人狼議事


31 私を■したあなたたちへ

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【人】 銀河ギャル キャンディ

 思うように動かない身体を持て余しながら、2セット目の休憩中に大きく屈伸したところで、アポロに着信。初回の自己紹介と同じく、音声データを聞いていくと、運動と勝負に高揚していた頭の一部に、ヒヤリと冷水を浴びせられたよう。

 熟慮するよう数秒瞑目してから、緩慢に指を動かした。

(67) りしあ 2023/11/24(Fri) 16時半頃

【赤】 銀河ギャル キャンディ

(灰羅へ個人送信)

『黒須ワ個人としては、
お招きいただいてむしろ感謝しています。


未だ、故人のことが全て
理解できたわけではないですけど。
診断が心臓麻痺だったことを思えば、
るくあ本人が遺書等を残してはいなかったんでしょうし、
彼女の死を知り、悼み、眠る地も分かったことで
この島に来た当初の目的の殆どは達成されましたから。


ありがとうございました。
どうぞ、お 兄さんも、ご健勝であられますよう。』

(*2) りしあ 2023/11/24(Fri) 16時半頃

銀河ギャル キャンディは、メモを貼った。

りしあ 2023/11/24(Fri) 16時半頃


【人】 銀河ギャル キャンディ

 キャンディと黒須ワが同一人物だと結びつかない、そんな「人違い」の反応は正常だ。むしろ自身の確かなメイクの腕に自惚れながら、「運命?」と彼の不穏な単語に渋面になる。

「もしかしてキャンディの顔がタイプだったりするのか!?
るくあというものがありながらっ!!!?」

 半分冗談、半分は本気で凄んで見せるも、深入りする話題ではないと判断して、ついと視線を逸らす。相手はモブ顔と対極の顔面国宝様だ。妙技で塗りたくった擬い物の顔に、そこまで惹かれるとも思えない。

(124) りしあ 2023/11/25(Sat) 02時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「救難信号……リミット……、
   そうか、急いだ方が良さそうだな。」

 全アトラクション制覇の目標を掲げた以上、達成前に強制中断は避けたい。
 その一環としてのギャラクシーホッケーだったが、正直言って相手を舐めプしていた。有難いアドバイス(>>81)が耳に入っても、つい憎しみ全乗っけの地球は、回転のかけすぎでゴールでなく壁や正面の防護にぶつかってばかり。苛々と歯噛みするも、またしても相手のシュートが此方のゴールに突き刺さったファンファーレが鳴り響いた。

「――――っくしょう、神様は不公平だ!!」

 敗北を悟り、天を仰いで膝をつく。真っ白な灰の如く燃え尽きた闘争心。スッピンの顔を汗の珠が転がり落ちる。
 坂理は汗を拭う所作すら、一端のアスリートみたいな爽快さを伴うのに。敗残兵の自分は肩で息をしながら、渇いた喉を潤すのは水でなく、容赦ない追撃の『ギャラクシードリンク』。中央カフェでしか提供されないそれを、モナリザが粛々と運んで来た。刑執行待ったなし。

(125) りしあ 2023/11/25(Sat) 02時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「くそっ、思ったより酷い臭いだな……!?」

 ドロドロとした辛うじて液状のダークマター。醗酵というより腐敗したプルーン的な悪臭。ロケット・ランチとは別の意味で、人間の飲物ではない。もしかするとこれを呷れば、るくあのところに逝けるのでは、と思わせるだけの劇物である。
 味音痴な自覚はあるから、例え自分が飲むことになってもほぼノーダメージ、相手は悶え苦しみ息絶える。そんな筋書きだったはずだが、ギャラクシードリンクは想像以上にヤバそうだ。

 余裕の勝者をチラ見する。最早るくあの笑顔とカブることもない、悪魔だ、悪魔がここに居る……!!
 息を止めて、南無三と心で念じると、グラスを思い切り傾けた。

(126) りしあ 2023/11/25(Sat) 02時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「〜〜〜〜〜〜〜〜っっっぶはっ!!!?!?


