な……っ!!
[とっさに指を、引き離す。無機物にのまれた指先には、微塵の変化も見られない。
ただ、あってはならない出来事に触れた違和感が、心地悪く残るだけ。
さらば、ガラスの砕けたフロントから這い出して。
そう考え、車いすを取ろうと振り返り――――男は、ようやく気がついた]
俺は……やっぱり、死んだんですね。
[運転席の背後には、消炭となった男がいた。
さすがのウイルスも爆熱により、耐えきることができなかったのだろう。
人としての体をようやく保った痩せこけた黒炭が、ただの「物体」として、男を見返していた。
そうか。そうゆうことだったのか。
だからロックにしがみついた瞬間、己は「踏ん張る」ことができたのか。
男は一抹の寂しさを感じながら、車のフロントへと這い出していく。
そしてそのまま滑るように、アスファルトの上へと「二本の足」で、降り立った]
(+8) 2011/12/06(Tue) 22時頃