10 冷たい校舎村9
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[ 夜のお菓子パーティー。女の子の秘密。 あの状況下で開かれていたと知ったら、 女子って強いなあって思っただろうが、 男の子の慎一がそれを知ることはない。
とにかく、慎一はもう現実にいて、 いつもどおりではない悲しい出来事が、 動くこともなく目の前に横たわっている。
だから、ベンチには腰掛けないままも、 その隣に立ってぼんやりと、 上着のファスナーを指先でなぞってた。*]
(+30) 2021/06/12(Sat) 18時半頃
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[>>+27すごいことなってたという報告に、 あはは、と苦々しく笑って見せようとしたけど、 上手くできたかはわからない。
利美ちゃんがすごいことになっていたのは直視したから、 残された私のマネキンも、言葉の通りすごいことになってたのだろう。]
(+31) 2021/06/12(Sat) 21時頃
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そうだね。 ヒントは出してくれていたから、 私たち、答えなきゃいけなかったのかなって。
答えられなかったから落第して、 現実に帰された、とか。
[あのカッターナイフの大盛りだったり、 遺書のメールだったり、それらはヒントと言えばヒントだった。 そこから答えに辿り着こうとする心の余裕すら無かったから、 おそらくそれがダメだったのかもしれない。
答案用紙を白紙で戻した罰として、 私たちは校舎の出来事のその先を見ることを叶わず、 追い出されてしまったのかもしれない、なんて想像をする。]
(+32) 2021/06/12(Sat) 21時頃
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そうだなあ。 炭蔵くんなら合格してくれるかな。
[誰か合格してくれる人がいるとしたら、 乃絵ちゃんを除けば炭蔵くんがそのイメージに相応しいだろうか。 私は委員長の内面に触れるような話をすることは無かったので、 彼の印象は今でも変わらず、クラスの支持を一身に受ける無敵の委員長だ。
……それと、これは言わないけど、 私があの世界でお守りのボタンを託した芽衣ちゃんも。 彼女は、私がずっと抱えていた話を聞いてくれた時のように、 もしかしたら、と心の隅で願っている。]
(+33) 2021/06/12(Sat) 21時頃
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[夜のお菓子パーティーは女の子たちだけの秘密です。 男子には教えてあげません。 それに、もし乃絵ちゃんが戻ってこなかったら、 楽しい話では無くなってしまうのだし。]
あ、それズルい。 私も欲しい。
[>>+30向井くんがファスナーをいじっている。 あの校舎の中でも、昇降口が開かなかったあの時、 彼はクレセント錠をいじっていたっけ。
>>1:225あの時は言葉にしなかったけど、 今は外の空気を吸えて肩の力が落ちていたせいか、咄嗟に口に出した。 私のコートに付いているのはファスナーではなく、 黒くて平べったいボタンだったので、しっくり来ないけど、それを指先で掴んでみた。*]
(+34) 2021/06/12(Sat) 21時頃
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── 現在・病院 ──
……あ、でも、 本当にすごいことになってそうなとこは、 俺、見てねえから! 布団被ってたし!