ダダダメだダメだコレはダメだ!!!!!
お前に負けて飲むと思うと、
激烈にマズくて猛烈に苦々しい!!!!」

 うげええぇ、とお聞かせできない異音と共に、胃から迫り上がる酷い臭いが鼻に抜けていく。一瞬、涅槃でるくあがオイデオイデと手を振っていた気がする。

「み、……水、を。みずぅ……。」

 霞む視界の中、白い機体へと弱々しく手を伸ばして。パタリと地へ伏す黒須ワ19歳、最期のことばがそれであった――。**

(127) りしあ 2023/11/25(Sat) 02時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 彼の言は正しい。るくあに出会う前は、学友と下世話な話に花を咲かせても、乾いた笑いの奥で心はずっと凪いでいた。五感も鈍り、無味乾燥とした世界を死んだように生きていたあの日々。るくあを失って、またあの灰色の生活に戻るかと思いきや、嫉妬や激情の発端はるくあでも、今は間違いなく目の前の宿敵にあらゆる負の感情をぶつけている。プラスマイナスの違いはあれど、平然とした顔で流されるのまで、るくあと同じような。

 るくあが、そしてるくあの隣に並び立つ存在が、殺したいほど憎らしくて羨ましくて眩しくて、自分は"その他大勢"の傍観者に過ぎないのだと、痛感させられる。

(164) りしあ 2023/11/25(Sat) 16時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 ギャラクシードリンクによって瀕死の淵で喘ぐ身では、彼の敗北宣言もネタ晴らしも、意味為さぬ音が右から左の耳穴に通り抜けていくだけ。増して、どんな表情をしていたかなんて、確かめようもなかった。

 謙遜しているのか、憐れんでいるのか。連絡も取れず会えなかった夏休みを挟んですら、半年に満たない交流を、手を数度繋いだだけの拙い関係を、付き合っていた元彼だと主張するしかない自分に対して、彼は幾つものお揃いをあれだけ見せびらかしておいて、交際ではないとあっさり否認する。

(165) りしあ 2023/11/25(Sat) 16時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 切れそうな命の糸を繋ぐため、口腔を漱ぐ水を含み、飲み下そうとして咳込む。涙目で滲む視界に、立派で分厚い装丁の冊子状のもの(>>151)。仰々しい書体を判読する前に、一方的に不足分を請求される。
 付け睫毛を外した切れ長の双眸が、スローモーションのように開閉する合間に。焦点を結べぬほど近く、坂理の明るい髪色が飛び込んできた。

「ん゛っ――……っ!?」

 悲鳴が喉奥でくぐもる。何が起きたのか理解が追い付かぬ内に、窒息の危機に晒されていた。鼻呼吸なんて忘れている。
 水で幾分薄まった苦みに、別のナニかの味が重なった。生暖かくて濡れた感触。るくあとなら、幾度も夢見たそれは――、

(166) りしあ 2023/11/25(Sat) 16時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「……ちょっ……待っ……おま、 っ……な、ナニ、が、

…………!!??????」

 ちくりと棘のような痛みを残して去り行く一点の熱に、はくはくと空気を噛むこと数秒。わなわなと生娘のように肩を震わせて、余裕の舌舐めずりすら凄絶な色香を放つ美貌の宿敵を涙目で睨みつけた。
 当然、反射で唇をゴシゴシ拭おうとしたが、直前ではたと硬直。

「え、も、もしかして、るくあと間接キスなのでは……!?」

 それ以前に自分にとってはファーストキスなのだが。急にドキマギ赤面し始めるモブ男に、飄々と立ち去る彼が回答をくれたかは、風のみぞ知るところ。**

(167) りしあ 2023/11/25(Sat) 16時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――深夜/メリーゴーランド『銀河の海賊』前――

「どーすんのコレぇ……。
坂理め、しれっと厄介事押し付けやがって。」

 ダークマター・キッスの衝撃から、幾つのアトラクションに揺られただろう。最初に『宇宙遊泳』4周で飛ばし過ぎたせいか、そろそろ三半規管の限界が訪れていた。宇宙海賊が船酔いとは、残念な結果だ。
 ベンチで休憩withモナリザ。ブーツ運びをさせてしまった月星マークの機体を、心で勝手に『ヒデヨシ』と呼んでいる。手には先程の坂理の置き土産。よくよく読めば銀島の権利書で、自分の手にも終えないが、棄てるわけにもいかず途方に暮れている。そもそも、どこで入手したのだろう。灰羅あたりから盗み出したのだろうか?

