─ 回想 ─
[自分に死を告げた天使の暖かな手に引かれて、明るい方へ導かれながら、自分のような末端の信者にまで慈悲を垂れる神の無限の愛に、涙が止まらなかったのを覚えている。
ひとつ、ひとつ古い物を脱ぎ棄てて、身がどんどん軽くなってゆく。
最後に残ったのは、左胸を貫いた深く太い傷跡で]
[ケヴィンは、ここの記憶は早回しする]
[ジェフェルの小隊に配属されたのは幸運だった。……あるいは、そこまで考慮されての決定なのか。
ともかく、会話が出来ない自分にも、ジェフェルは他の天使と変わらず接してくれた。のみならず、副隊長にまで取り立ててまで貰った。
守ることと、相手が心行くまで話を聞くことくらいしか出来ない自分を]
[ケヴィンはジェフェルとこの小隊に、深い愛着を感じていた。
……そういった感情は天使としては良くないのかもしれないが。
それが出自が人間であるという自分の特性ならば、そこも含めてそんな自分が必要とされているのではないかと思う。
神の為すことに、何一つ間違いなどないのだから]
─ 回想・終 ─
(36) 2013/05/09(Thu) 09時頃