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ーー自宅/応接間ーー
避けようがない死が迫っていなかったら、実に楽しい会話になったはずだ。
カッコいいなんて褒められなれていないから、大袈裟に照れただろうし、川下りについても身振り手振りを交えて説明したはずだ。
なんなら自室からアルバムを引っ張り出してきて、もっと沢山の写真を彼に見せたかもしれない。
しかし、今の僕にはそうは出来なかった。 曖昧な笑みを浮かべ、結構流れは速かった、という事だけは答えたが。
差し迫る死の恐怖に怯えれば怯えるほど彼は暖かく。 それがただの友情だなんて思えなくて、僕は涙した。
渡されたティッシュすら特別なもののように思える。
彼は僕を心配してくれている。 ーー僕を、愛しているから。
こんなにもみすぼらしい存在の僕を、闇にすらなれないただ踏まれるだけの影のような僕を。
(54) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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光そのものと言える彼が包み込んでくれる。
ーーだから僕は全てを晒した。 弱い部分も、恥ずかしい気持ちも全てを。
みんなが勇敢に闘い死んでいったのにに対して、僕はピイピイと雛みたいに泣いて、ただ弱音を吐いた。
彼はきっと、僕の死が確定したのを知ればショックを受けるだろう。悲しみに暮れるはずだ。
それが愛と言うものだから。
もしも死が避けられず、僕が彼を置いて先に亡くなろうとも。 僕という存在を愛し、それに胸を傷めてくれる人がいたなら。
ーー僕はきっと救われ る はず
「ーー……」
(55) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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その表情はなんと表現したらいいんだろう。僕は彼が顔を歪め僕のために泣いてくれると思っていた。
思っていたのに、彼は。
ーー嗤った。
嘲るとかではない。愉しいとかでもないだろう。 強いて言えばアルカイックスマイル。彼の見目麗しさを際立たせるような笑みに僕は戸惑う。
「コ、……ウ?」
彼はそんな僕を置いてきぼりにするように、言葉を重ねた。
僕を助けたいと。なんでもする、と。
それは勿論嬉しい言葉ではある。だけどーーこの胸騒ぎと違和感はなんだ?
さわ、と首筋に寒気が走る。 僅かに粟立つ肌。
(56) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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一緒に何処までも逃げるのは、とてもロマンチックだ。 二人で手を繋いで、行き先のわからない電車に乗って。
僕らを誰もが知らない土地へ。 二人きりになれる場所へ。
だけどーーその幸せな時間は永遠には続かない。 いや、むしろ死刑の瞬間までの猶予に近いのではないか。
そんなこと、聡明な彼がわからぬはずがない。 だったら何故言う?
(57) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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彼の物言いはまるで。
"君が死ぬ瞬間まで望みを叶えるよ"と言っているようで。
「違、う……」
声が掠れる。彼は驚くかもしれない。だって、両手を広げるような慈愛に満ちた態度で僕の願いを聞き入れようとしていたのだから。
「君の、気持ちは嬉しい……けど。でもそれは、その献身は、さ。」
何のため?
ーー死に逝く僕へのせめてもの手向け?
それともーー嗚呼、そうだ、彼の性格を考えたなら、答えなんか1つじゃないか!
地球やみんなを護る。 その為に。
(58) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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死にたくない、は叶えられなくとも。 闘いたくない、は叶えられる。
組合わさったパズルの答えは?
「……コウ。闘いたくないって僕の願いを、君は。」
ごくり、と唾を飲む。愛する彼が、恋人である彼がこんなにも傍にいるのに。僕らは身を寄せているのに。
どうして冷や汗が止まらないんだ?
「それを僕が願ったら、どうやって叶えるつもりなんだ……?」
聞いてしまえば、後戻りは出来ないかもしれない。 しかし僕は迂闊に足を踏み入れる。底無し沼のような問答の先に救いがあると思えないのにーーそれでも。*
(59) 2023/11/10(Fri) 22時半頃
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─乾恵一の家 応接間─
[乾恵一がどれ程みっともなく泣き喚こう>>54>>55と、康生は彼を軽蔑したりはしないだろう。軽蔑なんてするわけないと、彼がどんな人間でも味方だとはっきり宣言したのだから。この子は約束を違えない。慈愛の様な何かを湛えた表情を、彼へと向けていた。彼が、否定の言葉を絞り出すまでは。]
───違う?