「配信者稼業は廃業する予定だったけど、
コレで不動産王になれるわけでもないしなァ。」

 まともに遊園地経営に乗り出してみれば、存外軌道に乗るかも知れないが、やっぱりるくあは静かに眠らせてあげたい。
 どこかにちゃんと慰霊碑を建てて、銀河ギャルキャンディとモナリザ'sがお出迎えするギャラクシーランドを賑わせる未来も、あったかも知れないけれど。

(207) りしあ 2023/11/26(Sun) 00時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「こんな嵩張るモノ持ってちゃ、
観覧車よじ上るのも一苦労だよね……うぅん。」

 モナリザのディスプレイに表示されたデジタル時計は、既に日付が変わっていることを伝えている。救援はいつ頃来るのだろう。それまでに決めなければ。自分の居場所を。

「るくあ、好きだよ、好きだ――。」

 星空を見上げながら心で慟哭する。カウントは728回を刻んでいた。**

(208) りしあ 2023/11/26(Sun) 00時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――深夜/中央カフェ――

 最後の晩餐がギャラクシードリンクなのはさすがに御免被りたい。深夜まで遊び歩く中、さすがに空腹を覚えてカフェの隅っこで一息。
 子供が喜びそうな見た目の拘りメニューがずらりと並ぶ。彩り豊かなオムライス・プラネット(>>2:17)を注文してみたけれど、三色のオムライスの味の違いが分からない、残念な結果になってしまった。

「不味さだけ分かるのって、
苦行以外のナニモノでもない……。」

 口元を汚す無味のチーズソースを舐め取って。存外柔らかかった他人のくちびるの感触なぞを思い出す。混乱は未だ晴れず、黒髪をガシガシ掻いてから、テーブルに突っ伏した。

「仮眠とる。誰か来るか、3時間経ったら起こして。」

 モナリザに見守られながら、起きたら関節の痛み必至な姿勢で、夢のない眠りへ落ちていく。**

(254) りしあ 2023/11/26(Sun) 14時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――中央カフェ――

「ん……? 
ふぁーあ……ねむいな……寝てていい?」

 ピピピッ、――ピピピッ、 微かなアラーム音。

 目を擦りながら大きく両手を天に突き上げる。無理な体勢で寝たから、予想通り全身がゴキゴキ軋みをあげていた。半覚醒の頭で、アラーム発信源のモナリザを見て、おふぁよぅ、と欠伸を一つ。
 窓から見える空は薄らと明るい。そこで漸く、寝入る前にはなかった、机上の封筒(>>275)に気が付いた。預かりものをしかと届けたと、胸を張る代わりディスプレイを明滅させるモナリザに、うん、と目を眇め頷く。

「誰か来たら起こして、って言ったのに。
寝言で変なこと言ってなかったかな……あ、卯木さんか。」

 ころん、と落ちてくる硬貨。便箋を読んでも、それが何なのか理解するのに数分を要した。頭を抱えて呻く。

(334) りしあ 2023/11/27(Mon) 10時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「これ、マジで言ってる……?
あんな短期間行ってただけで、客の顔を、
僕のことを覚えてるなんて……。

マスターってそんな記憶力あるの?
あの時は変装だってしてたのに。
もしや卯木さん、本業は探偵かナニか??」

 封筒ごとパーカーのポケットに捻じ込む。しがらみが、また増えてしまった。誰の記憶にも残らない、取るに足りない存在に自らを貶めたいのに。

「世界にはお人好しが多過ぎる……。」

 朝食代わりに、太陽に見立てたブラッドオレンジが飾られたスムージーを飲み干して。モナリザを従えて、「次はどこ行こうか。」とエアるくあに問いかける。マップに表示される、未体験のアトラクションは、後8つ。**

