信があったのです。…それに、入ってくるのは女王だと信じていましたから。
チョコレート色の肌も、黒髪も、艶やかで…遠目から見たあの時よりも女王はずっと綺麗でした。]
いらっしゃい、暇で美しい女王サマ?
全く、待ちくたびれたよ。
[にっと口角を吊り上げると、今度は不貞腐れたような顔をして幟乃はカウントした数を言いました。]
此処に来るまで1124秒。
[むっとするとゆっくり立ち上がります。そして、一歩また一歩と女王に近付きました。]
(0) 2015/01/01(Thu) 10時半頃