196 Fiducia - 3rd:fragrance -
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2013/01/05(Sat) 02時半頃
まるで…のようですなあ…
でもおかしいですえ…あたしには…ってみえますから…のようにねえ…
…
…に…うてくりゃれ…
あんさんは…はあたしにどう…って…しいん…
…
む…は…げぬ…
…り…められた…の…
…げの…い…の…の…で…は…だったのだ…
…
…ぶような…やはらかで…か…しげでさえある…み…
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―― 大階段・踊り場 ――
[男がその場に姿を現したのは、甲高い破裂音>>3が、居間にも響き渡った故に。 しかしその足取りは幾分重く、片手にはまだ、明之進から渡された自鳴琴が握られたままだった。]
……、……何か、
[踊り場に姿が見えたウト>>26へと、階段を上りながら問いかようとして、その声音は止まる。 同じくそこに姿のあった、慶の姿に切れ長は真っ直ぐに向いた。]
――慶、殿。
[居間から彼が出て行く刹那に、待て、と留めきれなかった声。吸い寄せられるようにその足は踊り場までの階段を上りきり、彼の傍へと詰め寄った。]
(33) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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……答えて、くれ。 貴方は、そんなことはしない、……よな、
[居間の前、密やかに交わされた言。 彼の語った声>>2:312から連想したそれを、否定してほしいと。否定してくれなければ、彼が誰かをこの館で殺めるのではないかと、疑心を抱いてしまいそうで。]
答えて、……くれ。 怖いんだ、俺は……もう誰の死も、見たくは、
[距離をつめ、血に汚れた着物を掴む。長身の男がまるで幼子のように、掴んだ手を揺さぶり答を欲す。 胸に穿つ不安を、取り除かねば。唯、その一身で]
な、あ……答を、
[繰り返す言。 強い力で揺さぶり、追い詰める男。 あまりに無我夢中で気がつかなかった、踊り場の足元の不安定さを。]
(34) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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――――……!!
[がくん、と慶の姿勢が崩れる。 何事かと目を見開けば、彼の後ろに見える長い、大きな階段。
気づけば階段を背にした彼を、その間際まで追い詰めていた。責め立てるように、 ――突き落とす、前振りのように。]
慶殿ッ―――!!
[はたと我に返った男は、掴んでいた着物を手繰り寄せ慶の身体を引き上げようと力を籠める。 しかし次いで響くのは甲高い音。そして、大きな衝撃音。]
(35) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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ぁ、…………、
[がたがたと音を立て、慶の身体が階段を転がり落ちていく。その様を上から黙って見下ろすことしかできない。 始めは身体を折るようにして身を守っているように見えた姿は、手摺に頭を打ち付けたところで動かなくなったよう見えた。 そうして終には、その身体は麓まで転がり行く。糸の切れた操り人形のように、ぐったりとしたままに。
残された男の手に残ったのは、血のついた襤褸切れ。慶の纏っていた着物の、端くれ。]
(36) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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…………け、い、……殿
[冷たい血が、巡る。 片手には着物の切れ端、そして片手には自鳴琴。慶が、おるごおると言っていたそれをしかと握り締めたまま。 大階段を下りていく。途中滑り落ちそうになりながらも、慶の元まで、必死に。]
すまない、そんな、つもり……では、
[突き落とすつもりはなかった。口にした謝罪、それで赦されるわけがない。無限にも思える長い時間、ゆっくりと階段を下りる間も、慶の姿は動く気配を感じぬ。
ようやくその傍に辿りついて――知る。 階段が滑りやすくなっていたのは。 横たわる慶の下に広がるのは、彼の影ではなく。]
(37) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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…………血、が、
慶殿、血、血を、……
[彼の身体から、そして後頭部から。流れ出す夥しい赤色が、階段を、絨毯を染めていく。 血を止めなければいけない。着物の切れ端を掴んだ手が、彼の身体に触れて揺さぶる。しかしその身はもう自分で動き出すことはない。
その意味は。 その意味を。]
(38) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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…………、……、違う、……俺は、
[――殺してしまった。 慶を、突き落として。]
(39) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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ぁ、……あ、……ああ、――――!!
[広がる血は、止まらない。 慶は横たえた身体を動かさず、横向きになった貌から見える瞼は硬く閉じられ。
命の灯火を、消してしまった。 誰かを守らねばと思った、己が。
その事実は酷く冷たく、無意識のうちに男はその場から逃げ去った。]
(40) 2013/01/05(Sat) 15時頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2013/01/05(Sat) 15時半頃
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―― 中庭 ――
[闇雲に走りて姿を現すは、宵の海に面した中庭。 血のついた草履は走る合間にも何度も男の足を取り、その度ふらついては体勢を崩した。 命を奪った男の足を取り、同じように冥府へ手招かれるように。]
…………、
[唇から、言葉は紡がれぬ。 うわごとのように繰り返していた慶への謝罪の言すら、切れ。
降り積もった白雪の上、膝をつけばぱさりと結い髪を留めていた飾り紐が落ち、闇色の長髪が背へと広がった。]
(43) 2013/01/05(Sat) 15時半頃
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[思い出すは、目の前で倒れたかつての主のこと。上流階級の跡継ぎの護衛を任され、洋館で働いていたときのこと。
主人と仰ぐのは、まだ二十歳にも満たぬ男子。だが彼は護衛である男を兄のように慕い、共にあることを望んでくれた。男もまた、生涯をかけることを望んだ。
それなのに――主人は、呆気なく男の前で命を消されてしまった。押し入ったのは、跡継ぎを良しとせぬ彼の兄弟の手先。
そう、慶の語ったそれとよく似た、色褪せた昔話。
護衛が護衛として役に立つことのできなかった、情けなく罪深い昔話。]
(44) 2013/01/05(Sat) 15時半頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2013/01/05(Sat) 15時半頃
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[故に、誰かの命を奪うなど。 残された者がどれだけ苦しむか知る己が、するはずのないことだと信じていた。信じて疑うことなどなかった。
けれど呆気なく人は死ぬ。 慶の灯火を消したのは、間違いなくこの両手。
中庭に降り積もる雪に、草履の赤が移り染みていく。寒い。此処は酷く寒く、冷たい。
――人が、恋しい。
無意識に求む人の温かさ。 掴んでいた自鳴琴が、白き雪の上に落ちる。 空になったその手は虚空に彷徨ったまま**]
(45) 2013/01/05(Sat) 15時半頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2013/01/05(Sat) 16時頃
懐刀 朧は、メモを貼った。
2013/01/05(Sat) 16時頃
げ…ちていく…
…まり…く…の…は…あか…
されど…の…は…か…だった…
…れは…は…にはせぬと…う…か…
…がり…ちながら…の…は…を…す…
…を…し…ただ…に…にぃと…った…
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