16 魔界のミッドウィンター祭【R18】
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[名を呼ばれた天使は、あからさまに気分を害したという態度で部屋を出て行った。 天使は素直でわかりやすい。 獣の口で微笑んで、置かれた本を手に取る。 ぱらりぱらりとページをめくりながら、離れていった気配に耳を澄ませた。
天使が身につけていた鎧に興味は無かったので、地下の倉庫に投げ込んである。 寝室にある地下への入り口は、いざというときの避難経路でもあるので、仕掛けによって隠されていた。 見つけ出すのは少々骨の折れることだろう。]
(-22) nekomichi 2021/12/23(Thu) 00時頃
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[天窓から見える魔界の空が、一層暗さを増していた。 魔界に太陽が昇り沈むわけではないが、一応の昼と夜はある。 瘴気の雲が広がり、空が翳る時間というものが。]
ケラヴノス。じきに夜が来る。 その格好では冷えるかもしれない。
[奥にいる天使に声を掛けて、立ち上がる。 ティーセットを片付けて、寝室へ向かった。
厳密には睡眠は必要ないが、頭と体を休める時間はあったほうがいい。*]
(-23) nekomichi 2021/12/23(Thu) 00時頃
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[ 探索を再開すると、獣人が声をかけてくる。 二人しかいないのに、いちいち自分が与えた名で呼びかけてくるのはどういうつもりか。 所有格の件といい、微妙に苛立たしい。
名前呼びは別として、獣人は、間もなく夜が来ると言った。 昼夜があるというのも天界とは異なる点だ。
冷えるらしいが、どうすればいいのか。
とりあえず翼に光を宿す。 安心感は生まれたが、あまり解決になっていない。*]
(-24) enju2 2021/12/23(Thu) 08時頃
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[少し早いが、今日はもう休むつもりで寝室に入る。 書物を一冊、枕元の読書台に置いて、寝台に横になった。 自身が発光しているので、読書灯は必要ない。
肘をついて頭を上げ、横になったまま読書する。 怠惰な姿勢ではあるが、最近はすっかり習慣づいていた。
天使はどうしているだろうかと顔を上げ、呼んだ。]
寒くなったならこちらにきなさい。 一緒にいれば少しは温かいだろう。
[寝台は広く取ってある。 天使は睡眠を取らないものが多いというが、一緒に横になるスペースは十分にあった。*]
(-25) nekomichi 2021/12/23(Thu) 18時頃
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[ 獣人が奥の寝室に引き上げる。 柔らかな光が漏れてきていた。 我知らず、惹きつけられて足を向ける。
覗いてみれば、獣人は人間のように寝台を使っていた。 両手が使える人型の方が何かと便利なのかもしれない。
偵察している気配を察したのか、彼が呼びかけてくる。
それは、一緒に寝ようと誘っているのか ? 風呂場でしたように ?
言語道断だと、天使は踵を返して厨房へ向かう。
火を起こせるだろうか。 天界の清らかな光とも、彼の宿す陽光の温もりとも、比べものにならないだろうが、少しは足しになればいいと願う。*]
(-26) enju2 2021/12/23(Thu) 20時頃
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[耳を倒し、天使が去って行く気配と音を追う。 どうやら厨房の方へ向かったらしい。
冷えると言ったからだろうか。 かまどの灰には、確かに火が埋めてある。 多少弄っても火事には繋がらないだろうが、天使自身が火傷などするかもしれない。
気にはなったが、見に行くことはしなかった。 ただ本を閉じて、楽な姿勢になり、気配を読むことに集中する。*]
(-27) nekomichi 2021/12/23(Thu) 23時半頃
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[ 知識として知ってはいるが、火で暖をとったことはない。 かまどの扱い方も知らない。
近づいてはみたものの、触るのさえ躊躇う。
熾火のぬくもりはあったから、かまどにくっついていれば、いくらか温かいだろうか── と考えたところで、天使は己れの怠惰さを叱咤した。]
(-28) enju2 2021/12/24(Fri) 08時頃
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[ 居間にとって返し、鍛錬を開始する。
集中していれば、余計なことは考えずに済むかと思ったが、ひとり稽古はかえって群れの仲間の不在を感じさせて気が滅入った。
それもまた魔界の夜のせいかもしれない。
切なくて息苦しいほどだけど、何も感じなくなるまで体を動かしていよう。*]
(-29) enju2 2021/12/24(Fri) 08時頃
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[天使はしばらくかまどの前にいたが、離れたようだ。 居間に移動した後は、なにかしている気配がする。
家の中を物色しているとか、外へ出ようと画策しているとか、そういう物音はしなかった。 どうやら、体を動かしているだけらしい。
