ああ、ずっと見ているさ。
君がおれに、こんなふうに会いに来てくれる限りはね?
[彼女との関係を何か問われたら、お得意さんのお宅の娘さん、と答えることになるのだろう。
ただ、そんな簡素な、言葉通りの意味で捉えられるような、シンプルな関係ではない。
お得意さんの娘さんだからって、花屋はふつう茶は出さないし、どころか訪れた側に淹れさせやしない。
じゃあ何か、と言われたら、困る。いつぞや幼妻か青田買か、なんてからかわれたこともあった。
時折もっと幼い、近所の女の子が、「おおきくなったらおにいさんとけっこんするの」なんていじらしい告白を――彼女のママから世間話で――聞いたこともあったけれど、このシルクがそんなことを、言ったろうか?
記憶から抜けてしまったのかもしれないし、見えないところでは想い抱えられているかもしれないが、おれのことよりずっと、走ることが好きそうな女の子だ。
そんな噂、一笑に付されてしまいそうだった。]
(+106) 2015/12/19(Sat) 01時頃