ちがう……ちがう。ちがう。
[いつの間にか声が出るようになっていた。
苦しかった胸がいくらか楽になっている。まるで、闇の中で息を吸う内に馴染んできたとでもいうように。
暗く何も見えなかった闇も僅か、見通せるようになっていた。
苦しむヨラニエルの様子に気づいていたのか、あるいは光も息も弱々しすぎて気づいていなかったのか。
その場に己以外の天使がいることにようやく気づいた。
脳裏に浮かんでいたそれとは逆に「きれいなてんしさま」そのもののような。
それがあまりにそのものだったから「てんしさま」と呼ぶ癖が抜けなかった美しき同胞。
弱くなった心は、その記憶の方を否定して]
(ああ……救いに来てくれたんだ)
お救い下さい……てんしさま。
[パティエルの名を呼ぶことはなかった**]
(53) 2013/05/13(Mon) 14時頃