[ティモシーへの答えを保留にしたまま、男は小さく笑いだす。
目元に、うっすらと涙をためて。
新鮮だった。下肢不随だなんだの事情には、変な気後れは一切持たず。
ただ、まるで思いつきのままに、無邪気に誘い込む存在が。
リハビリもまるでやらない己が、当然そうなるかのように、彼の言葉には迷いがない]
気が向いたら、考えてみ……ま、しょうか。
俺みたいなムサイ男が教師になったら、生徒が可哀そうかもしれませんけどね。
[本当に、『希望』なんて与える力があるかどうかは分からない。
けれど、強者としての力を失った己が、かわりそれを手にすることができたなら。
『死んだ』ままの今よりかは、少しはマシな生き方ができるのかもしれない。
単なる気まぐれだったのかもしれないけれど、男は新たな生きがいを持つとともに、誘ってくれたティモシーに対し、大きな恩義>>1:186を感じていた。
『車いすの教師』が学園に舞い降りたのは、それから1年後のことだった]
―回想・15年前・病院の大部屋、ベッドの上で・了―
(+43) 2011/12/08(Thu) 21時半頃