16 魔界のミッドウィンター祭【R18】
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[拘束してやったら抵抗はより激しい物になったが、それでもまだ可愛いものだ。 叩きつけられる手を捕らえて、縛られた腕の輪の中に頭を突っ込んでみる。 そうして立ち上がれば、天使の足は宙に浮く高さだ。]
君は天界に帰りたいと思っているかもしれないが、 もう諦めた方が良い。 君は既に私のもので、天のものではない。
[腕の中に天使を捕らえたまま、その金の髪を撫でる。 単に撫でるというよりは、指を差し入れて梳く動きだ。]
(-48) nekomichi 2021/12/26(Sun) 15時頃
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このあたりは私の領域で、他の魔物は寄りつかない。 一人は静かでいいが、時には他の生き物が恋しくもなる。
私に見いだされたのが運命と思って、ここで暮らすといい。
[語りかけるような穏やかな口調だが、天使を抱きしめる腕が緩むことはなかった。*]
(-49) nekomichi 2021/12/26(Sun) 15時頃
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[ 腕さえ用いずに体を宙に持ち上げられ、諭す口調で獣人の理屈を告げられる。 天使は歯軋りしそうなほどに唇をきつく噛み締めた。
第一に、魔界に連れてこられた時点で、天に帰る道が閉ざされているのは承知している。 第二に、彼の所有物だなどという認識はおこがましい。
それを聞かされて、天使が新たな使命を見出すとでも思っているのか。]
(-50) enju2 2021/12/26(Sun) 22時頃
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[ 他の生き物が恋しいのは、群れで行動する天使にも、よくわかる感覚だ。 だが、その矛先が異種に向くのは理解しがたい。 同族と連帯すべきだろう。
それとも── 彼は、彼の種族の最後の生き残りなのだろうか。
…いや、だが、そうだとしても、天使を拉致してきて、一緒に暮らせとは自分勝手にもほどがある。
後悔させてやるぞ。
あがくような膝蹴りを繰り出しながら、天使は、獣の体温に擦り寄りそうな自分を戒めた。*]
(-51) enju2 2021/12/26(Sun) 22時頃
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[宙吊りでの蹴りなど、少々煩わしい程度のもの。 じゃれつかれているのと大差ない、と思えば愛しさも覚える。
首に天使の腕を掛けたまま、獣人から獣へと姿を変えた。 そのまま天使を床に押し倒し、のしかかる。]
君には印をつけておこう。 誰が見ても、私のものだとわかるように。 君が私の側を離れても、すぐに探せるように。
[牙の並ぶ口を開き、天使の首を咥える。 浅く肌を破る牙と、喉笛を舐める舌。 どちらも火のように熱く感じるだろう。]
(-52) nekomichi 2021/12/26(Sun) 23時半頃
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[口を離せば、天使の喉に文様が刻まれている。 まるで首輪のようなそれこそが支配の印だった。*]
(-53) nekomichi 2021/12/26(Sun) 23時半頃
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[ 足にあたる感触が変わった── と思ったら、彼の姿が変わっていた。 より毛深く雄々しい角を生やした獣がのしかかってくる。
脳裏に響いてくるような深い”声”は、天使に、これから起こることを告げた。
むろん、全力で抗うが、両手を戒められ、床に押し倒された状態から逃れることができない。
首筋に牙の烙印が刻まれる。 彼の命そのもののような熱を感じた。
天使は体を硬直させ、小さく呻く。
いつか、その牙を叩き折ってやると心に誓う。
挫けはしないとばかりに、何度も蹴りにいった。*]
(-54) enju2 2021/12/27(Mon) 00時頃
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[床に押し倒されても、なおも天使は蹴りつけてくる。 それは抵抗のためというよりも、意地のように思えた。
天使の上に腹ばいになり、体全体で乗る。 間近になった首筋や顔に舌を伸ばして舐めた。]
君に言葉が通じているか分からないから、 つい無理矢理になってしまうな。 君が喜ぶことをしてやりたいのだが。
いや。君の望みが聞けたとしても、 私はそれを聞き届けることはできないだろう。 君を手放すことも、光に返すこともしたくはない。
せめて快適に過ごさせてやりたいが、 どうもうまくいかないようだね。
(-55) nekomichi 2021/12/27(Mon) 02時半頃
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[体毛の一筋を伸ばして扉の鍵に触れる。 解錠の音と共に、外へ続く扉が開いた。]
気晴らしに、外へでも行ってくるといい。 私の側にいると、君も気疲れするのだろう。
私の領域内に、他の者はほとんど入ってこない。 危険があっても、刻印を通じて君を守れる。
君が出かけている間に、会話の手段を考えておこう。 文字が読めるなら、――いや。絵の方が良いか。
[考えを言葉にしつつ、天使の拘束を全て解いて、体の上からも退いた。*]
(-56) nekomichi 2021/12/27(Mon) 02時半頃
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[ 言葉が通じていないかもしれないと獣人は考えているようだ。 そんなに自分は彼の語りかけと無関係な行動をとっていたろうか ? 伝わらないものだなと思う。
天使は偽りを語らない。 彼が適切な問いかけをすれば答えるのはやぶさかではないが、魔性の言葉に耳を傾けるべきではないというのが天使の基本スタンスだから、会話は成立しないだろう。
言葉が通じても互いの望むところが異なれば、議論の余地しかなく、妥協なき共和は叶わないというのは、彼が直後に主張したとおりだ。]
(-57) enju2 2021/12/27(Mon) 12時半頃
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[ 獣人は外への扉を開けてくれたが、天使を逃すつもりはないらしい。 天使の気晴らしのためだと言った。
気疲れ ? 否、魔性に気を遣ってなどいない。
彼の重みが離れるや、天使は扉の外を目指した。
彼の姿を一顧だにしてやるものかという気持ちは、彼の言葉を理解していないという偽装ではなく、単なる意地である。
彼が何を与えるつもりでいても、天使が天界にいた頃より満たされることがあろうか ?
