[向き合った彼の瞳>>4:+200には、光の加減か、星のひとつも映り込まない。
彼の表情を真っ直ぐに視界に入れるのは久しぶりだった。
自分よりも大きなその身体>>4:+202を引き寄せることができたのだって、特別力を込めた訳でもない。
不意をついたから、それから、彼に完全に拒み切る意志がなかったから、…だとか。
そうならば良いと、思う。
吐き出した温い息は白く濁って、彼との間を埋めた。]
ちょ、え、
……な、んで、泣くわけぇ…?
[表情が歪むのも、聞いたことないような言葉が向けられるのも、そこまでは想定内──否、望んだとおり、だったけれど。
近付いた頬に温い雫が降れば、ぎょっとして目を瞬かせる。
伸ばした手は未だにマフラーの端をきつくきつく握りしめていたから、それを拭うまでは思いつかずに、ぱちぱちと目を瞬いた。
女の子相手なら、もっと上手に気取って拭ってやることも、できたかもしれないのに。
まるでそういったやり取りに不慣れな子供みたいに、きょろきょろ視線を彷徨わせるばかり。]
(+33) 2015/11/20(Fri) 21時頃