何をしているのか興味はあったが、行くのはやめておいた。 居間に近づけば光で気付かれるだろうし、見られていると気付けば止めてしまうだろう。 慣れるまでは、放置しておくのがいい。 時間を掛けてゆっくり近づいていくのが良いのだと思う。]
(-30) nekomichi 2021/12/24(Fri) 11時半頃
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[知覚の一部を天使の上に残し、意識のレベルを下げていく。
微睡みに近い状態になって、今夜はもう休むことにした。*]
(-31) nekomichi 2021/12/24(Fri) 11時半頃
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[ 己れを剋するように鍛錬を続ける。 無心にはなれたかもしれないが、心が晴れてゆく感じはしなかった。
乾いて、ひび割れて、虚ろだ。 自分は何処まで来てしまったのだろう。
奥の部屋から漏れてくる光が天使を呼ぶ。
覗けば、獣人の頭は枕の上にあった。]
(-32) enju2 2021/12/24(Fri) 20時頃
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[ 自分から天を奪った魔性に、好き勝手させてやるものかと思う。
扉の鍵は、彼が持っていると言っていた。 力を蓄えて、ここから出て行ってやる。 鍵を手に入れなくては。 回復して── 、 温かな…
消耗した思考が天使を導く。
気が付くと天使は獣人の足元にいて、二、三度、獣人の体に掌を這わすと、光を抱え込むように片翼をかざして臥した。*]
(-33) enju2 2021/12/24(Fri) 21時頃
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[微睡みは完全な眠りではなく、天使が近づいてくるのは知覚していた。 何をするのだろうかと意識の欠片で追いかけていれば、毛皮を幾度か撫でられる。 そわそわした感触で覚醒したけれども、そのまま動かずにいたら、足元に顔を伏せた。
天使は眠るのだろうか。 それともうつ伏せているだけだろうか。 毛布でもかけてやりたくなったが、触ると起きるかもしれない。
光る毛を伸ばして天使の周囲に絡ませ、光の天蓋を作るに留めておいた。]
(-34) nekomichi 2021/12/25(Sat) 17時頃
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[すっかり目が覚めてしまったが、動くに動けない状態だ。 天使がいなくなるか、夜が明けるまでは横になっていようと思う。
足元の温もりは、なんだか心地良かった。*]
(-35) nekomichi 2021/12/25(Sat) 17時頃
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[ 温かな光が染み込んでくる。 寂しいながらも、どこか安らいだ気持ちで天使は顔を起こした。
すぐ傍らに獣人が横になっているのを見つける。
蜂蜜色に光っているその体毛を、自分の指が掴んでいるの気づいて、瞬間、息を呑んだ。
自分は何故、彼の寝台に乗っかっているのか。 何かされたか。 いや、記憶にない。
獣人が動き出す前に、離れておこうと、そっと後退る。*]
(-36) enju2 2021/12/25(Sat) 17時半頃
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[天使が顔を上げる。 離れていく温かさが惜しくて、一緒に上体を起こした。]
目が覚めたのか? やはり寒かったかね。
[そのまま体を半回転させ、寝台から足を下ろす。]
どれ。火を入れておこうか。 少しは温まるだろう。
[立ち上がり、厨房へと歩き出した。*]
(-37) nekomichi 2021/12/25(Sat) 18時半頃
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[ 天使が動くとすぐ、獣人も起き上がった。 その動きは、天使のそれと違って戸惑いがなく、この瞬間まで待機していたことを推察させる。
いくらか後ろめたいような、恥ずかしいような気持ちがした。
獣人の問いかけには答えず、ただじっと見据える。
獣人の方も、それ以上、天使を構うことなく厨房へ向かう。 その振る舞いはとても自然で、邪な気配は感じられなかった。
それでも、天使はすぐ後を追うことはせず、ベッドに残った彼の体温を指先で探る。
当然ながら、鍵は見つからなかったけど、落胆はしていない。 時間稼ぎにすぎないことを自覚している。]
(-38) enju2 2021/12/25(Sat) 19時半頃
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[ 手を動かしていると、背中が少し張っているのがわかった。 砕けた翼の生え際あたりだ。 再生が始まっているのかもしれない。
それは、ここ来て初めてのいい知らせだ。 鏡を見る習慣がないから、現状、どうなっているかわからないけれど、天使は指を組んで祈りを捧げる。
獣人が宿している光で回復したのは認めざるを得まい。
自分を捕獲したのが、彼以外の、もっと堕落した魔性であったら、どうなっていたことか。
それで贖罪になるわけではないが── 、と天使は唇を引き結び、心の壁を確かめておく。 魔性に油断は禁物だ。 翼の健全な再生のためにも、孤高を保って鍛錬を続けようと自分に言い聞かせる。*]
(-39) enju2 2021/12/25(Sat) 19時半頃
