16 魔界のミッドウィンター祭【R18】
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人
狼
墓
少
霊
全
ニールに1人が投票した。
ロゴスに3人が投票した。
ロゴスは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
犠牲者はいないようだ。殺戮の手は及ばなかったのだろうか?
全ての人狼を退治した……。人狼に怯える日々は去ったのだ!
名前 |
ID |
日程 |
生死 |
参加 |
役職 |
双生児 オスカー
| master
| 2日
| 襲撃死
| 参加
| 村人陣営:村人 村人を希望
|
肉屋 ニール
| catroad
|
| 生存者
| 参加
| 村人陣営:村人 人狼を希望
|
銀行屋 ザーゴ
| enju2
|
| 生存者
| 参加
| 村人陣営:村人 村人を希望
|
蝋燭職人 フェルゼ
| azure777
|
| 生存者
| 参加
| 村人陣営:村人 村人を希望
|
日輪代理 ロゴス
| nekomichi
| 3日
| 処刑死
| 参加
| 人狼陣営:人狼 ランダムを希望
|
|
/* お疲れ様でした〜。チーズ食べたい。
(-0) azure777 2021/12/20(Mon) 23時半頃
|
|
/* お疲れ様でしたー。虫チーズとか見えた!
(-1) nekomichi 2021/12/20(Mon) 23時半頃
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― 草原の住み処 ―
[魔界らしからぬ穏やかな草原の先、岩山に穿たれた住み処がある。 もともとの洞窟を手直しした我が家は、入り口の印象よりも中が広い。 獣人の形態に移行して扉を開け、中に入って錠前を下ろす。 それから、革袋の口を開いた。]
入り口はそこだけ。鍵は私の手の中。 探しても他にはないよ。 無駄に家を荒らさないでくれたまえ。
ここは居間と台所。 奥に寝室と食料庫とワインセラーがある。 しばらく適当にしているといい。
[一緒に入れた服だけ取り出して、ハンガーに掛けておく。 天使は引っ張り出したりしなかったし、出るのを邪魔もしない。]
(-2) nekomichi 2021/12/21(Tue) 00時頃
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|
ところで本当に食事はいらないのかね。 君の口に入りそうなものをいろいと見繕ってみたのだが。
[机に並んでいるのは各種果物や蜜、砂糖菓子。 それにミルクと酒の類だ。]
(-3) nekomichi 2021/12/21(Tue) 00時頃
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|
― 草原の住み処 ―
[ 地表かと見まごうような草原を通り過ぎる。 だが、その光景も一瞬で通り過ぎ、広い穴倉へと入れられた。 彼のねぐらだ。 魔王の宮殿を見た後では、実にささやかな造作である。
改めてどこに何があるのか説明された。 泊めてやると言わんばかりの気軽さだ。
長居するつもりはないけれど、彼の思惑も謎だった。]
(-4) enju2 2021/12/21(Tue) 01時頃
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[ 袋から這い出して、異常がないか自分の体を確かめていると、食事はいらないのかと問いかけられた。
当惑顔になったのは、天使には食事の経験がなく、その必要性を理解できなかったせいである。
群れでいる間は、組織の維持に必要なエネルギーも共有されていたのだと思う。 光溢れる天界では、常に恩寵が与えられていた。 むしろ、魔王の宴で美食暴飲が歓迎されていたのを鑑みるに、食事は罪と紙一重であろう。
それでも、獣人が天使が食べそうと思って集めたものとはどんなものだろうと、覗いてはみる。
甘い香りのする品々は、小さい器に盛られて見た目も良い。 魔王の宴で饗されていたものより、ずっと控えめで自然に見えたが、こんなものでも罪の入り口になり得るのだと天使は心に言い聞かせて後退る。]
(-5) enju2 2021/12/21(Tue) 01時頃
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[ 適当にしろと獣人がいうからには、他も探索してよいということだろう。
天使は窓を探す。 自ら光を発することができるとはいえ、閉鎖空間は気が滅入る。
ところで、獣人はここに単身で住んでいるのだろうか。 眷属や同胞はないのか。 ひととおり覗いてみる。*]
(-6) enju2 2021/12/21(Tue) 01時頃
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[少なくとも天使は袋から出た途端に暴れ出しはしなかったし、こちらの問いに反応もしていた。 多少は慣れてくれたのではないかと期待する。
居間で紅茶を入れている間、天使は家の中を探索していた。 気配を追いながら、カップに紅茶を注ぎ、椅子に腰を下ろす。 そうして湯気立つカップを手にしながら、天使の様子を観察していた。]
(-7) nekomichi 2021/12/21(Tue) 16時半頃
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[天使は各部屋を覗きながらなにかを探しているようだった。 天井や壁を見ているから、窓を探しているのかもしれない。
この家には明かり取りの天窓が居間にひとつあるが、空から覗くのは所詮は魔界の空だ。 台所に煙出しの穴がある以外は、他に開口部はない。]
探検は堪能したかね。 こちらにおいで。少し休むといい。
[探索がひととおり終わる頃を見計らって天使に声を掛ける。 これで来るようならば、たいした進歩だ。*]
(-8) nekomichi 2021/12/21(Tue) 16時半頃
