― →部屋へ ―
[貴方は果たして、手を繋ぐ事を許してくれただろうか。
……余程強い拒絶をされない限りは、あの手は離せなかっただろうし、貴方が答えに詰まったとしても半ば無理やり繋いだろうから、きっと繋いでいたのだと思う。
貴方とともに、明るいロッジの中を進み。
人に会わなかった事に安堵しながら再び部屋の中へと戻ったのなら、扉がしまった部屋の中、しんと静かになった空気にぎくりと心臓が跳ねた。]
……あ、あぁ。
[そう、今は部屋に "ふたりきり" 。
先程だってそうだったのだが、あの時と今では貴方と俺との関係が全く変わってしまっている。
この部屋に響く声も、吐息も。俺と貴方の二人分しかないのだという事に気付いたのなら、急に襲ってきた緊張に息を呑む。
暖房を付けてクローゼットに向かう貴方の背を視線で追い、離れてしまった手のひらをそっと見つめ。
……次は、また手袋無しでが良いな、なんて。一度枷の外れた欲は、どんどん溢れてくるばかり。
けれど、その何処と無い気まずさも貴方のお陰で吹っ飛んでしまった――上着の外れた華奢な背から飛んできた貴方の問いに、俺はぽかんと口を開ける他に、なく。]
(+98) 2015/11/28(Sat) 20時半頃