[ミナカタが言っているのは、今文芸誌で連載している小説だった。
デビュー後初の小説は、リレーのように登場人物の中から主人公が次々にバトンタッチして、結局今も続いている。
話そのものは一話完結なので、締めの一冊さえ書けば、いつでもおしまいにしてしまえるシリーズだ。
少し前まで、そのシリーズの連載に加えて、デビュー作の映画化にあわせての続編書き下ろしなんてことまでやらされていたので、女の修羅場は極限状態だったわけだが。
無理して書いている。その指摘が痛い。
だって……だって、私は……。
けれど結局、言葉にはできなくて]
……!
[ネックレスを手にとって、こちらに向き直ったミナカタ。
その言葉に凍りついた。
示されたネックレスが目に入らない。ミナカタの顔しか見えない]
……どうして?
[口をついて出たのはそんな言葉]
どうして、私なの。
どうして、そんなこと言えるの。
(+163) 2013/12/14(Sat) 21時頃