[ 少なくともあっけらかんとした感じじゃなかった。 そのときの番代の笑い方の話。>>+31
それをどう取ればいいのか。 慎一がとっさにしたのはそんな弁明。
ほら、おなかの部分とかね。>>3:416 被せられていたのが布団というのもあって、 慎一がめくるのってどうなんだろって思ってさ。]
(+35) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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[ 不要かもしれない弁解をしながら、 あのときのことを思い出して、ひとつ気づく。]
……そういえば、あれ。 黒沢の字だったなあ、張り紙してあったの。
キツかったはずなのにな。 こんなことになっちゃうくらい。 限界だったとか書いてたくせに。
[ そんなときに気を回さなくてもいいのに。 残されてた張り紙を思い出して、>>3:417 「えらいなあ」より先にそう思ってた。]
(+36) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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[ 落第生ばかり肩を並べて、 おしゃべりしながら試験官の帰りを待つ。>>+32]
……うん、ヒントか。 答えがわからなかった、というより、 見ないフリしてた気がする、俺。
[ ぽつぽつとそんな言葉をこぼす。 落第生同士なんだから、 少しだけ反省点を述べさせてほしい。
慎一や番代に答えられなかった答え。 それに誰かがたどり着いてくれることを祈って。]
(+37) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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ユーガか。確かに。
[ 誰か、と言ったって、 あの場所には顔も名前も知っている、 クラスの友人らしかいないのだから、 名前を挙げてみることだってできる。>>+33
真っ先に、当たり前に炭蔵の名前が出て、 なぜか慎一は少しばかりうれしい。 やっぱり隠し事が上手だなあ。 くやしさは特にない。でも、どうだろう。
ふと、慎一は一歩二歩とベンチから離れて、 番代のほうを見ながら大きく手を広げてみる。]
(+38) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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……案外近いなあ。
[ その手の届く範囲の話。>>2:271
両腕を広げた長さは身長と近いと聞いたから、 たぶん、これより5cmくらい狭い範囲。
黒沢がその中にいてくれればいいけど、 でも、もしも今、あのなめらかな両腕が、 炭蔵自身をぎゅっとするので忙しくても、 慎一は失望なんかしないんだけど……、 はて、あのかんぺき人間はわかってるかな。
それとも、そんなことになったら、 自分で自分を許せなくなっちゃうんだろうか。]
(+39) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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[ 何事もなかったかのように元の位置に戻り、 慎一はほかの名前を挙げてみたりもする。]
レンがさ、すげえ考えてた。 何をしてほしいんだろう、 なんなら教えてほしい、って。
……今思うと、アイツ、 自分が張本人の気、全然なかったな。
[ 伝えれば、きっと助けになってくれる。 寄り添ってくれる。力を貸してくれる。
鳩羽だけじゃなくて、あの場にいたみんな。 それ以上アレコレ名を挙げることはないけど。]
(+40) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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[ ふいに、「ズルい」と言われて、>>+34 慎一は少し驚いて自分の手元を見た。
ファスナーの表面は、 凹凸がざらざらとして触り心地がいい。
あまり意識もしていなかった行為を指摘され、 ボタンを摘まむ番代を見て慎一は笑った。]
ヤだよ。あげない。
[ ……ダサいウィンドブレーカーだしね。 今度は意識的に。自分を落ち着かせるために。 その感触を繰り返し指先でたどりながら。]
(+41) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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[ しゃべってて気づいたんだけど、 自転車を飛ばしてきたせいか喉が渇いた。 あとで外の自販機を見てこようかなんて考えて。*]
(+42) 2021/06/12(Sat) 22時頃
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[>>+35自分のマネキンがどうなっていたかは聞かないことにする。 私の最後の記憶と、反応でなんとなく伺えるような気はするけどね。 >>+36張り紙の話とか。やっぱり手間をかけさせたんだなあと思い至る。
乃絵ちゃんはあの世界でもいつも通りのしっかりした子で、 その印象が崩れることは無かったのは私も同じ。]
(+43) 2021/06/12(Sat) 23時半頃
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[ここはさながら落第生たちの反省部屋。 テレビ番組で、脱落した人たちが集まって談笑するようなああいう感じ。 ……さすがにその想像は呑気すぎるか。やめよう。
>>+38>>+39ふと、向井くんが手を大きく広げている。]
??