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[ 獣人のねぐらはこじんまりとしていて、独居用のようだった。 調度品を見るに、彼はここでは完全獣化せずに生活しているらしい。
今もティーカップなど片手に椅子に腰掛けている。
そうして獣人は温和ともいえる口調で天使を呼んだ。 彼の深い声は、このねぐらでは一層、落ち着いて叡智をもつように感じられる。
誘いを無視しても差し支えないだろうが、天からの光が望めないこの場所では、彼の毛皮が発している光は貴重だ。 光を求めるのは天使の本能のようなものである。
天使は、獣人と視線をあわせないようにしながら、さりげなくテーブルに近づき、座れそうな場所を探した。*]
(-9) enju2 2021/12/21(Tue) 23時半頃
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[来なければ捕まえにいくつもりだったが、天使は居間へ戻りテーブルに近づいてきた。]
よく来たね。 その椅子を使うといい。 上に乗っているものは、側にどかして。
[たまの来客に使っている丸椅子は、普段はすっかり物置き台となっている。 今も革装丁の書物が椅子を占拠していた。]
(-10) nekomichi 2021/12/22(Wed) 00時頃
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茶は飲むかね。 それともやはり日光浴がいいかね。
君がここで過ごすのに必要な物があれば用意するつもりだが、そのためには君をもっとよく知る必要がありそうだ。
[天使のために紅茶をカップに注いで、前へ押しやる。]
それと、名前もあるといい。 いつまでも、君、と呼ぶのは味気ないものだ。
君の名前を教えてくれるかね。
[天使がいままで一言も言葉を発していないとわかっているが、それでも敢えて問う。*]
(-11) nekomichi 2021/12/22(Wed) 00時頃
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[ 魔性に歓迎の言葉を述べられると、反射的に睨み返したくなる。 子供に言って聞かせるような丁寧な指示にも、従うものかと立ったまま、ただ近くに来ただけだという態で獣人の後ろに回りこんだ。
そっと指先を伸ばして毛皮に翳してみる。 十分な光が得られたら、失われた翼を再生することも叶うだろうか。
ほのかな光は温かく、つい撫で回したくなるのを我慢するのは、なかなか大変だ。]
(-12) enju2 2021/12/22(Wed) 01時頃
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[ 天使が、いずれ出てゆくことを考えているのを察しているのかいないのか、獣人は、ここで暮らすことを前提に話を進めている。
出された紅茶に口をつけるつもりはなかったが、ちらと一瞥して、自分のために用意されたものだと理解したことだけは示しておいた。
ティーカップを投げつけて攻撃しなかったのは、感情的すぎると思ったからすぎない。]
(-13) enju2 2021/12/22(Wed) 01時頃
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[ 名を問われて、天使は拳を握る。
こういう時は、問う前に自身が名乗るのが礼儀ではなかったか。 天使が口をきかないから、教えても仕方ないと思っているのだろうか。 むろん、教えられたところで、呼ぶ機会はないと思っているけれど。
それに── 、群れの天使に名前などない。必要がない。
それを教えてやらないのも、両者の関係性として正しいだろう。 答えられないから悔しいわけではない。多分。*]
(-14) enju2 2021/12/22(Wed) 01時頃
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[椅子を勧めたが、天使は座らずにこちらの背後へ回ってきた。 背中でなにかをしている様子だが、害意はなさそうなので好きにさせておく。
問いに返答が無いのも予測通りだった。]
教える気はないか。 それとも名前は持たないのかね。
あの均質な群れの中では必要ないかもしれないが、 君は今、私の特別な天使になっているのだ。 君だけの名はあった方が良い。
[均質の中から拾い上げた特別な一粒だ。 手を掛けて育てればどのような姿を見せてくれるのか。 大層、興味が有る。]
(-15) nekomichi 2021/12/22(Wed) 16時半頃
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ケラヴノス。 今日からそれが君の名だ。
返事はせずとも構わないから、 私が君を呼んでいることは理解してもらいたい。
[雷という意味を持つ名を天使に贈る。 群れの中で縦横無尽に飛んで繰り出された槍は、雷の一撃と呼ぶに相応しいものだったから。*]
(-16) nekomichi 2021/12/22(Wed) 16時半頃
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[ 答えがないので、獣人は勝手に名前を決めることにしたらしい。
特別な天使などと言われて、何故だろうという疑問を抱く。 天使を鹵獲するのは初めてらしいとは仲間から聞いた。 初めての天使を手元に置いてみて、危険性がわかるまで他の天使に手出しするつもりはないという意味ならば、悪くはない。
それが天の嘉するところか自信はないが、役目を自覚するのは支えになる。]
(-17) enju2 2021/12/22(Wed) 20時頃
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[ それに、彼が挙げた名も、強そうな響きだった。 少なくとも愛玩物扱いではないと感じられる。
