14 冷たい校舎村10
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[ 少しの間その空間を楽しんで、 わたしは再びエレベーターに乗った。]
(0) 2021/11/13(Sat) 00時半頃
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── それから ──
[ まずは腹ごしらえである。 ほとんど間食といっていい時間に、 わたしは友だちが残した食事をとった。
栄養満点品数たくさんの食事。>>2:437 わたしの思う朝食の量を遥かに超えており、 結果的には朝昼兼用でよかったかもしれない。
作ってくれた人がもうここにいなくても、 手を合わせて元気に「いただきます!」をして、 最初に手を付けたのはヨーグルトだった。
好きなものは最初に食べる派──だけど、 友だちの作ったごはんはどれもおいしかった。
叶うならわたしだっておかわりがしたい。 自分の胃の容量を少し恨めしく思う。]
(1) 2021/11/13(Sat) 00時半頃
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[ まなちはどこまで付き合ってくれたか。 おなかがいっぱいになったら、 今度はわたしも文化祭準備をしようと思う。 遠くない未来、8時50分が訪れるのを知りながら。]
(2) 2021/11/13(Sat) 00時半頃
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[ それから──── * ]
(3) 2021/11/13(Sat) 00時半頃
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[ ──調理室に立っていた。
甘い香りに釣られた──わけではないけれど、 たどり着いた先に友だちの姿を見たなら、 「わたしもやるー」って何気なくそこに。>>4
調理台の平らな面に、 軽く握った卵をこつんとぶつける。
なんの装飾も施されていない卵から、 鮮やかな黄色がどろりとボウルに落ちていく。
きれいな丸を保った黄色を、 同じ手で潰して、混ぜて、混ぜて。]
(15) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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[ その様子を見ながら思うのは。
卵を割れば猫耳が出てくる。 それを知っていたとしても、 わたしはそれを割る気にはならなかっただろう。
ポケットの中身。 いつの間にか、声は聞こえなくなっていた。 生まれることなく死んじゃったみたいだ。 わたしはそう思い、自分の選択を少しだけ疑う。]
(16) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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[ おなかはそれほど減っていなかったけれど、 甘い香りに誘われるように、 何もつけないままのパンケーキを食べて。
文化祭の再現であるなら、 わたしは調理室と教室とを繋ぐ廊下を、 すいすいと往復するべきなのだろうけれど、
わたしたちの喫茶店は、 どこ≠ニもつかない浮遊感の先にあり、 ……結局、店員さんにお届けは叶ったんだっけな。
それが叶っても、叶わなくても、 またひとつあの日に近づいた文化祭。
片付けなんてすべて終わってからでいいじゃない。 わたしはそのとき、2階にいた。]
(17) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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[ 広々としたエレベーターに乗り込み、 わたしは迷わずに2のボタンを押した。
廊下に降り立ち、周囲を見回す。 あの日の光景がよく再現されている。 そっくりそのまま持ってきたみたいに。
行き先ははじめから決まっていたから、 わたしは迷うこともなくその教室にたどり着く。]
(18) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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[ ──プラネタリウム。 あの日はあんなに盛況だったのに、 今はぽつんと投影用の機械があるのみ。>>2:113
今なら夜空を独り占めできちゃうなあ。
そんなことを考えもしたし、 触ってみれば機械の動かし方もわかる気がした。
……どうしてそうしてしなかったんだろう。
明るいままの部屋に立ち尽くしていた。 ちょうどそのときだった。チャイムが鳴った。]
(19) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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[ なにか≠ェ壊れる音がした。]
(20) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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── 午後8時50分 ──
[ わたしのポケットの中から? あるいは、そこらじゅうから。 破裂するような音がはじまりだった。
ポケットの中を、足元を確認するより先に、 突然、世界から光が消えた。>>10
声も上げずにただ立ち尽くすわたしの視界に、 少しして、いつか見たような星空が広がる。]
(21) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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────わかにゃん?
[ わたしにその星空を見せてくれるのは、 ほかの誰でもない、君だって思っていたの。
そして、すぐに気がつく。 星空が覆うのはこの教室だけではない。 わたしのそば──たとえばその機械の近くに、 君の姿があるわけじゃないということも。]
(22) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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[ 改めて突きつけられたような気がした。 この世界が誰かのこころの中だということ。 その誰かはきっと、わたしたちに遺書を送った。 君自身の手で、すべてを終わらせてしまう覚悟で。]
(23) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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──和歌奈ちゃん?! ねえ、みんな?!