[不思議そうな声を出しながら、僅かに首を傾げ、康生は彼の言葉を待った。彼の希望を汲み取る為に。きょとんとした表情は、無垢な幼子と変わらない。瞳に映る彼の顔は、私が抱いたのと同種の恐怖を形作っていた。]
献身ってほどじゃねーけど……。 んー……や。やっぱ献身…になんのかな、これって。
[私に語り掛けた訳でもない、珍しく本当の意味での“独り言”を呟いた後、康生は彼の疑問に答えた。]
……もしケイが本気で願うなら、の話だけどさ。
(60) 2023/11/11(Sat) 00時頃
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俺は、ケイを殺すよ。闘ったりなんてしなくていいように。 そんで、ちゃんと代わりのパイロット候補見つけて来る。 世界のこと、ケイがなんも心配しなくて済むようにさ。
[康生は再び微笑みを浮かべたが、先程までとは少々意味合いの異なるものだった。苦痛を堪えて無理に微笑む様な、泣くのを我慢している様な表情をしている。]
献身だとは、思ってなかった…んだけどな。 俺は、俺がキツくても、ケイの願い叶えたいなって。 これって、献身になんのか? ……ま、キツいっつっても“俺にできること”ではあるし。
[加賀先生の前で泣いていた康生を思い出す。自分と同じパイロットという宿命に誰かを引き摺り込む時、この子は同じ様に心を痛めて泣くのだろう。親友を手に掛ける時が来れば、それ以上に心を痛めるのかも知れない。]
(61) 2023/11/11(Sat) 00時頃
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けど、無理にはしないよ。 ケイは、「死にたくない」とも言ってたしさ。
……人はいつか必ず死ぬし、俺は神様じゃないから そっちの願いは、どうしたって叶えてやれねーけど。 今、ケイがパイロットになっちまってるって事実も多分、変える事はできないだろうけど。 どうしたってできねーこと以外は言ってくれたらするから。
[口にした以上、康生は必ずそれを成そうとするだろう。約束を違えない子だから。康生にとって“できること”であるから。親友の為に、世界の為に、為すべきと判断した事をする気なのだ。]
[ただ、それが乾恵一の救いになるとは、私にはどうしても思えなかった。**]
(62) 2023/11/11(Sat) 00時頃
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ーー自宅/応接間ーー
殉教者、という言葉がある。 キリスト教の聖人などによく用いられる称号だが、自らの信仰のために命を失ったとみなされる者のことを差している。
信仰と信念は外にあるものを信じるか自らの内にあるものを信じるか、そういう差であると言えるが、共通しているのはその考え方以外を排除している、という点だ。意図的でも、そうでなくとも。
要するにそこに迷いは存在しないのだ。 しかしーー
人とは本来複数の考えを持つものである。迷い葛藤し揺れ動くのが人だ。
何か1つの考えを貫く姿の方は、まるで真っ直ぐに伸びる竹のようであり”強い自我がある”様に映るし、実際に実行するのなら”強い人格”ではあるがーー
それは”人”であろうか。
神と神の子イエスの差は、人であるイエスが迷い悩み苦しむ事だ。
神は真っ直ぐに美しくしなやかでありながらーー残酷な行いを平気でする。
(63) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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信じるものに殉ずるとは、そういう違いだ。
僕はキリスト教なんか詳しくない。両親も平凡な日本人で、お正月に神社にお参りに行けばお賽銭を入れて祈ったりはするが、葬儀はお寺で行うし。
神様なんているんだかいないんだかわからないし、世の中で起こる戦争なんかを見ていると、 いないんじゃないかなと思う程度。
恋人が嗤った。
それだけでは何か可笑しいの予感でしかなかったけど。 身体はダイレクトに悪寒を感じて、僕は彼から少し身を引いた。
いつも僕から彼に触れ、ビニール手袋をしてまで手を繋いだり、触れない口づけを望みまでしたのに、だ。
僕が死ぬと告げたのに。 僕はもうすぐ死んでしまうのに。
(64) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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彼はーー。
“献身”という僕が使った言葉に彼は違和感を感じたようで。 勿論それは僕の主観に基づく印象でしかないけれど。
“献身”でないなら……?
