[口元の手が離されれば>>179、面持ちは常ないほどに神妙に。
唇を引き結んで、平太を見やる。]
――。
失言した。存じ上げずとはいえ、申し訳ない。
[人を殺した亀吉を探しているということは、つまり思惑はひとつ。
思いは判らないでもない。彼がはじめにゆりを殺めたときは、自分も何をするか判らなかった。
死の連鎖を避けるために、拳を握って、視界から彼を外して。
代わりに、殺めた事実は消えぬと亀吉の名を口にした。
あれは、よく出来た答えだったろう。けれど一歩、はじめの一歩がずれれば、今の自分が――世渡助だ。]
なら、お手を煩わせますが、よろしくお願いします。
[亀吉を抱き起こそうと、腕を差し入れる。
二人がかりで、向かうは大広間。
幸か不幸か、世渡介はすぐにこちらに現れることは、なかった。]
(190) 2013/01/10(Thu) 00時半頃