[ 気がつけば床を蹴って、 その教室を飛び出していた。
誰かいないかと周囲に目をこらしながら、 半ば闇雲に廊下を走り、声を上げる。
優しい誰かが準備したエレベーター。 わたしたちを等しくすべての階に運ぶもの。 それさえも今のわたしにはもどかしく、
きっと、誰かにばったりと出会うまで、 わたしはそうして誰か≠探していただろう。**]
(24) 2021/11/13(Sat) 01時半頃
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── 回想・日中 ──
あは、ハグで落ち着かせてくれる? 小さい子をなだめるみたいに。 そっちのほうがあったかくて、いいねー
[ クールな言葉がちょっぴり独特で、 とびきりお茶目なわたしの友だち。
彼女よりもずいぶん大きなわたしは、 そんな彼女のWIN-WINらしい提案に、 少し甘えた口ぶりで言ってくつくつ笑った。>>26]
(39) 2021/11/13(Sat) 11時頃
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心配しないで。 わたし、強いから。
頑張っているつもりもなければ、 疲れて打ちひしがれることもない。
──って、自信満々に思ってたんだけどー わたしにはまなちのハグが必要だったみたい。
[ だから、手始めにひとついいかな? しゃがんで、彼女より小さくなって、 腕だけは大きく広げて、ほらハグは? なんて。
視線の高さの差が埋まって、君との距離が近くなる。 きれいな黒色の瞳がいつもよりよく見えた。 それは思った以上にあたたかな色をしていた。]
(40) 2021/11/13(Sat) 11時頃
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……駆けつけるための脚がなくたって、、 まなちはいつだってわたしのこころにいるよ。 そのぶん、君は言葉を尽くしてくれるじゃない。
[ これだけ近ければ大きな声を出す必要もない。 囁くような声音で言って、頬を緩めたわたし。]
これからも思っていてよ。 それで、わたしを抱きしめにきて。
わたし、平らな地面が好きなの。 そのほうがうんと自由に駆け回れるから。
(41) 2021/11/13(Sat) 11時頃
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[ 探し出される前にわたしのほうから、 君の胸に飛び込んでしまうかもしれないけど!
冗談みたいな口調で言ったけれど、 それらは全部本当のところ。わたしのこころ。
よいしょと立ち上がって、 わたしはスカートの裾をそっと直す。]
(42) 2021/11/13(Sat) 11時頃
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んー、いいんじゃないかなー もういっそにんげんかい≠ナ。 星空は誰が見たってきれいだよ。
[ 解説はわかにゃんに頼もうね。 できればみんな揃ってがいいから、 楽観的な話をするのであれば、元の世界で。
エレベーターに現れたふしぎなボタン。 それを押し込みながら語った。 まだあるともないとも言えない未来の話。]
(43) 2021/11/13(Sat) 11時頃
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[ またあとでね。
チャイムが鳴るたびに状況は移ろう。 また会えるという確証もないこの世界で、 わたしはにっこり笑って手を振った。>>32
日が沈んでいくことも、星が瞬くことも、 雪と雲に阻まれて見えづらい窓の外。 それでもやっぱり夜は訪れる。*]
(44) 2021/11/13(Sat) 11時頃
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── 現在 ──
[ 心臓が早鐘を打つ。
ありきたりな慣用句がよぎるほどに、 わたしは動揺しているらしかった。
誰もいないの? エレベーターを呼ぶボタンをしきりに押す。
みんな、わたしを置いてっちゃったの? そんな思考がほんの一瞬だけよぎって、 すぐさま思う。違う。ここはわたしの世界じゃない。
わたしの世界に、きっと星は瞬かない。 そして、そのことから思い浮かべるのは、 やっぱりたった一人、君の顔なの。和歌奈ちゃん。]
(45) 2021/11/13(Sat) 12時半頃
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[ 永遠にその扉が開かないかと思った。 その優しい機械が故障してしまったのかと。
きっと実際にはほんの短い時間だったんだろう。 エレベーターが到着する音が廊下に響き、 ゆっくりとその扉が開かれていく。
待ちきれないというふうに飛び込もうとして、 わたしは視界いっぱいにその光景を見た。
そこにすでに乗り込んでいる人があっても、 わたしの視線はまずそこに吸い寄せられる。]
