[顔を横に反らせていても突き刺さるイアンの視線に、なおさら正面を向けるはずがなく>>+72
月光を移して揺らめく湯の水面に止めどなく視線を彷徨わせながら、軽く深呼吸をして胸の動機を収めようと努める。
掴まれた腕は、振りほどこうと思えば振りほどけるだろう。
ちら、と湯の上で掴まれたままの自分の左腕を一瞥して。
自分に振り払う意志が無いことを確かめる。
捕まえたいのか、捕まえられたいのか。
それとも森の中で逃げるイアンを捕まえたつもりだったのに、本当はあの瞬間から捕まえられていたのは自分だろうかと悩む。
だがどちらにせよ。
自分の一番近くにいるのはイアンだし。
イアンの一番近くにいるのも、これからは自分であればいいと…。
そんな、少しだけ大胆で、ささやかな願いを胸に灯す。]
(+77) 2015/11/28(Sat) 01時半頃