そして僕は聞いてしまう。 その先を、見てしまう。
彼という人間が、どういう人間なのかをまざまざとーー。
「……僕を、殺、す?」
淡々と語られた彼の思惑は、事実や状況から判断しての最適なんだろう。自分の出来る範疇で、相手の望みを叶え目的を達成する道筋。
迷いなく、淀みなく紡がれた。
表情こそ僕を殺すとか僕が死ぬ事への苦しみや悲しみが現れているけど、至極合理的なその結論に僕は。
(65) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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心底、震える。
冷ややか何かが、撫でるのではなくまとわりついた。 僕の頬に。
「何、言ってんだよ……何を言ってる?
自分の言ってる事の意味、わかってんのか?」
動揺と混乱は、少しずつ僕をまた激昂へと導く。彼は一度も僕みたいに声を荒げたりはしないのに。
だけどーーこんなの、こんなのってあるか?
なんで僕は恋人からさらりと「君を役割から解放するためなら殺せるよ」なんて言われてる?
僕が次のパイロットを心配する? そんなの、知ったことか!
僕は騙されて契約させられたんだ。こんなゲームを仕掛けた側が黒幕であり、契約させた少年らに罪や咎はなくとも、僕に地球のために死ぬ意思などなかったんだ。
(66) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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そんな僕が何故補充パイロットの心配をしなくちゃならない?
まるで機械と話しているようだ。規定数が勝利しなくちゃ地球は救われず、そこには僕の家族も含まれるのだから、結論から辿れば全うだとしても。
そんな先回りをして欲しいんじゃない! 嬉しくなんかない……!
「僕だって、君がもし助からない病で苦しくて痛くて仕方ないなんて状況ならば、君をーー君を楽にすることを考えるよ。
だけど、僕は君を愛してる。愛してるからきっとーー君の命を奪うギリギリ、凄く悩んで”出来ない”かもしれない。
いや、出来ない。きっと出来ない。
理屈じゃないから。君が死ぬのが、何より嫌だからだッ」
どちらが正解でもない。しかし、彼の行為や選択にちらつく”博愛”や”使命感”が僕を苛つかせる。
握った拳でソファーを叩く。 そんな行為は無意味でも、何度も。
(67) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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「いずれ死ぬからなんだ!だったら死にたくないと叫ぶ僕は馬鹿か? 避けられない事にだだをこねる子供か?
君はーー君は、さ。」
彼がぐにゃりと歪んだように見えた。
僕が泣いているからじゃない。彼が何か変化したわけでもない。
彼はずっと、こういう人間だ。
親友であった時も。 海辺で愛を交わし誓った時も。
変わらない、変わっていない。
そういう意味では彼は何も悪くないし、僕はある意味そんな彼を本質を知っていたのに。
それはある種の”愛”ではあるし、彼が僕を嫌いなわけでも、大切にしていないわけでもないのに。
(68) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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ーー大丈夫、ごっこだから。
(69) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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僕は教会でそう言った。 嘘でもいいから結婚式を挙げたかった。 彼との幸せな一時が欲しかった。
崩れていく。
積み上げられた砂は乾いていてさらさらしているから。 ほんの少しの風にも耐えられない。
「……僕は。
僕の望みを人形みたいに頷いて叶えて欲しかったわけじゃ、ない……。」
過去形なのは、今だけを指しているわけではないからだ。
ずっと、ずっと。
それが彼の最大限の思いやり優しさであっても。
(70) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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「君はッ!」
あのブナの木の下で。 彼に感情を僕はぶつけた。
フラッシュバックする光景。
お願いだよ、もう。 僕をこんな風にしないでよ。 惨めにしないでよ。
認めたくないんだ。 自分がーー。
彼の両肩を掴むと、ソファーに押し倒す。スプリングの軋みが耳障りに響く。
頚をはねられるぐらいなら自分で頸動脈を切ってしまえ?