[その意味が分からなかったので、 言葉にならない訝しげな声だけを上げて、首を傾げて見せる。 何かの距離を測っているようだった。]
(+44) 2021/06/12(Sat) 23時半頃
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[>>+40続けて鳩羽くんの名前が挙がったり、 とにかく、あの校舎に今も残っているであろう人たちを信じるしかない。 それしかないみたいだ、ということは共有できたと思う。 もう私たちは答えを、乃絵ちゃんが張本人ということを、知った身なので。]
(+45) 2021/06/12(Sat) 23時半頃
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えー。ズルい。
[>>+41ファスナーを占有する向井くんに、口を尖らせる。 いや冗談だけどね。私は自分のコートのボタンで我慢します。]
なんか、触ってると気持ちが落ち着くねー。 今まで自覚してなかったけど。
[あの校舎での向井くんを見て気付けたことだ。 私の場合は、無意識に何かを握り締める癖。 それが自分の心を救ってくれていたことに繋がっていた。]
(+46) 2021/06/12(Sat) 23時半頃
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[>>+42向井くんが飲み物を買いに行くようなら、 それを見送って、私は冷える廊下で待ち続けているだろう。*]
(+47) 2021/06/12(Sat) 23時半頃
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店番 ソフィアは、メモを貼った。
2021/06/12(Sat) 23時半頃
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「 前の日まで普通だった 」とか 「 いつもと変わらなかった 」って、 その人物が死んだ後に 周りの人が言っていたりすることって 割とままあるんじゃないかな。
(+48) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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"突然"自ら死を選ぶ、なんて そうそう起こるものではないと思う。
(+49) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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今回の私のは、あーー…………。 なんだろう、そんな気分だったから?
不思議な状況に巻き込まれて、 今まで考えてこなかったことの 新しい部分を見て。
そうしなきゃいけないと思ったからそうした。 自分にとって必要だったから。
きっと他人には理解されないだろうけど。
(+50) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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あの場所を作った誰かも、 何かをずっと募らせ募らせて、 それが必要になってしまったから、 こんな行いに及んでしまったのかなあ。
これはただの門外漢の予測に過ぎないけれど。 随分と溜め込んだ結果の爆発だな、とは思うかな。
(+51) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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死にたいって思うことも、 生きて欲しいって願うことも、 どっちも身勝手なお話だ。
(+52) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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[ ―――― そうして、目が覚めた。]
(+53) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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[ 起き抜けのぼんやりした頭で いつもの見慣れた自室を見回す。 それから何の夢見てたっけ、なんて のそのそと身体を起こして、]
――痛った、
[ 腹部に鈍い痛みが走って、 ついそこを抑える。 何かに刺されたような、傷跡が薄っすらと 臍を横切るように腹の真ん中に残されていて。]
(+54) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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…………。 ああ、そっか。
[ ゆっくりと自分の身体を抱きしめながら、 あれら全てがただの夢じゃなかったんだな、と。]
(+55) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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[ 変化はもう一つ。 …………ひどく、静かだった。]
(+56) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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[ そこまでして、携帯の通知に気付く、 利美からのメッセージ>>3:+4。 黒沢ちゃんの現状を示される文には、 ああ、成る程ねと。一応の納得をして。]
……やっぱり、図太い人の仕業だったね。
[ 彼女の言っていた形容を思い出しつつ、 小さくため息を吐いた。 両親はもう仕事に行っていた。 綿見家がこんなに静かであることを、初めて知った。 身支度を済ませれば、ゆっくりと病院へ向かおう。]
(+57) 2021/06/13(Sun) 00時半頃
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―― 病院/待合室 ――
[ 集中治療室付近とか、初めて行くんだけど。 そもそも滅多に病院にも罹らないし。
若干まごつきながら、病院の待合室に なんとなく座っていることにした。
いや、だって、こう。 もしかしたら彼女の悩みの一端に 私がなってたりもするかも知れないじゃん? 流石にちょっと気まずさはある。]**
(+58) 2021/06/13(Sun) 01時頃
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── 現在・病院 ──
[ バラエティ番組の反省部屋と比べれば、>>+44 このはずいぶんと静かだった。病院だもの。
それ以上聞いてこなかった番代に、 慎一がマネキンの話をすることはないし、
──あ、でも。 あまり口を挟まず話を聞いてた九重に、 「あのお札、なに……?」って、 怖々聞いてみたりして。
……専門的で難解な呪文みたいな、 オカルトトークが返ってくるんだとしても、 聞かなきゃよかったとは思わないよ。]
(+59) 2021/06/13(Sun) 01時頃
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