あのね、あの……私ね、恋をしたことが、ないのよ。
恋愛感情っていうのが、どういうものなのか、わからないの。
[この歳にして、である。あんな小説を書いておいて、である]
いつもね、付き合ってほしいって、言われて。
嫌いじゃないし、まあいいかって。
付き合ってるうちに、好きになれるんじゃないかって。
そう思って付き合ってみて……でも、いつもやっぱり駄目で。
私の内面に幻滅したっていうのもそうだけど、でも、私がこんなだから、冷められちゃったのかもしれないわ。
[そう言って、女は自嘲したように笑う]
だからね、振られても、悲しくなんてなかったの。恨んだりも、してないわ。
腹いせっていうのは……そうね、なんて言ったらいいのかしら。
一番近い感情を選ぶなら、イラッとした、というのが近いかもしれないわね。振り回されたみたいで、腹が立ったのよ。そっちから言っておいて、勝手なこと言ってるって、むかついたんだわ。
[他人事のようにそう言って、ミナカタの顔を覗き込むようにして首を傾げた]
幻滅した?
(+180) 2013/12/14(Sat) 22時頃