別に、褒めるつもりも、喜んでみせるつもりもないけれど。
どうでもいいことだ、という顔で首をしゃくってみせる。
返事をしなくていいとわざわざ断りを入れたところからするに、彼もだいぶ、天使との付き合い方がわかってきたらしい。
テーブルの対面に移動し、丸椅子の上の本を手に取る。*]
(-18) enju2 2021/12/22(Wed) 20時頃
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[名をつけた天使は、興味が無いというそぶりではあったが、確かに反応を返した。 拒否はしないというところだろうか。
視界の中に戻ってきた天使は、椅子の上の書物を手に取る。 『天使の飼い方・特装版』と表題にあるが、天使は魔界の文字は読めるのだろうか。本文には挿絵も入るので、天使に関する本だということくらいは分かるかもしれない。]
私のケラヴノス。
[そっと呼んでみる。 どんな反応をするだろう。]
(-19) nekomichi 2021/12/22(Wed) 23時頃
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[ どかして座ろうと思って持ち上げた本は革装丁の立派なものだった。 埃をかぶったりはしていないから、略奪してきたものを飾ってあるのではなく、ちゃんと読んでいるようだ。
獣の頭部をした者が読書することを意外に思うが、それは先入観というものか。
とはいえ、彼に読書の素養があることがわかったところで、別段、尊敬には至らない。
何が書いてあるのか知れないし、たとえ内容が悪徳に染まっておらずとも、精勤すべき時間を奪うのだから、書物は危険だ。
情報伝達に文字を使わない天使は、箔押しの魔界文字から目を逸らす。]
(-20) enju2 2021/12/22(Wed) 23時半頃
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[ と、獣人があの深い声で囁く。
先ほど、彼が選んだばかりの名を── 彼自身の呼称に付随する所有格で。
明らかな挑発であろう。
返事はせずともよいと言ったのだから、むろん、応えはしない。 ただ、強めの音を立てて本をテーブルの上に乗せ、その場を離れる。
彼に外された鎧は何処だろう。 取り戻して装備しておこうと考えた。*]
(-21) enju2 2021/12/22(Wed) 23時半頃
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[名を呼ばれた天使は、あからさまに気分を害したという態度で部屋を出て行った。 天使は素直でわかりやすい。 獣の口で微笑んで、置かれた本を手に取る。 ぱらりぱらりとページをめくりながら、離れていった気配に耳を澄ませた。
天使が身につけていた鎧に興味は無かったので、地下の倉庫に投げ込んである。 寝室にある地下への入り口は、いざというときの避難経路でもあるので、仕掛けによって隠されていた。 見つけ出すのは少々骨の折れることだろう。]
(-22) nekomichi 2021/12/23(Thu) 00時頃
|
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[天窓から見える魔界の空が、一層暗さを増していた。 魔界に太陽が昇り沈むわけではないが、一応の昼と夜はある。 瘴気の雲が広がり、空が翳る時間というものが。]
ケラヴノス。じきに夜が来る。 その格好では冷えるかもしれない。
[奥にいる天使に声を掛けて、立ち上がる。 ティーセットを片付けて、寝室へ向かった。
厳密には睡眠は必要ないが、頭と体を休める時間はあったほうがいい。*]
(-23) nekomichi 2021/12/23(Thu) 00時頃
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|
[ 探索を再開すると、獣人が声をかけてくる。 二人しかいないのに、いちいち自分が与えた名で呼びかけてくるのはどういうつもりか。 所有格の件といい、微妙に苛立たしい。
名前呼びは別として、獣人は、間もなく夜が来ると言った。 昼夜があるというのも天界とは異なる点だ。
冷えるらしいが、どうすればいいのか。
とりあえず翼に光を宿す。 安心感は生まれたが、あまり解決になっていない。*]
(-24) enju2 2021/12/23(Thu) 08時頃
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|
[少し早いが、今日はもう休むつもりで寝室に入る。 書物を一冊、枕元の読書台に置いて、寝台に横になった。 自身が発光しているので、読書灯は必要ない。
肘をついて頭を上げ、横になったまま読書する。 怠惰な姿勢ではあるが、最近はすっかり習慣づいていた。
天使はどうしているだろうかと顔を上げ、呼んだ。]
寒くなったならこちらにきなさい。 一緒にいれば少しは温かいだろう。
[寝台は広く取ってある。 天使は睡眠を取らないものが多いというが、一緒に横になるスペースは十分にあった。*]
(-25) nekomichi 2021/12/23(Thu) 18時頃
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[ 獣人が奥の寝室に引き上げる。 柔らかな光が漏れてきていた。 我知らず、惹きつけられて足を向ける。
覗いてみれば、獣人は人間のように寝台を使っていた。 両手が使える人型の方が何かと便利なのかもしれない。
偵察している気配を察したのか、彼が呼びかけてくる。
それは、一緒に寝ようと誘っているのか ? 風呂場でしたように ?
言語道断だと、天使は踵を返して厨房へ向かう。
火を起こせるだろうか。 天界の清らかな光とも、彼の宿す陽光の温もりとも、比べものにならないだろうが、少しは足しになればいいと願う。*]
(-26) enju2 2021/12/23(Thu) 20時頃