天使の知る世界が狭いのは認めるが、自分が今、幸せを感じているかについて迷いはない。]
(-58) enju2 2021/12/27(Mon) 12時半頃
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[ 獣のねぐらの外は豊かな草原だったが、やはり空は澱んで暗い。 回復も浄化もおぼつかなかった。
けれど、これだけの植物があるからは水脈があるだろうと、天使は水気を探す。
足で地表を歩くのは慣れていない。 片翼では浮力が足りなかったが、それでも懸命にバランスをとりながら、飛び跳ねてゆく。
やがて天使は岩の根本に小さな泉を見つけ、首周りの熱にふりかけた。 時間をかけて全身を洗い流す。*]
(-59) enju2 2021/12/27(Mon) 12時半頃
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[天使が出て行ったのを見送って、扉を閉めた。 前脚を伸ばし、後脚を片方ずつ伸ばしてあくびをする。 それから、軽い食事を摂った。 獣身でも大抵のことはこなせるものだ。
食事が済めば、自らも外へ出る。 草を踏んで歩き、大岩の上に飛び乗って、そこで腹ばいになった。
背中の毛がそれぞれに光を放ち、周囲を照らす。 光を浴びた植物たちが、そっと葉を広げる。 己の領域を保つための日課だった。]
(-60) nekomichi 2021/12/27(Mon) 13時半頃
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[天使の位置は特に把握していない。 夜になる前には探しに行こうと思う程度だ。
言葉が通じなくても、心が通わなくても、構わない。 少なくとも、植物よりは反応がわかりやすい。
いずれは関係も変わるかもしれないが、今はこれで良かった。 意識の片隅だけで天使を追いながら、大岩の上で目を閉じる。*]
(-61) nekomichi 2021/12/27(Mon) 13時半頃
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[ 体を洗った後は、乾かしがてら周囲を偵察する。
身の丈ほどの真っ直ぐな枝が落ちているのを拾い上げ、小枝を取り除く。 それを槍代わりに、架空の戦場をシミュレーションした。
貫き、両断するのは魔性の手にかかった同朋たちの幻影だ。 もはや、自分にその役目が巡ってくることはないとわかっているだけに、天使の表情は無だった。
群れの全員を消滅させかけたところで、ふと、花の香りが流れてくるのに気づく。]
(-62) enju2 2021/12/27(Mon) 16時頃
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[ 花の気配を辿っていくと、大岩の上から陽光が差しているのが見えた。
否、あれは獣の光だ。
花は、その彩りを彼の方に向けて、咲いている。 大岩の周囲全体が、そうだった。
まるで、彼を崇める素朴な信徒たちのようだ。]
(-63) enju2 2021/12/27(Mon) 16時頃
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[ 天使は、おのれの翼のささやかな光には反応しない花を見下ろしていたが、指を伸ばしてそっと摘み取る。 その隣で、彼の方を向いて咲く花もまた。
いくつもの花を集めて、リースを編んでゆく。
たくさんの花が咲いている方へと進んでいけば、気付かぬうちに随分と大岩の付近まで来ていた。*]
(-64) enju2 2021/12/27(Mon) 16時頃
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[大岩の上で寝そべっていると、天使の気配が近づいてきた。 顔は上げないまま、耳だけをそちらへ向ける。
何をしているのかは分からなかったが、確認はしない。 こちらが動けば、天使はどこかへ去って行くような気がしたからだ。
興味が先走って、尻尾がはたりはたりと揺れた。*]
(-65) nekomichi 2021/12/27(Mon) 17時頃
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[ リースを完成させて、その出来栄えに、ふっと微笑む。 集中を邪魔するものはなかったし、体も温まって軽い。 よい行いだったと思う。
と、何かの動く気配に、天使は、ハッと身構える。 ここは魔界の一角だということを思い出した。
見上げればすぐ側の大岩から獣の尾が垂れている。 それが動いたのだろうか。
うかつだった。]
(-66) enju2 2021/12/27(Mon) 17時半頃
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[ 天使は木槍と花輪を持って、その場を離れる。 気配を消すことはしなかった。
ほんの少し遠ざかるだけで、陽光の温もりが弱まるのを感じる。 惜しむべきか苛立つべきか。
自分の現在位置もよくわからなかったが、先ほどと同じようにして泉を目指そうと考えた。*]
(-67) enju2 2021/12/27(Mon) 17時半頃
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[どうやら天使に気付かれたらしい。 頭を上げて、去って行く姿を見る。 手に持っているのは、花を編んだ輪のようだ。
