[ミタシュの手が頭に触れた時、対応に迷ったクラゲは宿主に"考えさせた"。
思考させられたトルドヴィンの脳は、その状況から『母』との記憶を思い出した。
それがいけなかった。
トルドヴィンの種族は、生まれた時から役割が決まっている。体のつくりも、役割を全うするためだけに特化している。
彼に与えられた役割は『女王の側近』。
盾となるための硬い外殻と、普段は隠された殺傷力の高い大顎を備えた大柄な個体群。
そして、女王の命令を忠実に遂行するための仕組みがひとつ。
自分を産んだ女王――『母』を思う時、彼等の脳は強力な鎮痛作用と多幸感をもたらす神経伝達物質を分泌するようにできている。
トルドヴィンが躊躇せず自らの首に刃を向けたのも、この物質によるところだ。
クラゲはあの時>>*3:16、引きずり出された記憶によって分泌されたそれを――脳内麻薬に近しいそれを、じかに受け取ってしまった。]
(+36) 2020/09/04(Fri) 20時半頃