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[かまどの前に立ち、埋めて置いた火を目覚めさせる。 鮮やかな赤に光る燠に新たな炭を添えてやれば、火は再び息を吹き返した。 ぬくもりが穏やかに広がっていく。
天使がまだ寝室にいるのを知覚しながら、自分の毛を幾度か梳いた。 指に絡んで抜けた長い毛を、指で編んでいく。]
ケラヴノス。 こちらに来なさい。
[かまどの前にもうひとつ椅子を用意して呼んでみる。*]
(-40) nekomichi 2021/12/26(Sun) 00時頃
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[ 厨房から獣人の声がする。
ああ、あれは彼が選んだ呼称だ。 まだ馴染みが薄くて、日々、繰り返されないと忘れてしまいそうだと思う。
来なさいと言っているが── 命令のつもりなのだろうか。 それにしては、提案しているような響きに聞こえた。
何か食べないかという誘いなら、不要だけれど、 再生し始めている翼を見たら、彼から何か反応があるだろうか。 ただし、勝手に触ろうとしたら、それこそ戦うつもりだ。
そんな思索を巡らせながら、焦らすような手管はないままに、素直に厨房に足を向ける。*]
(-41) enju2 2021/12/26(Sun) 00時頃
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[思ったよりも素直にやってきた天使に椅子を勧める。 それとは別に、求めるように掌を出した。]
夜の間、ずいぶん消耗していただろう。 少し、手を見せてごらん。
[手を見せるよう催促し、手首を素早く掴んで自分の毛で編んだ糸をくるりと巻き付けた。]
この毛はしばらく光っている。 君は光を糧に生きる天使のようだからね。 少しは君の足しになるだろう。
(-42) nekomichi 2021/12/26(Sun) 01時半頃
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[掴んだ手を離さないままで告げ、不意にその手を強く引く。]
本当はこうするのが一番だ。 君が望むなら、いつでもしよう。
[腕の中に天使を捕まえて、抱きしめる。 全身が明るく温かく輝いた。*]
(-43) nekomichi 2021/12/26(Sun) 01時半頃
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[ かまどには火が入っていた。
勧められた椅子を無視して、かまどの近くまで行く。 獣人がどうやって火をつけるのか見ておけばよかった。
獣人は天使の体調を案じる様子を見せ、手を見せてほしいと求める。
手を見たところで何がわかるものでもあるまいと従わなかったけれど、素早く掴まれて、手首に毛で作った紐を巻かれる。
光る紐はふわりと軽く、温かだった。
補給の足しになれば、との説明から、彼の宿す光が天使の回復に役立っているのは獣人も把握しているらしい。]
(-44) enju2 2021/12/26(Sun) 09時半頃
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[ 弱らせたくないなら、魔界などに留めて置かないでほしい。 獣人が何をしたくて天使を手元で養おうなどと無謀なことをしているのか、理解できなかった。
光る紐を与えたのみならず、獣人は天使を引き寄せて抱擁する。 包み込むようなその光が、体の中まで差してくるようだった。
一瞬、体の力が抜ける。
彼の逞しい胸板が目の前だった。 手首に巻かれた編み紐と同じ色。
己の一部を与えるなど、いっそ献身的な申し出なのだろう。
けれど、拘束されていたり、動けないほど衰弱しているならばともかく、抵抗できる状態の天使に手出しして許されるなどと思わないことだ。
天使は気を取り直すと、すぐさま暴れて、獣人の腕を振り解こうとする。*]
(-45) enju2 2021/12/26(Sun) 09時半頃
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[毛で編んだミサンガは天使に受け入れられたらしい。 外せという様子は無い。 抱きしめた最初の一瞬も大人しかったが、すぐに抵抗された。
そのまま抱きしめておくのに困難はなかったが、与えたミサンガの効果を試したくて天使の手首を撫でる。 編まれた毛の一部がするりと伸びてもう一方の手首に巻き付き、簡単な手鎖となって天使を拘束した。]
暴れるのは構わないけれど、危ないからね。 しばらくそのままでいなさい。
[拘束したついでに翼の傷を診る。 砕けた付け根が少し盛り上がっているのを掌で撫でた。 このまま再生するだろうか。 片翼の天使も良いが、飛ぶ姿も見てみたいと思う。]
(-46) nekomichi 2021/12/26(Sun) 12時半頃
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[ 手首に巻かれた組紐が変容して、手鎖になった。
やはり魔性は油断がならない !
この先、何も受け取ったりするものかと決意を新たにして、縛られた手首を獣人に叩きつけて反撃する。 暴れるのは構わないなどと、余裕を見せて翼の痕跡に触れてくるのも腹立たしい。
温かな掌に包まれると、再生途中の翼は伸び上がろうと応えるかのようだった。 けれど、魔性の力を借りて再生などしたら、きっと濁った色がついてしまう。
思い切り身を捩り、嫌がってやる。*]
(-47) enju2 2021/12/26(Sun) 14時半頃
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