(335) りしあ 2023/11/27(Mon) 10時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――三日目――

 カフェの片隅のカプセルトイを、景気付けに5回ほど回してみた。最後に、シークレットがくる予感はビンビンしていたけれど、結果はやたらと毛足の長い太陽。う〜ん残念無念。

「キミは僕の太陽だ――なんて思ってたけど。
るくあのイメージはやっぱり星かな。
でも、空に輝くあの小さな光も、
実際は恒星なんだから太陽も同じ、かも。」

 ボールチェーンの先、眼前で赤い毛玉を揺らしながら、口角を歪めて苦笑する。

(346) りしあ 2023/11/27(Mon) 13時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 まず足の向いた先は、『星の夢』と掲げられた貸衣裳館。キャンディの衣装に勝るとも劣らない、そこはかとなく宇宙的なコスプレ衣装がずらりと並んでいる。試しに手に取ったのは、耳にタグのついた白鼠の着ぐるみだった。人間サイズだと、かなり巨大な鼠になってしまう。

「実験動物的なヤツかな。早々に投棄されそう……。
この遊園地のマスコット的存在なら、
モナリザで十分だよね。
るくあは、こっちなんてどう?」

 一見すると、手術に臨む医者のような白衣とマスク。だがセットに、顕微鏡のレンズが複数くっついたようなゴツいゴーグルが付属している。さながら、怪しい人体実験でもしてそうな科学者のコスプレ。

(347) りしあ 2023/11/27(Mon) 13時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「女医さんやナースもいいけど、
もうちょっと宇宙風味足さないと
園内で浮いちゃうかなァ。

こっちの、金属の全身覆うみたいのも、
神秘的で恰好いいね。
どうせなら、僕が衣装に似合うメイクとか
してあげたのに……いくらでも……。」

 一通り、あれこれと見回ったけれど、そもそもキャンディの姿がコスプレのようなものだ。今は中学生の頃の気持ちで、るくあとのデートを妄想しているのだから、担当のモナリザに頭を下げて、モブスタイルのまま建物を*出て行く。*

(348) りしあ 2023/11/27(Mon) 13時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 プラネタリウムで星を鑑賞したり、遊覧船に揺られたり。
 のんびりと満喫していたら、結局は全部乗りきらないままに、その時はやってくる。

 救援の船が到着する頃。地味な青年の姿は桟橋になく、尚回り続ける観覧車の下に。

「きっとあの天辺が、この島で一番宇宙(そら)に近いね。

――楽しかったよ、るくあ。
きっと、キミが一緒に遊びたいと思っていたみんなも、
楽しんでいたと思う。

でも、もうじきに、夢は醒めるんだ。

キミの居ない、灰色の現実に、かえる時間だから。」

 眩い陽射しに手を翳しながら、一心に円周上の最高地点を、様々な絵の描かれたゴンドラが過ぎていくのを眺めて。覚悟を決めたように、固唾を*飲んだ。*

(349) りしあ 2023/11/27(Mon) 13時半頃

【赤】 銀河ギャル キャンディ

(一斉送信)
『ボクはるくあとずっと一緒に居たいから、
ここに残るよ。

キミたちは気にせず、日常に戻って。』

(*18) りしあ 2023/11/27(Mon) 22時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――観覧車――

 遺書にも満たない短い文を、『アポロ』に打ち込んで送信して。デバイズを外すと、最後まで付き合ってくれたモナリザの首にかけた。ついでのように、権利書一式も押し付ける。

「桟橋に行って。何なら救援の船に乗せて貰うといい。」

 ポンポン、と優しく頭を撫でてやると、モナリザは聞いたことのないピルピルした電子音を発した。そのままじっと、岩のようにその場を動かない。島から出られないよう、プログラムに組み込まれているのだろうか。
 離れ難さに2つほどゴンドラを見送ったけれど、意を決して空に溶ける青い地球色のゴンドラに向かう。開いた扉の隙間に手と足をかけ、ゴンドラ本体の上に飛び乗った。