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|
[耳を倒し、天使が去って行く気配と音を追う。 どうやら厨房の方へ向かったらしい。
冷えると言ったからだろうか。 かまどの灰には、確かに火が埋めてある。 多少弄っても火事には繋がらないだろうが、天使自身が火傷などするかもしれない。
気にはなったが、見に行くことはしなかった。 ただ本を閉じて、楽な姿勢になり、気配を読むことに集中する。*]
(-27) nekomichi 2021/12/23(Thu) 23時半頃
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[ 知識として知ってはいるが、火で暖をとったことはない。 かまどの扱い方も知らない。
近づいてはみたものの、触るのさえ躊躇う。
熾火のぬくもりはあったから、かまどにくっついていれば、いくらか温かいだろうか── と考えたところで、天使は己れの怠惰さを叱咤した。]
(-28) enju2 2021/12/24(Fri) 08時頃
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[ 居間にとって返し、鍛錬を開始する。
集中していれば、余計なことは考えずに済むかと思ったが、ひとり稽古はかえって群れの仲間の不在を感じさせて気が滅入った。
それもまた魔界の夜のせいかもしれない。
切なくて息苦しいほどだけど、何も感じなくなるまで体を動かしていよう。*]
(-29) enju2 2021/12/24(Fri) 08時頃
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[天使はしばらくかまどの前にいたが、離れたようだ。 居間に移動した後は、なにかしている気配がする。
家の中を物色しているとか、外へ出ようと画策しているとか、そういう物音はしなかった。 どうやら、体を動かしているだけらしい。
何をしているのか興味はあったが、行くのはやめておいた。 居間に近づけば光で気付かれるだろうし、見られていると気付けば止めてしまうだろう。 慣れるまでは、放置しておくのがいい。 時間を掛けてゆっくり近づいていくのが良いのだと思う。]
(-30) nekomichi 2021/12/24(Fri) 11時半頃
|
|
[知覚の一部を天使の上に残し、意識のレベルを下げていく。
微睡みに近い状態になって、今夜はもう休むことにした。*]
(-31) nekomichi 2021/12/24(Fri) 11時半頃
|
|
[ 己れを剋するように鍛錬を続ける。 無心にはなれたかもしれないが、心が晴れてゆく感じはしなかった。
乾いて、ひび割れて、虚ろだ。 自分は何処まで来てしまったのだろう。
奥の部屋から漏れてくる光が天使を呼ぶ。
覗けば、獣人の頭は枕の上にあった。]
(-32) enju2 2021/12/24(Fri) 20時頃
|
|
[ 自分から天を奪った魔性に、好き勝手させてやるものかと思う。
扉の鍵は、彼が持っていると言っていた。 力を蓄えて、ここから出て行ってやる。 鍵を手に入れなくては。 回復して── 、 温かな…
消耗した思考が天使を導く。
気が付くと天使は獣人の足元にいて、二、三度、獣人の体に掌を這わすと、光を抱え込むように片翼をかざして臥した。*]
(-33) enju2 2021/12/24(Fri) 21時頃
|
|
[微睡みは完全な眠りではなく、天使が近づいてくるのは知覚していた。 何をするのだろうかと意識の欠片で追いかけていれば、毛皮を幾度か撫でられる。 そわそわした感触で覚醒したけれども、そのまま動かずにいたら、足元に顔を伏せた。
天使は眠るのだろうか。 それともうつ伏せているだけだろうか。 毛布でもかけてやりたくなったが、触ると起きるかもしれない。
光る毛を伸ばして天使の周囲に絡ませ、光の天蓋を作るに留めておいた。]
(-34) nekomichi 2021/12/25(Sat) 17時頃
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|
[すっかり目が覚めてしまったが、動くに動けない状態だ。 天使がいなくなるか、夜が明けるまでは横になっていようと思う。
足元の温もりは、なんだか心地良かった。*]
(-35) nekomichi 2021/12/25(Sat) 17時頃
|
|
[ 温かな光が染み込んでくる。 寂しいながらも、どこか安らいだ気持ちで天使は顔を起こした。
すぐ傍らに獣人が横になっているのを見つける。
蜂蜜色に光っているその体毛を、自分の指が掴んでいるの気づいて、瞬間、息を呑んだ。
自分は何故、彼の寝台に乗っかっているのか。 何かされたか。 いや、記憶にない。
獣人が動き出す前に、離れておこうと、そっと後退る。*]
(-36) enju2 2021/12/25(Sat) 17時半頃
|
|
[天使が顔を上げる。 離れていく温かさが惜しくて、一緒に上体を起こした。]
目が覚めたのか? やはり寒かったかね。
[そのまま体を半回転させ、寝台から足を下ろす。]
どれ。火を入れておこうか。 少しは温まるだろう。
[立ち上がり、厨房へと歩き出した。*]
(-37) nekomichi 2021/12/25(Sat) 18時半頃
|
|
[ 天使が動くとすぐ、獣人も起き上がった。 その動きは、天使のそれと違って戸惑いがなく、この瞬間まで待機していたことを推察させる。
いくらか後ろめたいような、恥ずかしいような気持ちがした。
獣人の問いかけには答えず、ただじっと見据える。
獣人の方も、それ以上、天使を構うことなく厨房へ向かう。 その振る舞いはとても自然で、邪な気配は感じられなかった。
それでも、天使はすぐ後を追うことはせず、ベッドに残った彼の体温を指先で探る。
当然ながら、鍵は見つからなかったけど、落胆はしていない。 時間稼ぎにすぎないことを自覚している。]