弾むような移動の仕方は一見楽しそうだが、当の天使にとっては不便なのだろう。 はたりはたり。 尻尾を波打つように幾度か動かしてから、立ち上がった。
前脚で伸び、後脚で伸びてから身震いをひとつ。 軽やかに岩山を降りる。]
(-68) nekomichi 2021/12/27(Mon) 18時半頃
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[距離を開けて、天使に付いていく。 あの花で何をするのかが気になった。
方角的に、泉へ向かっているのだろうか。 そういえば、天使の髪が少し湿っているようだ。
天使が止まれば自分も止まり、その場で伏せて眺めていよう。*]
(-69) nekomichi 2021/12/27(Mon) 18時半頃
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[ 後を尾けられているのに気づいた。 振り返って木槍を振り、追い払うような仕草を一度したけれど、後は無視することに決めて泉を探す。
背中がほんのりと温かくて、翼が自然と伸びる。 滑空を交えれば、跳ねるよりもう少し早く移動できるだろうか。
けれど、獣にそんな姿を見られるのも何だか悔しい気がして、翼は開いただけにしておく。]
(-70) enju2 2021/12/27(Mon) 19時頃
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[ 泉に到着すれば、花輪を水面に浮かべて膝をつき、祈りを捧げた。
主の御技を讃える歌もそれに供える。
さて、後は獣の領域の果てを探しにでも行こうか。 逃すつもりはないと言っていたから、どこかで邪魔しに入ってくるだろうが、だからと言って取りやめる気もない。*]
(-71) enju2 2021/12/27(Mon) 19時頃
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[一度威嚇されたが、天使は気にしないことにしたようだ。 こちらを見ずに進んでいくのを、変わらぬ距離で付いていく。
泉の前で止まった天使は、編んだ花を水面に浮かべて膝をつく。 草の上に座り、流れてくる澄んだ声に耳を傾けた。
祈りを終えた天使は、さらに先へ進んでいく。 泉の側に寄って残り香を嗅ぎ、花輪を咥えて首を振り、角に掛けた。]
(-72) nekomichi 2021/12/27(Mon) 20時半頃
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[頭に花を乗せて、さらに天使を追う。 やがて、行く手に灰色の大地が見えてきた。
あれが草原の終わり。領域の端。 瘴気に満ちた、むき出しの魔界が始まる場所。
天使はこの果てを見に来たのだろうか。 背中の光を収めて立ち止まる。 天使が領域を越えようとしているのか、その場に伏せた姿勢で注視していた。*]
(-73) nekomichi 2021/12/27(Mon) 20時半頃
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[ 壁も川もなかったが、そこが境界だとはっきりわかる場所につく。 光る獣の恩恵の終焉。その先に美しい花はない。
天使はそこで足を止め、振り返って、距離を置いて獣がついてきているのを目にする。 そこにいるだろうと予測はしていたから、驚きはなかったが、複雑な曲線を描くその角に、天に捧げた花輪がひっかかっているのを見て、目を細めた。
贄の獣のようだ。
目を合わせたまま後退り、境界をこえる。 自ら彼の元へ帰るなど、選べぬ話だ。*]
(-74) enju2 2021/12/27(Mon) 21時頃
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[天使が振り返る。 こちらを見つめながら、後ろ向きに境界を越えた。
分かっているだろうに。 その先は、光無き世界。 天使が生きていくすべなどないものを。
灰色の世界にぽつりと光る点となって離れていく天使を、首も持ち上げずに見送る。 その目は光そのものではなく、周囲からじわじわ滲み出す影を見ていた。]
(-75) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[胸の内で、ゆっくりと数を数える。 耳と目は、隙無く周囲の気配を探っていた。
領域の周囲には、有象無象の魔が群れている。 他の魔から逃れてきた、弱い魔物たちだ。 陽光の領域に入ることはできずとも、他の魔物もあまり訪れない周辺を隠れ家にしている連中だった。
彼らに、1羽きりの天使は魅力的な獲物に見えているだろう。 天使に刻印があることも、領域の主が見ていることも気付かぬ愚かなものたち。]
(-76) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[十を数える頃には、魔物たちもあからさまに天使を囲み始める。 もう十を数えれば襲いかかっているだろうし、天使も戦おうとするだろうが、それを待つ気はなかった。
立ち上がり、地を蹴り、空間を渡って天使の背後に現れる。]
じき夜が来る。 帰るぞ。
[唐突に現れた領域の主の姿に、有象無象はたちまち散り失せる。*]
(-77) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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