―廃病院―
[褒められることはくすぐったいが、落ちてくる口づけを拒否することはなかった。
髪につく分には仕方ないが流石に耳につく性は気に入らないのか、ぴ、ぴ、と小さく震わせる。
馬鹿正直に、神様と繰り返すその言葉>>@15に虚ろを纏った瞳は毒気を抜かれたように丸くなり、それからその顔貌を確かめるように触っていた指先が動いて、むちりとその鼻先を摘まんだ]
ばか。冗談だ。
[すぐに離して素知らぬ顔。
それでも、抱き込められると己の弱さを感じてしまうのは鈴のせいなのだろうか。
またどこかで、頭の奥が少しぼんやりと霞むように感じる。
見ていなくても、引き抜かれたことは下腹の喪失感から理解できたが、会陰を伝って緩慢に流れ落ちる流体に、眉を引き寄せる]
………。
私は、謝らないぞ。
自分のものを取り返そうとして、何が悪い。
[歩くのが面倒なのか、懐に抱え込まれると猫の本質で心地よく感じるのかはさておき、派手に嫌がることはしなかった。
そう言えば綿貫にも抱え上げられたこともあったとつい最近を思い出しつつ、少しばかりの膨れっ面]
(+26) 2018/03/03(Sat) 20時半頃