−自室−
[あの夜の夢を見ていた。
夜毎繰り返し訪れる一年前の雪の夜、真っ白な山中に駈け出して行く誰かの姿。
幼い女の子の手を握り、ただそれを見つめていた。
美しく白く、そして掌に落ちれば儚く溶け消えるその一片が、毎年決まって新聞の小さな記事で報じられる冬の事故とどうしても結び付かない。
それに、知り合って間もない彼らの間の事に口を出す事に遠慮があった事も確かだ。
だけど、あの時、何もかも構わずに彼らを追って雪の中へ飛び出していたのなら。
夢は容易に願望を形にする。
『オレ達も探しに行こう』
夢の中で、オレはハナの小さな手を引いて、雪原へ向かっていた。
ああ、ほら、ほんの少し進んだだけであそこに背中が見えたじゃないか。
名前は何と言ったっけ、いつもロビーのソファに痩せた体を沈ませるようにして本を捲っていた、あいつだ]
(+24) 2013/02/10(Sun) 17時半頃