(390) りしあ 2023/11/27(Mon) 22時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「――行ってったら。」

 どんどん小さく遠ざかっていく、此方を見上げるモナリザの姿。緩慢に見える回転速度も、風を切るゴンドラの天井に座れば、結構早いのだと体感する。太陽に灼かれたゴンドラの表面は熱く、お尻が焦げそうだ。
 バイバイ、と手を振っても、追い払う仕種をしても、眼下のモナリザは去ってくれなかった。困った子だ、と呆れた失笑。緊急停止でもされたら、自力でゴンドラを攀じ登るらなければ、未だ高度が足りない。

「…………夢みたいなひとときだったね。」

 風に煽られる短い髪を抑えながら、隔てるものなしに足元に展開するギャラクシー・ランドの全景を収め、うっとりと呟いた。*

(391) りしあ 2023/11/27(Mon) 22時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 時折風に揺れ、軸の繋ぎ目でガタンと傾ぎ、曲面に座った身体はバランスを崩しそうになる。その度に冷やりとしながら、爪を立ててしがみ付いて、体勢を立て直して。本能的に四肢は震えてくるけれど、胸中は次第に解放感と清々しさが充ちてくる。味覚と同じように、恐怖心すら次第に麻痺してしまうのだ。


 死への畏れを凌駕するそれは、ただの脳内麻薬の作用に過ぎない。愛と錯覚するには、狂い過ぎている。


 予行演習は終えていた。窓から落とした向日葵のコームのように、自分もまた誰にも見つからず、掃除ロボットの手だけ少し煩わせてしまうだけ。
 弧の軌道が天に差し掛かる。上昇は緩まったから、作業のようにゆっくりと確認しながら。一本一本指をゴンドラから剥がし、腰を上げ、不安定な足場に二本の足で、まるで初めて立ち上がった赤子のように。

(404) りしあ 2023/11/28(Tue) 00時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ



 世界が あお で埋め尽くされる。

 るくあの居ない世界の色。

 あおが沁みて眼球を覆う水分が、粒になって散っていく。

  

(405) りしあ 2023/11/28(Tue) 00時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 蒼穹の果てに、あるはずのない星を一つ、見つけた気がした。
 その輝きを手中に掴もうと腕を伸ばす。上体が泳ぐ。何の変哲もないスニーカーの足が、トントンと踏鞴を踏む音。

「――――――――っ」

 吸わずとも肺に飛び込んでくるほど、風が強い。悲鳴も出せない。

 人は高所から落下する時、途中で失神すると謂う。
 けれどそれより更に高みから、スカイダイビングなら地表まで意識はハッキリしていると。

 落下速度のせいなら、自分は前者だろうか。

 ただ、放り出された空はどこまでも広くて広くて高くて優しい。

 その青空の抱擁に委ねる刹那は、
 自由と存在と実感が、
 ちっぽけな命とともに、確かにあった。*

(406) りしあ 2023/11/28(Tue) 00時半頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――9月XX日/カモメ荘108号室――

 ピピピッ、――ピピピッ、 耳慣れたアラーム音。

 頭が割れるように痛くて、ガンガンコンクリ壁にぶつけられてるよう。歪む視界は完全に宿酔のそれで、天井と自分の間に割り込む音の発信源の白いロボットを胡乱げに見上げた。

「…………っつつ、……またイけなかった?