(46) 2021/11/13(Sat) 12時半頃
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[ 到着した箱の中、球体を抱える人形がある。 バスケットボールだ、と思う間もなく、 わたしの脳はそれを誰だか認識した。
わたしよりも小さな体を持つ君。 ね、気性の荒い猫とでも出会ったの? それにつけられた引っ搔き傷を見て思う。
尋ねても答えは返ってこないだろうし、 もしも君に意識があったとして、 答えるより先に笑われちゃった気もする。]
(47) 2021/11/13(Sat) 12時半頃
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ゆっ……雄火。 驚かせないでよ、もー……
[ 驚きに顔を引きつらせたわたしは、 それが誰かを理解して大きく息を吐いた。]
(48) 2021/11/13(Sat) 12時半頃
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……君もどこかに行こうとしてたの? たどり着けたのかなあ、そこに。
[ やっぱり当たり前みたいに声をかけながら、 わたしはその箱に乗り込んだ。
そこに同乗者はあったか、 あるいは途中で乗り込む人はいたのか。
ひどく驚いて、逆に少し落ち着いたわたしは、 行き先ボタンを眺め、そのうちのひとつに指を伸ばす。]
(49) 2021/11/13(Sat) 12時半頃
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[ 飛んでいける わたしたち、翼も持っていないのに?
星々に囲まれた校舎の中で、 誰かさんが残そうとした言葉を思い出して。
孵らなかった無数の卵たち。 あるいは目には見えないだけで、 なにかが飛び立っていくところなのだろうか。
ポケットの中、薄く尖った感触を確かめながら、 わたしを屋上へと導くボタンを押し込んだ。]
(50) 2021/11/13(Sat) 12時半頃
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[ その扉が再び開くとき、 わたしが目にするのはきっと、 先客二人分の背中だ。>>38*]
(51) 2021/11/13(Sat) 12時半頃
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── 現在 ──
[ そこに、驚きがもう一つ。
当たり前のように声をかけてくる猫に、>>62 わたしは当然、ひどく驚くことになる。]
──っ、は、はるみちい?
…………あのさー、 人気のない校舎で突然遭遇する着ぐるみには、 100人いたら99人は腰を抜かすと思うよ。
[ わたしが情けない声をあげるだけで済む、 気丈な女の子で本当によかったね! 人形より先にわたしを運ばせるところだった。]
(64) 2021/11/13(Sat) 16時半頃
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[ どう考えてもさておけない事実に、>>62 わたしの緊張も少しとけたらしい。 気の抜けた笑い交じりの声で言って、 わたしはそのエレベーターに乗り込む。
屋上とハルミチーは言い、>>62 わたしはそれに迷いなくうなずいた。
その箱が上昇しきるまでのわずかな間、 ただ待つことももどかしく、 わたしはぽつりぽつりと言葉をこぼす。]
(65) 2021/11/13(Sat) 16時半頃
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……広いねえ。 大きな猫ちゃんと大きめのわたしと、 バスケ少年が一緒に乗り込んでても。 この世界を作った人は、みんなに優しい。
[ 着ぐるみ姿のままらしいから、 君の目を見て──とはいえないけれど。
高い位置にある着ぐるみの大きな頭。 それを見上げて、わたしも言った。]
(66) 2021/11/13(Sat) 16時半頃
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春満、知ってた? あのプラネタリウム、 和歌奈ちゃんが作ってくれたの。 天文部、もともとやる予定じゃなかったの。
[ だから、この世界は──というほど、 意外性はない結論だ。この星空を見てしまえば。
言い終わるのとほぼ同時みたいに、 エレベーターが目的の場所で扉を開く。
彼女たちはまだ扉の前にいただろうか。 ゆっくり開く扉の先になにがあるのか。
なにかを祈るような気持ちで、 わたしの鼓動は今もひどく速い。*]
(67) 2021/11/13(Sat) 16時半頃
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[ パンケーキをきれいな円にする方法。 知ってる? 一点めがけて生地を流して、 お玉の底でそっとゆすってやるのだ。 ……型を使うときは必要ないんだけどね!
