[それから、なぎさが伸びをする様子を見上げる。]
ねえ、なぎささん。
[自分も億劫そうに立ち上がる。一足先を行くように、改札へゆったりと歩いて行く。]
俺ね、むかし、ここに来たことがある。一人でね。
そのせいでまたここに来たんだと思う。
そんときは、どうやったのかわかんねーけど、3年後にようやく出れた……
でも、俺、遅かれ早かれ、ここに連れ戻されるんだったんだと思うわ。
たとえなぎささんに突き落とされなくてもね。
それが怖くて、電車にもバスにもタクシーにも乗れなかった。
どっかにまた、一人きりで連れて行かれると思ったから。
だから、変な話だけど―……
なぎささんが今いることが、
会話してくれる存在が、だいぶ嬉しいんだよ。
[それが、だらだらと会話を続け、自分を殺そうとした者を責めない理由だった。]
(+34) 2015/06/08(Mon) 21時頃