2 【R18】夢見る議事の村【RP半再演】
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[青戸は繋がってるファン共に貢がせ ギターの楠田は家が裕福で息子に甘く幾らでも金を貰える ドラムの上須は年上の高給取りの彼女に養われ それで俺は常に複数バイト。
そうしなきゃ活動出来ないいつまでもそこから上がれないバンドってのは、社会人が休日趣味でやってるアマチュアと変わらない。 それが現実に受ける評価だ。
確かにそんな生き方すら難しくて解散する連中も、大きい借金を負ってしまう奴もいるよ。 東京だけでも覚えてるくらい通ってる顔がいて、少数ロットでもグッズが売れて、殆ど金は入らないけどCDもたまに制作出来る。どん底にいるわけじゃないのは事実。 だけどこの同期には置いて行かれ、背後から次々新人が迫ってくる状況にこいつらは何も思わないのだろうか。 大学時代に掲げた夢は、ただの趣味みたいな小規模の活動だっただろうか? 悩んでるのは、俺だけなのだろうか。]
(18) 2020/11/20(Fri) 04時頃
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白井も何で呼ばれたのか分かってるのか?
つまりこいつらは、 練習時間を増やす為に俺にバイトを減らさせたくて お前が財布になってくれることを期待してるんだぞ?
[考えてみれば答えは明白だった。 なるほど、バイトばかりで空いた時間は男とつるんでいる金無しメンバー。そいつを剥がして女を与えて養わせたいと。
その時、青戸に胸倉を掴まれ、間髪入れずに拳が飛んだ。 何も言わずに立ち上がり、周囲の客の視線を感じながら俺は席から離れていく。
もう話し合いをする気が無いならいいだろう。このままいると店に迷惑も掛かりそうだし。]
(19) 2020/11/20(Fri) 04時頃
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「目を覚ましてよ椎谷君!」
(20) 2020/11/20(Fri) 04時頃
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[男共の感情的なやり取りに狼狽え、上手く口を挟めずにいた白井が背後で叫ぶ。
お前が覚ませよろくでなしの野郎とばかり関わりやがって。 俺とあの人のことは、放っておいてくれよ。
くだらないことに時間を使ってしまった。 あの人もそろそろ帰ってしまう時期だから、少しでも部屋にいる時間を増やしたいのに。
歩きながらスマホで愚痴を送ろうとした。きっとあの人ならすぐ、落ち着かせてくれるだろうから。 だけど上手く連絡先を見つけられない。こういう時、人脈を広げないといけない仕事は面倒だな。イライラしてるのも大きいだろうが。
────風鈴の音が聞こえる ネオンが彩る時間帯に都会で、随分不似合いだ。 異常気象で暑さが長引いているから、しまい忘れた店でも近くにあるのだろうか。**]
(21) 2020/11/20(Fri) 04時頃
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[あの日に俺が言った言葉は、確かに正しかった。 だけど隣に居る為には間違っていたのだろう。 アンタが欲しかったのは現実的な救いでは無かった。
なら、どうすれば良かったのか。今でも分からない。]
(22) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[だけどなんだっていいんだ。 今こうやってアンタは側にいるのだから。
────そうだろう?]
(23) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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怒ってるのかな 疲れてるのかも知れねぇな
[あれから数日が経過した。スタジオ入りの日が遠いのをいいことに連絡そのものを拒んでいる。 バイト先が多すぎて、いつ何処で働いているのかあいつらには分からないのが幸いだ。どうせ今まで興味も無かったことだろう。]
慰めに抱き締めてくれてもいいぞ
[こういうこと言い出す辺り、やっぱり俺もオッサンになってきてる。 目前に並んだ缶のせいのほうが大きいと自分では思いたいが。
いつも家主の如く占領してる癖に、俺が来るとすっと脇に避けているのがなんとも物寂しく感じて。 逃げる猫か掴めぬ蝶か。この人がうちに来るようになってから指先すら触れた記憶が無い。]
(25) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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……冗談だっつの
[やめろよその顔。 昔みたいに誂えよ、お願いだから。]
(27) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[積み上がった洗い物をどうにかしようと台所に向かった。 それでも一人分だから大した量では無いんだけど。
あの人は物も食べず、部屋も綺麗に扱ってくれている。 合鍵すら毎日同じ場所に同じように戻している。
掃除も億劫なくらいに疲れていることが多いからとても有り難く感じているけれど、俺の痕跡ばかりが部屋に蓄積するのが、なんとも。
帰ってしまえば本当に元通りなんだよな毎年。]
(28) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[捻る蛇口から落ちる水が、上手く流れずシンクに留まる。 ああ、排水溝は暫く掃除してなかったかもしれない。
人間見えない部分は無いもののように思えてしまう。 有るものだけが本当みたいに、意識を向ける。
特に、疲れている時は。]
(29) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[────風鈴の音が聞こえる。 うちにそんな可愛いものがあるわけが、無いのに。]
(30) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[振り返る暇も、意味を問う時間も無く。 インターフォンが鳴り玄関へと向かうこととなる。
締め忘れた蛇口から、静かに水が流れ続けていた。 少しづつ、少しづつ。嵩を増してゆく。]
(32) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[うちの安マンションはオートロックなんか無い。 部屋の前までなら誰だって来られてしまう、だから透世も毎年俺の帰りを待つことが出来ていた。
覗いた先には白井真由美が立っていた。 唇を噛み締め蒼白の面持ちで、何かを決意したように眼差しだけは真っ直ぐに。]
(33) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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「お願い、開けて。 私一人なの。無理に上がりこんだりもしない。 ────ただ、聞いてほしいだけなの。」
(34) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[震える女の声を聞いている間も、風鈴は軽やかに響き続ける。**]
(35) 2020/11/21(Sat) 19時半頃