わたしは文化祭準備に学んだことを、 得意げに君に語ったりもした。
どうせ全部混ぜちゃうんだからと、 大雑把なわたしは笑うだけだった。>>71 わかにゃんのへたっぴ。そんなふうに。 言ってくれたら、それも教えたのに。]
(95) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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[ 猫の顔が描かれたパンケーキ。 誰もいない廊下は非常に駆けやすかった。 人にぶつかる心配も、先生に捕まる心配もない。
まるで文化祭ごっこ。 もうずいぶんピースの欠けてしまった世界で。 ほんの少し前の出来事がずいぶん遠くに感じる。]
(96) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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[ そして今、あの戯れのような時間を、 ほんの少しだけ後悔しはじめている。
……文化祭の準備が整えば、 終わりはあっという間にやってくる。 そんなことをふいに想像して。]
(97) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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[ だって、ほら。>>81 大きな猫ちゃんまで揃ってしまった。]
……もみくちゃだったねえ。 でも、ずいぶん好評だったよー 他クラスの委員長が歯ぎしりしてた。
[ 何気ない会話を重ねれば、 少しだけ落ち着いていられる気がして。 猫とバスケ少年とわたし。まだ上昇する箱の中。]
(98) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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[ 当日、女の子に抱き着かれていたなって、 わたしは思い出したりもしていた。
家族ぐるみで文化祭を見に来るなんて、 なんてほほえましいんだろうって思ったのだ。
ずいぶん年の離れた友だちの妹。 ふつうの、善良そうな一家。 たとえ目鼻立ちがそれほど似ていなくても、 彼らは世話焼きな友だちに容易く結びつき──、
ああ、どうしたって思考が引き寄せられる。]
(99) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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……ハルミチーはさ、 言葉ばっかりつっけどんで、 でも、他人に甘くて優しいよねえ。
きっと、だから呼ばれたんだよ。 引き寄せられた≠ニいうより。 ……春満が春満だったから。 ここに、必要だったんじゃないかなあ。
[ 少なくともわたしはそう思うよ。 律儀に着ぐるみで現れた君だから。
わかにゃんらしい。>>84 その言葉にわたしはしっかりと頷き、 ……ああ、扉が開いていく。 強張りそうになる肩に、ぽんと手が置かれた。>>85]
(100) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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……うん。会いに行こう。 終わりなんて、いやだよ。 *
(101) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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[ 扉のその先に、満点の星空を想像した。 裏腹に、広がるのはひたすらに深い闇だ。>>74]
(102) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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── 現在 ──
──和歌奈ちゃん!
[ わたし、飛び出すように、 開け放たれた扉の方へと地面を蹴った。
探していた人が背中を向けて立っている。 かすかにため息が聞こえた。 ただ事実を述べるような声も。>>79
別に走ってきたわけじゃないのに、 鼓動が速くて、息が苦しいのだ。 やっとのことで名前を呼んだくらいに。
こころが痛いのだ。 その背が近づかないでと言うようで。]
(103) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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[ 屋上に君は立つ君に、 まなちが語りかけるのを見ていた。>>94
穏やかな空気がまるで物語の終わりみたいで、 わたし、耐えられずに声を張り上げてしまう。]
ここが壊れちゃうなら、 その前に一緒にかえろうよ! かえれるはずなの! 今からでも!