やっぱり市販薬程度じゃ、どれだけ混ぜてもダメかぁ。
        ―――― っう゛ぅぅ、ぇえ゛、」

 敷きっぱなしの薄汚れた布団から、苦労して身を起こす。途端に頭痛が酷くなって、ユニットバスまで這って行った。
 ギリギリ間に合って、迫り上がってくる胃液や何やを、床にぶちまけずに済んだ。洗面台に凭れながら嘔吐する。
 曇った鏡には、幽鬼のように痩せこけて尚薄い顔立ちの青年が、窪んだ眼窩に虚ろなまなこを置いて、佇んでいた。傍らに、タオルを差し出す白い機体を*伴って。*

(409) りしあ 2023/11/28(Tue) 01時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

――9月XX日/カモメ荘108号室――

 島を訪れたあの日から、キャンディ🌟チャンネルに新着動画が投稿されることはなかった。配信用のウィッグも衣装も化粧道具も、今は一切破棄して室内は簡素なモノトーン。ブロック型の栄養補助食品と爪とを交互に齧りながら、デスク上のモニタに映っているのは動画編集ソフトでなく、裏掲示板の書き込みだった。

「心臓麻痺に誤診される毒物ってどれかなァ。
できればるくあと同じのがいいけど、
キラ様に訊くわけにもいかないし……。
2度も幇助させたら駄目だよね。


……うぅん、どれも高い……。」

 三つほど約束を取り付けてから、ネットバンクで支払いを済ませる。全ては画面越しで実感に乏しく、あの遊園地での出来事もまるで夢のように遠く記憶の底に霞む。現実は、灰色の水槽を搖蕩うようで、その乖離感を越えるのは痛覚だけになっていた。

(461) りしあ 2023/11/28(Tue) 12時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

「早くしないと、――もう随分キミを見ていないから、

好きなのに、大好きなのに、――だったのに、
忘れてしまう。顔も声も思い出せなくなってしまう。

  ……だから、はやく、し ないと、……」

 半分以上赤黒く染まってしまったミサンガごと、左腕の蚯蚓腫れを掻き毟る。圧し掛かる不安に、眩しい彼女の笑顔を必至で思い出そうとするのに。いつしか柔和な表情は、よく似た坂理の風貌と重なって、脳内のるくあを上書いていく。だからモナリザのカウントは、5桁に入る前に停滞してしまっていた。

 甘い毒の染入る感触をなぞるように、罅割れたくちびるを指先でなぞる。

(462) りしあ 2023/11/28(Tue) 12時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 準備も計画も整って、後は実行を待つばかり。ラップトップとモナリザをコネクタで繋いで、遊園地の管理とは異なるプログラムを流し込む。

「キミったら、銀島の外の地図すら組み込まれてない
超カスタマイズ仕様だもんなァ。
色々調教するの苦労したけど、
最新にアップデートしておいたから、暫くは大丈夫。

死亡届けも火葬予約もオンラインで仕込んだから、
後は大家さんを呼ぶのと、兎坂庵にお使いね。
何ならそこでまた、給仕の仕事するのもいいんじゃない。
……和風の店構えと、やっぱりぜんっぜん合わないけど。ふふ。」

 遺書はなく、全ての指示はモナリザへ。

 巡り巡ってきた銀島の権利書と。
 自分だけ異なる苗字の同居家族を疎んじて、十八歳で分籍した『宗美ワ』と書かれた謄本と。
 時限で手続きされるはずの、各種届出のコピーと。
 『お手数をおかけしますが、銀島に眠らせて下さい』と添えた骨壺と。

 向日葵の枯れる季節から、数週間遅れて。木々が紅に染まる前に、プログラムされた通りモナリザが兎坂庵へと全て届けてくれるだろう。**

(463) りしあ 2023/11/28(Tue) 12時頃

【人】 銀河ギャル キャンディ

 ――銀島。


 一体、また一体と欠けてゆき、辛うじて動き続けるモナリザたちは、今日も園内を掃除し、点検し、ホテルの客室も整えて、水やりもこなしながらお客様を待っている。

 冷たい潮風が島を渡る頃、そこかしこに植えられたクリスマスローズが可憐な花をつけ、白、薄紅、淡橙、黄、緑、桃色から濃紫まで、グラデーションの波を描いて揺れていた。それはきっと、この地に眠る魂を、優しく慰撫するように、寄せては返し、幾度も、幾度も。



 誰も目に留めることのない、観覧車脇の一株に隠れるように、添うように。端が罅欠け錆びついた向日葵の飾りが、置き去りにされていた。

(534) りしあ 2023/11/28(Tue) 23時半頃

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