余四朗>>0:131が口にしたことに、瞼を軽く伏せた。
言の裏を、その心中を探ろうとする意思はないまま、ただ、
言霊そのままが胸裏に、じぃ、としみたような面持ちで。
「……あァ、想ってくれるヒトさえいれば、」
そう、想う人が居れば、想いに乗って此処へまた帰ってくることができる、そう信じられた。
逆に言えば誰からも覚えて貰えない者に帰る場所などない、ということであるようにも思えて。
自分は、「月丸」はどうだろう。
郷里を離れ、其処に馴染んで久しい己が、昔通りの月丸であるとは思えなかった。
実際、気付いてくれる者は年毎に少なくなりつつある気もしていた。
月丸が村を去った後に生まれた者の中には存在すら知らぬ者も多い。
そんな自分が、もう村に受け入れられなくなる時も近い――そうとすら思っていた。
(4) sakanoka 2009/09/03(Thu) 02時頃