[ 50%を切ったって大丈夫。 いつかそんなふうに笑ったくせ、 多くの場合≠ノさえ確証を持てず、 わたしの声はひどく切羽詰まっている。*]
(104) 2021/11/13(Sat) 21時半頃
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[ 風が吹いている。>>74 簡単に煽られた髪があちこちに振れて、 その一部が頬に張り付いていた。
これで最後にするのだと君は言う。 背後からも声が聞こえて、>>110 わたしはまだその背中を見ていた。
なにか叫び返しそうになる自分を、 辛うじて押しとどめているような気持ちで。]
(133) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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[ それは一瞬の出来事に思えた。 不意にまなちが動いた。>>121
和歌奈ちゃんのところへ行くのかと思えば、 彼女がまっすぐに向かったのは屋上の端だ。
ひゅっと息を呑む音が聞こえた。 ほかならぬわたしの喉から。
とっさに駆けだそうとしたわたしの脚は、 和歌奈ちゃんの動きを見て、はたと止まる。>>132 それから再び動く。二人の方へと。]
(134) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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──取り返せなくたって、だからって。
過去は変えられないよ。 でも、それで終わりにしちゃったら、
和歌奈ちゃんの最後は、 嫌になっちゃった自分のままなんだよ。
そんなふうに言うほど、 君がなにをしたっていうの。
[ 一歩一歩を踏みしめながら、 風に負けじとわたしは声を張り上げる。 同じ屋上に立っているはずなのに、 君の背中が果てしなく遠くに思える。 その距離を一歩ずつ詰めていく。]
(135) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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[ 知ってる。 これがどんなに勝手で残酷な行為か。
終わりにしたいというのは、 君の明確な意思であるはずだった。
そうなんだねえと物分かりよく頷けば、 それは君にとって良い結末だったんだろうか。
文化祭をもう一度。 みんなと一緒に少しの間過ごして。
そんな考えが過ぎらなかったわけではなくて、 それでもわたし、言わずにはいられなかった。]
(136) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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──それに、 わたしは和歌奈ちゃんが好き。
たとえ、君自身が自分を嫌っても、 わたしは、わたしの目に映る君が好きだよ。
わたしの好きな人を勝手に殺さないで。
(137) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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[ 触れられるくらいの距離まで近づいて、 わたしはその腕に手を伸ばした。
いつか──遠い過去に思える最近。 教室まで駆けだそうと掴んだときと、 今と、どちらのほうが強引だっただろう。
少なくともわたしは明確に、 君の腕を捕まえる意思を持ってそうした。
わたしの友だちを救おうと手を伸ばす、 これまたわたしの友だちである君に。]
(138) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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ねえ、ここにあるのは、 この世界にも、元の世界にも、存在するのは、 君が壊しちゃったものだけじゃないでしょう。
……プラネタリウム。 あの教室があの姿じゃなければ、 わたし、その時点できっと確信してた。 この世界はわたしのものじゃないって。
それだけの意味があるの。わたしにとっては。 それを作ったのは和歌奈ちゃん、君なんだよ。
(139) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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君が自分のこと、嫌じゃなくなるまで。 何度だって、どこまでだって付き合う。
なにされたっていい。 なんだってするって言ったよね。
だから死なないで。 わたしのこころを壊さないで。
(140) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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[ じとりと手のひらが汗ばんでいた。 わたしの意思に関係なく指先が震えた。 それでも言葉を紡ぐ。できうる限りに冷静と。
理解しているつもりだ。 これがどれだけ身勝手な言葉か。 わかっていてそれを振りかざすくらいに、 わたしは、君に生きていてほしい。だから。]
和歌奈ちゃん。 わたしを……わたしたちを見て。
[ もう一度と名前を呼び、 わたしはただひたすらに君を見ていた。**]
(141) 2021/11/14(Sun) 01時半頃
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……春満の言う通りだよ。 わたしをこの世界に呼んだのも、 わたしに手を貸したのも和歌奈ちゃん。
今、この状況を招いたのも、そう。
[ わたしは春満ほど物分かりがよくないけれど。
大きな猫が歩み寄ってきて、>>160 入れ替わりにまなちはここから去っていった。
いろいろと──先ほどの飛び降り未遂だとか、 言いたいことはあるんだけれど、一旦さておき。
わたしは目の前の君を逃がすわけにはいくまいと、 君から課された課題に応えるのに忙しい。>>174]
(182) 2021/11/14(Sun) 21時半頃
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違わない。 わたしがうれしかったから、 わたしはそれを優しさって呼ぶ。 たとえ、君とってはエゴでも。
[ ようやく顔をあげた君に、>>174 わたしは断定的な口調で言う。]
この答えが気に食わないなら、 何度だって解答を持ってくるから。 だから、ちゃんと採点して。和歌奈ちゃんの手で。
[ 君の選択なら受け入れる≠ニは言えず、 わたしは食い下がった。ここで終わらせないために。]
(183) 2021/11/14(Sun) 21時半頃
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[ いつしか君は泣いていて、>>180 わたしは少しだけ手のひらから力を抜いた。
訥々と語られるのは、 どこか不器用にも思える優しい言葉で、 わたしはようやく少しだけ頬を緩ませる。]
……今の和歌奈ちゃんも、わたし好きだよ。
[ 叶うことならその肩を抱き寄せようと、 もう片方の手も君に向けて伸ばした。]
(184) 2021/11/14(Sun) 21時半頃
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うっかりしてて、泣きべそかいてて、 手を貸してって言ってくれるところ。
先にかえったみんなも、 きっと同じ気持ちになると思うなあ。
[ その背中をさすってあげたいの。 これはエゴかしら。優しさかしら。 どっちだっていいとわたしは思って、 気の向くままに動き、言葉を紡ぐ。]
(185) 2021/11/14(Sun) 22時頃
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……だから、大丈夫。 やり直す方法も、みんなに伝える方法も。 一緒に探すから。教えてあげるから。 和歌奈ちゃんが自分を好きになれるまで。
(186) 2021/11/14(Sun) 22時頃
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……だから、 一緒にかえるんだよ、和歌奈ちゃん。 それから、君のことをもっと教えて?
