― 半透明のフレドリカ ―
狐子の用意したお香によって歪んだこの村は狂気に支配されていた。けど、狂気に支配されていたというのなら、この村はその前からずっと、絶えることなく狂っていたのだと思う。狐子から自分たちへと、狂気の方向が変わっただけだ。
郷に入れば郷に従え。
この村では、狐子と呼ばれるその人を差別するのはごく当たり前のことだった。
リサの叫びが教室に響いた。みんなは大人しいリサのその変わりように驚いているようだったけど、こういった叫びは大人たちとつきあっているとごく自然に聞けるものだった。
お香の力で、忘れているだけだ。
「フレドリカさんも、この村に来たからには狐子とはつきあわんようにねぇ。わたしたちにまで迷惑がかかるからねぇ」
両親に先立たれて、この村に来たわたしが最初に聞いた言葉がそれだった。その時は何を言っているのかわからなかったけれど、学校に通うようになって程なくその意味が知れた。
わたしは、郷に従った。
狐子にとって、この祭りとこの村の日常、果たしてどちらの方が狂っているのだろうか。
……わたしは、どちらも等しく狂っているように思えてならない。
(+4) 2013/10/24(Thu) 03時半頃