かかって、こ……
[振り向き呟かれた声は、迫りくるダンプの圧倒的な存在感に気押された、蚊の鳴くような弱々しい声。
まるで、脅えた子供のような。
身体を打ち抜く突撃は、これまで培ってきた自信の全てを根こそぎ掻っ攫い引き裂く。
己の矮小さを突き付けられ、ふと、脳裏に「死」の文字が浮かんだ。
いや、そんなはずがない。吹き飛ばされたまま、男は思う。
これまで、勝ち抜いてきたではないか。時に敗北を期すことがあっても、乗り越え強者であり続けたではないか。
そうだ。強者だ。力を手にした者だ。
そんな己がこんなところで――――。
続く思考は、ガードレールに叩きつけられ、内側の破壊にあわせて終わった。
い……や、だ……。
こうして、男は絶対強者の自信とともに、身体機能の一部を、喪失してしまったのだった。
それからずっと。その命が、途絶えるまで**]
―回想・15年前・深夜の公園で―
(+31) 2011/12/07(Wed) 23時半頃