[ 意図的に強引な言い方を選び、 裏腹に、目を細めて小さく微笑んだ。*]
(187) 2021/11/14(Sun) 22時頃
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[ あら。ハルミチくん。 女の子の涙は苦手ですか? 助けを求めるような視線を受けつつも、>>193 わたしは和歌奈ちゃんの方に手を伸ばしたのだ。
彼は言う。彼女の気持ちがいくらかわかると。 それから、実体験に基づく話も。>>195]
(199) 2021/11/14(Sun) 23時半頃
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……言われてみれば、確かにー わたしだってそうだよ。お兄もお姉も。 なんやかんやあったけど今じゃ仲良し。
わかにゃん、大丈夫だよ。 ハルミチー、頼りになるぅ。
[ そんなところまで頭が回らなかった。 わたしは素直に感心しながら、 ふと、さっきより自然に話せている自分に気づく。]
(200) 2021/11/14(Sun) 23時半頃
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それじゃあ、 わたしたちが押し入っちゃったのかもね。 君の危機をびびびっと察知して。 ……そういうことにしてもいいよー
[ だから、いつも通りに近づいた口調で、 不思議そうに言う君に悪戯っぽく笑う。>>188
わたしたちのこころ。 中になにが入っているかもわからない。 答え合わせのしようもないなにか。
わたしはここで、その断片に触れたのだろうか。 本来覗くことのできない君のこころの中を。]
(201) 2021/11/14(Sun) 23時半頃
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[ ……そうだとしたら、 わたしはやっぱり君が好きだよ。 君が作った不器用な優しさの詰まった世界が。]
(202) 2021/11/15(Mon) 00時頃
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[ その体を抱きしめて体温を分かち合い、 待ち望んだ言葉を君の口から聞きながら、>>191 わたしはそんなことを考えたりもした。]
……うん。 進捗どうですかー……じゃなくて、 今度は一緒に、ちょっとずつ進めよう。
まずはみんなにー、 ただいまと大好きを言うために。 かえろう、和歌奈ちゃん。
[ わたしは抱きしめていた腕をほどき、 代わりに、促すように腕を引っ張った。 もう片方でハルミチーを……嫌がられなければ。]
(203) 2021/11/15(Mon) 00時頃
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まなちも迎えに行かなきゃね。 まったく、マイペース娘め。
和歌奈ちゃん、ホストの不思議な力で、 びびびっと居場所がわかったりするの?
[ そうでなければ、心当たりはあるかもしれない。 きっと時間はもうあまり残されていないから、 ──ほら! って、わたしはまたその腕を引いた。*]
(204) 2021/11/15(Mon) 00時頃
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[ ホストの不思議な力の有無に関わらず、 この世界の終わりに急かされようが、 きっとわたしはその場所に向かった。
2回目だからね。こらー! とも言うだろう。 狼を呼んでねと言ったのに、 結局一度だってそうしてくれなかった友だち。
それについて言いたいことも、 あれもこれもそれも、山積みだけれど、 今はとにかく、かえるんだよって。 わたしは強引と言われようが彼女を抱え──、 いえ、大きな猫ちゃんがお願いされてくれる?
とにかく、言えるのはこれだけだ。 一緒に、みんなのいる世界へかえろう。*]
(205) 2021/11/15(Mon) 00時頃
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