(-38) enju2 2021/12/25(Sat) 19時半頃
|
|
[ 手を動かしていると、背中が少し張っているのがわかった。 砕けた翼の生え際あたりだ。 再生が始まっているのかもしれない。
それは、ここ来て初めてのいい知らせだ。 鏡を見る習慣がないから、現状、どうなっているかわからないけれど、天使は指を組んで祈りを捧げる。
獣人が宿している光で回復したのは認めざるを得まい。
自分を捕獲したのが、彼以外の、もっと堕落した魔性であったら、どうなっていたことか。
それで贖罪になるわけではないが── 、と天使は唇を引き結び、心の壁を確かめておく。 魔性に油断は禁物だ。 翼の健全な再生のためにも、孤高を保って鍛錬を続けようと自分に言い聞かせる。*]
(-39) enju2 2021/12/25(Sat) 19時半頃
|
|
[かまどの前に立ち、埋めて置いた火を目覚めさせる。 鮮やかな赤に光る燠に新たな炭を添えてやれば、火は再び息を吹き返した。 ぬくもりが穏やかに広がっていく。
天使がまだ寝室にいるのを知覚しながら、自分の毛を幾度か梳いた。 指に絡んで抜けた長い毛を、指で編んでいく。]
ケラヴノス。 こちらに来なさい。
[かまどの前にもうひとつ椅子を用意して呼んでみる。*]
(-40) nekomichi 2021/12/26(Sun) 00時頃
|
|
[ 厨房から獣人の声がする。
ああ、あれは彼が選んだ呼称だ。 まだ馴染みが薄くて、日々、繰り返されないと忘れてしまいそうだと思う。
来なさいと言っているが── 命令のつもりなのだろうか。 それにしては、提案しているような響きに聞こえた。
何か食べないかという誘いなら、不要だけれど、 再生し始めている翼を見たら、彼から何か反応があるだろうか。 ただし、勝手に触ろうとしたら、それこそ戦うつもりだ。
そんな思索を巡らせながら、焦らすような手管はないままに、素直に厨房に足を向ける。*]
(-41) enju2 2021/12/26(Sun) 00時頃
|
|
[思ったよりも素直にやってきた天使に椅子を勧める。 それとは別に、求めるように掌を出した。]
夜の間、ずいぶん消耗していただろう。 少し、手を見せてごらん。
[手を見せるよう催促し、手首を素早く掴んで自分の毛で編んだ糸をくるりと巻き付けた。]
この毛はしばらく光っている。 君は光を糧に生きる天使のようだからね。 少しは君の足しになるだろう。
(-42) nekomichi 2021/12/26(Sun) 01時半頃
|
|
[掴んだ手を離さないままで告げ、不意にその手を強く引く。]
本当はこうするのが一番だ。 君が望むなら、いつでもしよう。
[腕の中に天使を捕まえて、抱きしめる。 全身が明るく温かく輝いた。*]
(-43) nekomichi 2021/12/26(Sun) 01時半頃
|
|
[ かまどには火が入っていた。
勧められた椅子を無視して、かまどの近くまで行く。 獣人がどうやって火をつけるのか見ておけばよかった。
獣人は天使の体調を案じる様子を見せ、手を見せてほしいと求める。
手を見たところで何がわかるものでもあるまいと従わなかったけれど、素早く掴まれて、手首に毛で作った紐を巻かれる。
光る紐はふわりと軽く、温かだった。
補給の足しになれば、との説明から、彼の宿す光が天使の回復に役立っているのは獣人も把握しているらしい。]
(-44) enju2 2021/12/26(Sun) 09時半頃
|
|
[ 弱らせたくないなら、魔界などに留めて置かないでほしい。 獣人が何をしたくて天使を手元で養おうなどと無謀なことをしているのか、理解できなかった。
光る紐を与えたのみならず、獣人は天使を引き寄せて抱擁する。 包み込むようなその光が、体の中まで差してくるようだった。
一瞬、体の力が抜ける。
彼の逞しい胸板が目の前だった。 手首に巻かれた編み紐と同じ色。
己の一部を与えるなど、いっそ献身的な申し出なのだろう。
けれど、拘束されていたり、動けないほど衰弱しているならばともかく、抵抗できる状態の天使に手出しして許されるなどと思わないことだ。
天使は気を取り直すと、すぐさま暴れて、獣人の腕を振り解こうとする。*]
(-45) enju2 2021/12/26(Sun) 09時半頃
|
|
[毛で編んだミサンガは天使に受け入れられたらしい。 外せという様子は無い。 抱きしめた最初の一瞬も大人しかったが、すぐに抵抗された。
そのまま抱きしめておくのに困難はなかったが、与えたミサンガの効果を試したくて天使の手首を撫でる。 編まれた毛の一部がするりと伸びてもう一方の手首に巻き付き、簡単な手鎖となって天使を拘束した。]
暴れるのは構わないけれど、危ないからね。 しばらくそのままでいなさい。
[拘束したついでに翼の傷を診る。 砕けた付け根が少し盛り上がっているのを掌で撫でた。 このまま再生するだろうか。 片翼の天使も良いが、飛ぶ姿も見てみたいと思う。]
(-46) nekomichi 2021/12/26(Sun) 12時半頃
|
|
[ 手首に巻かれた組紐が変容して、手鎖になった。
やはり魔性は油断がならない !
この先、何も受け取ったりするものかと決意を新たにして、縛られた手首を獣人に叩きつけて反撃する。 暴れるのは構わないなどと、余裕を見せて翼の痕跡に触れてくるのも腹立たしい。
温かな掌に包まれると、再生途中の翼は伸び上がろうと応えるかのようだった。 けれど、魔性の力を借りて再生などしたら、きっと濁った色がついてしまう。
思い切り身を捩り、嫌がってやる。*]
(-47) enju2 2021/12/26(Sun) 14時半頃
|
|
[拘束してやったら抵抗はより激しい物になったが、それでもまだ可愛いものだ。 叩きつけられる手を捕らえて、縛られた腕の輪の中に頭を突っ込んでみる。 そうして立ち上がれば、天使の足は宙に浮く高さだ。]
君は天界に帰りたいと思っているかもしれないが、 もう諦めた方が良い。 君は既に私のもので、天のものではない。
[腕の中に天使を捕らえたまま、その金の髪を撫でる。 単に撫でるというよりは、指を差し入れて梳く動きだ。]
