[戦いは一進一退の攻防を繰り広げた。バイロンの言う通り老いがその身に寄るハワードであったが身体能力の低下と引き換えにその技は至極の高みにあった。
過去二度の戦いとは違う。バイロンの攻撃は空を切りハワードの拳はバイロンを捉えた。落ち葉が水を流れるが如く吸血鬼の攻撃は悉くハワードの身を滑り抜けそのたびにバイロンに身体には小さな傷が蓄えられていく。
バイロンは笑った、よくここまでたどり着いた、と。
そして吸血鬼はその暴虐の限りをハワードへと叩き込まんとし、ハワードは拳を極めた必殺の一撃──死神の鎌を振るった。
そう、それは互いにその死を予感させる一撃を交差させた瞬間だった。]
『…………とうさま?』
[声と共にバイロンの意識が彼を父とよんだ小さな娘に流れた。
その次の瞬間……バイロンの爪はハワードの胸元を掠め、鎌がバイロンの首筋を切り裂いた。
……だが……浅い。
ハワードもまた突然現われた幼子にその意識を僅かに奪われたせいで力の何割かが霧散していた。]
(+85) 2014/11/12(Wed) 12時半頃