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[チェーンを付けてドアを開いた。 白井はそれについて文句を言うことも無く、拒まなかったことに礼を言って話を始めた。 あの後も自分達は場所を変えて話を続けたこと、俺が連絡を無視してる間もやり取りをしていて部屋はメンバーから聞いたこと。 詳しくは語らずただ事実を述べるような言い方は、こちらを刺激しないようにしているようにも思える。
あの場の唯一の女だった、大人しい性格の白井。 きっと怖かったに違いない。そんな風に思える程度には、今は冷静だった。 中に入れる気は無いし、早く帰ってほしいことに変わりはないが。]
(36) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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「今も、入井さんはいるの?」
[ちゃんと食事はしているのか、何処か母親じみている質問が幾つかされた後にその問いが落ちる。 探るみたいに部屋の奥へ視線が動いたのを見逃さなかった。身体で塞ぐようによりドアに近くなる。]
いる。でももうすぐ、帰るんじゃねーかな だからあいつらにも安心しろって言っとけよ
[何が気に入らないのか今でも分からないけど、つまり俺とあの人が離れたらそれでいいのだろうから。 だけどやっぱり何かが噛み合わなくて、白井の表情は暗くなるばかり。]
(37) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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「……そう、いるんだ。」
[────可哀想なものを見るみたいな目。 居酒屋で見せた上須の珍しい様子を思い出させられる。]
なんだよ…… あの人と俺が一緒にいるのは、そんなに駄目なのかよ
[青戸みたいにキレてくれたらこっちも同じように声を荒げられる。 メッセージはスマホを置けば無視できる。 だけど面と向かって、ただ静かに悲しまれるとどうしたらいいのか分からなくなってくる。 そもそも、話がひたすらに噛み合わない時点で解決出来ない問題だったのだろう。]
(38) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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[彼はどんな風にあなたの部屋に来たのか どのように毎日を過ごしているのか 二人で何をしているのか 彼の様子は昔と比べてあなたにどう映るのか
白井の様子は俺に話し合いの必要性を理解させた。そして、怒りを忘れた俺は淡々と繰り返される質問にただ答え続けるしかなかった。 なんだか、医者に病状でも聞かれているみたいで気分はあまり良くなかったけど。 多分何処かで誰かに聞いてほしい部分が、あったのかもしれない。
透世が出てきて客人と対面したのなら、語れないものもそこにはあったけれど。廊下へ続くドアは固く閉ざされ開くことは無かった。]
(39) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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「分かった。話してくれて、ありがとう。 最後に聞きたいことがあるの。」
……なんだよ?
[だから随分と落ち着いたものだった。 その言葉にも何気なく答え、聞こうとしたのに。]
「椎谷君は何も気づかないの? 自分でおかしいと……思わないの?」
[そう言われた瞬間、心臓を鷲掴みにされたように衝撃が走った。]
(40) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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「9年前の今月、何があったのか覚えていないの?」
[目を見開いたまま固まっている。 何も答えないことが答えというように、白井の話は続いた。]
「私、椎谷君も辛いから刺激しないべきだって言った。 そういうのは時間を掛けて治さなきゃいけないって。 ずっと私が、そのことについて話すのを止めてたの。 でも駄目だよ……今の椎谷君見てられない。」
[勝手なことばかり言うな、放っておいてくれ。 そう言いたかったけど声が出ない。 逃げ出したくても足が動かない。 小さい頃はいつも助けてくれたあの人が、来てくれない。]
(41) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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「聞いて。入井さんはもう────」
[ やめろ ]
(42) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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「────死んでる。9年前に殺されちゃったの」
(43) 2020/11/21(Sat) 22時半頃
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[ ]
(44) 2020/11/21(Sat) 23時頃
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「遠く……学に行って、一人………してたんだよね」
[風鈴が煩くてよく聴こえない。]
「………出会……女の人と、……き合いを…………」
[まるで耳元から聴こえているみたいだった。]
「でも女……は、入……んの他にも……がいて」
[一体どれだけ強い風が吹いているというのか?]
「それが………良く……男の………たみたいで」
[これは本当に風鈴なのか?]
(45) 2020/11/21(Sat) 23時頃
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「……さん、監…されて……もその人に……」
[煩い。止まれ、お前も黙れ。]
「私、姉……と両親と……にお……に行って」
[これは風鈴ではない。思い出したくない。]
「そこで椎谷君……会った……だよ?」
[香る。香水ではないこの匂いは、これは。]
(46) 2020/11/21(Sat) 23時頃
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[
線香だ。
]
(47) 2020/11/21(Sat) 23時頃
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[口元を抑えて蹲る。堪え切れずに醜い音が響いた。]
(48) 2020/11/21(Sat) 23時頃
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帰ってくれ……帰れ!
[多分白井は心配した後に謝罪し、立ち去ったのだろうが それは俺にはもう聞こえなかった。]
(49) 2020/11/21(Sat) 23時頃
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[音色に混じり、水が滴る音が聴こえる。]
(50) 2020/11/21(Sat) 23時頃
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