(-48) nekomichi 2021/12/26(Sun) 15時頃
|
|
このあたりは私の領域で、他の魔物は寄りつかない。 一人は静かでいいが、時には他の生き物が恋しくもなる。
私に見いだされたのが運命と思って、ここで暮らすといい。
[語りかけるような穏やかな口調だが、天使を抱きしめる腕が緩むことはなかった。*]
(-49) nekomichi 2021/12/26(Sun) 15時頃
|
|
[ 腕さえ用いずに体を宙に持ち上げられ、諭す口調で獣人の理屈を告げられる。 天使は歯軋りしそうなほどに唇をきつく噛み締めた。
第一に、魔界に連れてこられた時点で、天に帰る道が閉ざされているのは承知している。 第二に、彼の所有物だなどという認識はおこがましい。
それを聞かされて、天使が新たな使命を見出すとでも思っているのか。]
(-50) enju2 2021/12/26(Sun) 22時頃
|
|
[ 他の生き物が恋しいのは、群れで行動する天使にも、よくわかる感覚だ。 だが、その矛先が異種に向くのは理解しがたい。 同族と連帯すべきだろう。
それとも── 彼は、彼の種族の最後の生き残りなのだろうか。
…いや、だが、そうだとしても、天使を拉致してきて、一緒に暮らせとは自分勝手にもほどがある。
後悔させてやるぞ。
あがくような膝蹴りを繰り出しながら、天使は、獣の体温に擦り寄りそうな自分を戒めた。*]
(-51) enju2 2021/12/26(Sun) 22時頃
|
|
[宙吊りでの蹴りなど、少々煩わしい程度のもの。 じゃれつかれているのと大差ない、と思えば愛しさも覚える。
首に天使の腕を掛けたまま、獣人から獣へと姿を変えた。 そのまま天使を床に押し倒し、のしかかる。]
君には印をつけておこう。 誰が見ても、私のものだとわかるように。 君が私の側を離れても、すぐに探せるように。
[牙の並ぶ口を開き、天使の首を咥える。 浅く肌を破る牙と、喉笛を舐める舌。 どちらも火のように熱く感じるだろう。]
(-52) nekomichi 2021/12/26(Sun) 23時半頃
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[口を離せば、天使の喉に文様が刻まれている。 まるで首輪のようなそれこそが支配の印だった。*]
(-53) nekomichi 2021/12/26(Sun) 23時半頃
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[ 足にあたる感触が変わった── と思ったら、彼の姿が変わっていた。 より毛深く雄々しい角を生やした獣がのしかかってくる。
脳裏に響いてくるような深い”声”は、天使に、これから起こることを告げた。
むろん、全力で抗うが、両手を戒められ、床に押し倒された状態から逃れることができない。
首筋に牙の烙印が刻まれる。 彼の命そのもののような熱を感じた。
天使は体を硬直させ、小さく呻く。
いつか、その牙を叩き折ってやると心に誓う。
挫けはしないとばかりに、何度も蹴りにいった。*]
(-54) enju2 2021/12/27(Mon) 00時頃
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[床に押し倒されても、なおも天使は蹴りつけてくる。 それは抵抗のためというよりも、意地のように思えた。
天使の上に腹ばいになり、体全体で乗る。 間近になった首筋や顔に舌を伸ばして舐めた。]
君に言葉が通じているか分からないから、 つい無理矢理になってしまうな。 君が喜ぶことをしてやりたいのだが。
いや。君の望みが聞けたとしても、 私はそれを聞き届けることはできないだろう。 君を手放すことも、光に返すこともしたくはない。
せめて快適に過ごさせてやりたいが、 どうもうまくいかないようだね。
(-55) nekomichi 2021/12/27(Mon) 02時半頃
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[体毛の一筋を伸ばして扉の鍵に触れる。 解錠の音と共に、外へ続く扉が開いた。]
気晴らしに、外へでも行ってくるといい。 私の側にいると、君も気疲れするのだろう。
私の領域内に、他の者はほとんど入ってこない。 危険があっても、刻印を通じて君を守れる。
君が出かけている間に、会話の手段を考えておこう。 文字が読めるなら、――いや。絵の方が良いか。
[考えを言葉にしつつ、天使の拘束を全て解いて、体の上からも退いた。*]
(-56) nekomichi 2021/12/27(Mon) 02時半頃
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[ 言葉が通じていないかもしれないと獣人は考えているようだ。 そんなに自分は彼の語りかけと無関係な行動をとっていたろうか ? 伝わらないものだなと思う。
天使は偽りを語らない。 彼が適切な問いかけをすれば答えるのはやぶさかではないが、魔性の言葉に耳を傾けるべきではないというのが天使の基本スタンスだから、会話は成立しないだろう。
言葉が通じても互いの望むところが異なれば、議論の余地しかなく、妥協なき共和は叶わないというのは、彼が直後に主張したとおりだ。]
(-57) enju2 2021/12/27(Mon) 12時半頃
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[ 獣人は外への扉を開けてくれたが、天使を逃すつもりはないらしい。 天使の気晴らしのためだと言った。
気疲れ ? 否、魔性に気を遣ってなどいない。
彼の重みが離れるや、天使は扉の外を目指した。
彼の姿を一顧だにしてやるものかという気持ちは、彼の言葉を理解していないという偽装ではなく、単なる意地である。
彼が何を与えるつもりでいても、天使が天界にいた頃より満たされることがあろうか ?
