焼き、芋屋さん……!!
[眩い光に瞼を閉ざし、目を開いた時にはもう、隣りには誰もいなかった。
さっきまで彼が背中を預けていた部分には、存在の名残もありはしない]
……成仏、というやつでしょうか。あの世とやらに昇っていくための。
いえ、そうとも言い切れませんね……。
これが、本当の「終わり」なのかもしれません。
だとしたら、冷たいものですよね。
きっと、思いを果たしたら、なんて生きている人間の幻想で、実際はこうやって不意に訪れるものなのかもしれません。
……生きている頃の社会と同じですね。こちらの都合は、お構いなし、って。
[消えていった焼き芋屋を追い、男は広大な夜空を仰いだ。
さようなら、とも、また、ともつかないお別れ混じりの吐息をつく。
じっと見上げすぎてしまっていたためかもしれない。
ほとんど交流もなく、人柄も知れずに消えていった彼との唯一の繋がりを確かめるように、男は小さく歌をこぼした]
(+15) 2011/12/06(Tue) 22時頃