[しかし、見回しても大切な仲間の姿も、囚われのサイモンの姿もない。
すでに撤退したのだろうか。それとも……]
[……っ、、
ちりんと矢が床で鳴った。取り落とした事にも気づかず、ケヴィンは自分の左胸を抑える。
ヨラニエルの庇護の力がなくなったせいだろうか、
瘴気がやけに沁みた。特に……天使になってからも残る過去の傷>>0:36。身を貫いた槍傷の……]
[「……、……、」]
[……膝をつくのを堪えられたのは、ごく近くで聞こえた助けを求める声のおかげだった。
ぐい、と額の汗を拭う。
ここでじっとしていても良くならないことは分かっている。この傷と言葉の欠落……これは自分がずっと背負っていかねばならないものなのだから]
[盾を投げ捨てたために、空きっぱなしだった右手で、自分の頬を叩く。
辛い顔をしていてはならない。自分は天使。主の代行者なのだ]
(29) 2013/05/11(Sat) 01時頃