天使の知る世界が狭いのは認めるが、自分が今、幸せを感じているかについて迷いはない。]
(-58) enju2 2021/12/27(Mon) 12時半頃
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[ 獣のねぐらの外は豊かな草原だったが、やはり空は澱んで暗い。 回復も浄化もおぼつかなかった。
けれど、これだけの植物があるからは水脈があるだろうと、天使は水気を探す。
足で地表を歩くのは慣れていない。 片翼では浮力が足りなかったが、それでも懸命にバランスをとりながら、飛び跳ねてゆく。
やがて天使は岩の根本に小さな泉を見つけ、首周りの熱にふりかけた。 時間をかけて全身を洗い流す。*]
(-59) enju2 2021/12/27(Mon) 12時半頃
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[天使が出て行ったのを見送って、扉を閉めた。 前脚を伸ばし、後脚を片方ずつ伸ばしてあくびをする。 それから、軽い食事を摂った。 獣身でも大抵のことはこなせるものだ。
食事が済めば、自らも外へ出る。 草を踏んで歩き、大岩の上に飛び乗って、そこで腹ばいになった。
背中の毛がそれぞれに光を放ち、周囲を照らす。 光を浴びた植物たちが、そっと葉を広げる。 己の領域を保つための日課だった。]
(-60) nekomichi 2021/12/27(Mon) 13時半頃
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[天使の位置は特に把握していない。 夜になる前には探しに行こうと思う程度だ。
言葉が通じなくても、心が通わなくても、構わない。 少なくとも、植物よりは反応がわかりやすい。
いずれは関係も変わるかもしれないが、今はこれで良かった。 意識の片隅だけで天使を追いながら、大岩の上で目を閉じる。*]
(-61) nekomichi 2021/12/27(Mon) 13時半頃
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[ 体を洗った後は、乾かしがてら周囲を偵察する。
身の丈ほどの真っ直ぐな枝が落ちているのを拾い上げ、小枝を取り除く。 それを槍代わりに、架空の戦場をシミュレーションした。
貫き、両断するのは魔性の手にかかった同朋たちの幻影だ。 もはや、自分にその役目が巡ってくることはないとわかっているだけに、天使の表情は無だった。
群れの全員を消滅させかけたところで、ふと、花の香りが流れてくるのに気づく。]
(-62) enju2 2021/12/27(Mon) 16時頃
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[ 花の気配を辿っていくと、大岩の上から陽光が差しているのが見えた。
否、あれは獣の光だ。
花は、その彩りを彼の方に向けて、咲いている。 大岩の周囲全体が、そうだった。
まるで、彼を崇める素朴な信徒たちのようだ。]
(-63) enju2 2021/12/27(Mon) 16時頃
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[ 天使は、おのれの翼のささやかな光には反応しない花を見下ろしていたが、指を伸ばしてそっと摘み取る。 その隣で、彼の方を向いて咲く花もまた。
いくつもの花を集めて、リースを編んでゆく。
たくさんの花が咲いている方へと進んでいけば、気付かぬうちに随分と大岩の付近まで来ていた。*]
(-64) enju2 2021/12/27(Mon) 16時頃
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[大岩の上で寝そべっていると、天使の気配が近づいてきた。 顔は上げないまま、耳だけをそちらへ向ける。
何をしているのかは分からなかったが、確認はしない。 こちらが動けば、天使はどこかへ去って行くような気がしたからだ。
興味が先走って、尻尾がはたりはたりと揺れた。*]
(-65) nekomichi 2021/12/27(Mon) 17時頃
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[ リースを完成させて、その出来栄えに、ふっと微笑む。 集中を邪魔するものはなかったし、体も温まって軽い。 よい行いだったと思う。
と、何かの動く気配に、天使は、ハッと身構える。 ここは魔界の一角だということを思い出した。
見上げればすぐ側の大岩から獣の尾が垂れている。 それが動いたのだろうか。
うかつだった。]
(-66) enju2 2021/12/27(Mon) 17時半頃
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[ 天使は木槍と花輪を持って、その場を離れる。 気配を消すことはしなかった。
ほんの少し遠ざかるだけで、陽光の温もりが弱まるのを感じる。 惜しむべきか苛立つべきか。
自分の現在位置もよくわからなかったが、先ほどと同じようにして泉を目指そうと考えた。*]
(-67) enju2 2021/12/27(Mon) 17時半頃
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[どうやら天使に気付かれたらしい。 頭を上げて、去って行く姿を見る。 手に持っているのは、花を編んだ輪のようだ。
弾むような移動の仕方は一見楽しそうだが、当の天使にとっては不便なのだろう。 はたりはたり。 尻尾を波打つように幾度か動かしてから、立ち上がった。
前脚で伸び、後脚で伸びてから身震いをひとつ。 軽やかに岩山を降りる。]
(-68) nekomichi 2021/12/27(Mon) 18時半頃
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[距離を開けて、天使に付いていく。 あの花で何をするのかが気になった。
方角的に、泉へ向かっているのだろうか。 そういえば、天使の髪が少し湿っているようだ。
天使が止まれば自分も止まり、その場で伏せて眺めていよう。*]
(-69) nekomichi 2021/12/27(Mon) 18時半頃
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[ 後を尾けられているのに気づいた。 振り返って木槍を振り、追い払うような仕草を一度したけれど、後は無視することに決めて泉を探す。
背中がほんのりと温かくて、翼が自然と伸びる。 滑空を交えれば、跳ねるよりもう少し早く移動できるだろうか。
けれど、獣にそんな姿を見られるのも何だか悔しい気がして、翼は開いただけにしておく。]
(-70) enju2 2021/12/27(Mon) 19時頃
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[ 泉に到着すれば、花輪を水面に浮かべて膝をつき、祈りを捧げた。
主の御技を讃える歌もそれに供える。
さて、後は獣の領域の果てを探しにでも行こうか。 逃すつもりはないと言っていたから、どこかで邪魔しに入ってくるだろうが、だからと言って取りやめる気もない。*]
(-71) enju2 2021/12/27(Mon) 19時頃
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[一度威嚇されたが、天使は気にしないことにしたようだ。 こちらを見ずに進んでいくのを、変わらぬ距離で付いていく。
泉の前で止まった天使は、編んだ花を水面に浮かべて膝をつく。 草の上に座り、流れてくる澄んだ声に耳を傾けた。
祈りを終えた天使は、さらに先へ進んでいく。 泉の側に寄って残り香を嗅ぎ、花輪を咥えて首を振り、角に掛けた。]
(-72) nekomichi 2021/12/27(Mon) 20時半頃
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[頭に花を乗せて、さらに天使を追う。 やがて、行く手に灰色の大地が見えてきた。
あれが草原の終わり。領域の端。 瘴気に満ちた、むき出しの魔界が始まる場所。
天使はこの果てを見に来たのだろうか。 背中の光を収めて立ち止まる。 天使が領域を越えようとしているのか、その場に伏せた姿勢で注視していた。*]
(-73) nekomichi 2021/12/27(Mon) 20時半頃
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[ 壁も川もなかったが、そこが境界だとはっきりわかる場所につく。 光る獣の恩恵の終焉。その先に美しい花はない。
天使はそこで足を止め、振り返って、距離を置いて獣がついてきているのを目にする。 そこにいるだろうと予測はしていたから、驚きはなかったが、複雑な曲線を描くその角に、天に捧げた花輪がひっかかっているのを見て、目を細めた。
贄の獣のようだ。
目を合わせたまま後退り、境界をこえる。 自ら彼の元へ帰るなど、選べぬ話だ。*]
(-74) enju2 2021/12/27(Mon) 21時頃
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[天使が振り返る。 こちらを見つめながら、後ろ向きに境界を越えた。
分かっているだろうに。 その先は、光無き世界。 天使が生きていくすべなどないものを。
灰色の世界にぽつりと光る点となって離れていく天使を、首も持ち上げずに見送る。 その目は光そのものではなく、周囲からじわじわ滲み出す影を見ていた。]
(-75) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[胸の内で、ゆっくりと数を数える。 耳と目は、隙無く周囲の気配を探っていた。
領域の周囲には、有象無象の魔が群れている。 他の魔から逃れてきた、弱い魔物たちだ。 陽光の領域に入ることはできずとも、他の魔物もあまり訪れない周辺を隠れ家にしている連中だった。
彼らに、1羽きりの天使は魅力的な獲物に見えているだろう。 天使に刻印があることも、領域の主が見ていることも気付かぬ愚かなものたち。]
(-76) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[十を数える頃には、魔物たちもあからさまに天使を囲み始める。 もう十を数えれば襲いかかっているだろうし、天使も戦おうとするだろうが、それを待つ気はなかった。
立ち上がり、地を蹴り、空間を渡って天使の背後に現れる。]
じき夜が来る。 帰るぞ。
[唐突に現れた領域の主の姿に、有象無象はたちまち散り失せる。*]
(-77) nekomichi 2021/12/27(Mon) 21時半頃
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[ 境界の外は、空気の匂いからして違う。 たちまち目眩がしてくる。 これは、飛ぶどころではない。
それでも、よろめいたりするわけにはいかなかった。 木槍をついて体を支える。
見る間に周囲の澱みが蠢いて、異形の影が滲む。
さっそくお出ましか。]
(-78) enju2 2021/12/27(Mon) 22時頃
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[ 獣の威光を恐れて、領域侵犯もできない連中だ。 たいした実力はないだろう。
それでも、切り抜ける望みは抱いていない。 自分は動けなくなるまでに、たくさんの穢れた傷を負うだろう。
ここには執行天使はいないのだから。
── 救いはない。]
(-79) enju2 2021/12/27(Mon) 22時頃
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[ その時、獣の深い声が背中越しに届く。 闇を払い、花の香を纏って。]
── …、
[ 執行──せざる者。
主が顧みぬ者を迎えに来た獣の陽光色のたてがみを、天使は指で掴んだ。*]
(-80) enju2 2021/12/27(Mon) 22時頃
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[天使の指がたてがみを掴む。 その温もりに、小さく唸った。]
掴まっているといい。
[天使の下へ潜り込み、己の背の上へと投げ上げる。 輝く毛束で包み込むように支えながら、疾駆した。
草原を駆け、泉の脇を抜け、大岩を跳び越して、 我が家へ。]
(-81) nekomichi 2021/12/27(Mon) 22時半頃
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[家の前で足を止め、天使を下ろす。 天使の手をぺろりと舐めてから、扉を開けた。 尻尾をゆるく揺らしながら中へ入る。]
おいで、ケラヴノス。 冷えるから、扉は閉めて。
[丸い敷物の上をぐるりと回り、のすりと座ってから天使を呼んだ。*]
(-82) nekomichi 2021/12/27(Mon) 22時半頃
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[ 体が軽々と乗せ上げられる。 伸びてきた金の体毛は、縛るのではなく、包み込むようだった。
彼の体温が伝わってくる。
ずっと埋もれていたいような安心感があったが、そうしていられたのはほとんど一瞬に思えた。
ねぐらに辿り着き、獣は器用に扉を開ける。 舌で天使を舐めた理由はわからない。]
(-83) enju2 2021/12/27(Mon) 23時頃
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[ 優しげな声で呼ばれ、簡単な指示をされる。
今なら従うと思っているのか。 無視しても、彼は困りはしないのだろう。
あれは魔性だから──いけない。
天使は外から扉を閉めると、その扉に寄りかかって目を閉じた。*]
(-84) enju2 2021/12/27(Mon) 23時頃
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[扉は閉まったが、天使は入ってこなかった。 もう一度立ち上がり、空間を跳ぶ。 天使の前へしなやかに飛び出して、その体を再び背負った。]
側に来て欲しい、といえば分かるだろうか。 ひとりは、冷えるからね。
[そうして有無を言わさず家の中へ引き込んだ。]
(-85) nekomichi 2021/12/27(Mon) 23時頃
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[いつかわかり合えれば良いけれど、 いまはただ、そのぬくもりが欲しい。*]
(-86) nekomichi 2021/12/27(Mon) 23時頃
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