違うよ。 もうとっくに僕は。
(71) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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「愛してないだろ、僕のこと。」*
(72) 2023/11/11(Sat) 11時頃
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─乾恵一の家 応接間─
[康生私の息子、つまり紛れもなく人の子だ。人並みに迷いも悩みもする。けれど、乾恵一の目に、そうとは映ってないだろう。その点に於いて、私は彼を責める気になれない。理由は二つ。悩む時間が非常に短いからというのと、悩んでいる過程が外から見えないからだ。]
[キューブラー=ロスモデルというものがある。避け得ぬ死を宣告された時、人は否認→怒り→取引→抑うつという四段階を越え、やがて五段階目の受容へと至るといった内容だ。乾恵一は恐らく“取引”──どうにかして死なずに済む方法を探ったり、何かに縋ろうとしている様な段階の筈だ。]
[半面、康生は幼少期から宣告されていたも同然だったから、最初から“受容”の段階に居た。私の件もあり、理不尽な死が突然襲い掛かって来る事をこの子はよく知っている。モデルは逆行しない。今更怒り抗うなんて、康生には出来ないのだ。]
[それに加え、康生は頭の回転が速い。親の欲目もあるかも知れないが、常に二手三手先を考えている。今、乾恵一が悩み苦しんでいる内容はとっくに考え終えた後で、康生の中では何かしら折り合いが付いているのだろう。]
(73) 2023/11/11(Sat) 16時頃
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[折り合いが付くまでの過程も、外からは見えなかった筈だ。悩んだ時、康生が頼り相談する相手は“私”なのだから。傍目には、一人で結論を出している様にしか見えないだろう。実際、その認識は合っている。私は、康生からの相談に対して何かしらの返答が出来る訳ではないのだから。ただ、だからと言って、この子が悩みを持たない訳ではないのだ。]
[二人の認識は、今や完全に擦れ違った。]
[彼は康生から身を引き>>64、康生はその様子に戸惑いの表情を浮かべた。彼の様子がおかしい事には、気付いたのだろう。]
ああ。意味はちゃんとわかってる。 ケイに、すげえ酷いこと言ってんなって自覚もあるし。
(74) 2023/11/11(Sat) 16時半頃
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…………、……。
[彼の言葉に、今度は康生が表情を凍らせる番だった。彼が「できない」と言ったからではない。康生への愛を告げたからでもない。それらはまだ想定出来た。彼の持ち出した喩えが、致命的に悪かったからだ。康生の右手が胸元へと置かれる。]
……ケイは、そういう風に考えるんだな。 ・・・・・・ 楽になりたいなんて、俺は一度も望まなかったのに。
[呟きは静かなもので、内に居る私にこそ届いたが、ともすれば彼がソファーを殴打する音>>67に紛れそうな程だった。]
[「助からない病で苦しくて痛くて仕方ないなんて状況」は、康生の嘗ての日常だ。そして一度だって、康生は「闘いたくない」等の弱音を吐かなかった。闘病から逃げるというのは、死ぬ事と同義だ。彼の語った内容は「君が望まなくても、僕は君の苦しむ所を見たくないから殺す事を考えるよ。実行は出来ないけど」と言っているのと変わらない。康生は果たして、何を想ったのだろうか。]
(75) 2023/11/11(Sat) 16時半頃
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───、……。
[私にもわからない。康生は───それこそ人形の様に無抵抗で、激昂する彼に押し倒されてしまった>>71からだ。ソファーは軋みつつも康生の身体を受け止めたから、以前とは異なり、顔を歪める事も無かった。浮かべている表情は、悲しみか傷心か諦念か……火の消えた様なそれであるのだけは確かだった。何処か空虚な視線が、相手を見上げる。]
愛してるよ。 でもきっと、ケイが……恵一が望んでる愛じゃ、ない。
[左手はとっくに彼から離れていたが、押し倒されて尚、右手は自らの胸元に当てられたままだった。*]
(76) 2023/11/11(Sat) 16時半頃
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ーー回想ーー
小さな頃から兄の後ろに隠れ、その背を追い掛けて生きてきた。
兄は僕の友達であり、保護者でり、理想であり、全てだった。
兄の言うことはみんな正しいから考えなくて済んだし、兄がいてくれたら同学年の友達なんかいらなかった。
他人は怖い。 僕が何か気に入らない事を言えば変な顔をする。 何を考えているかわからない。 いつ嫌われるかわからない。
そんな不確かな関係を築くぐらいなら、兄と二人でいた方がずっといい。
兄はいつも大きくて温かな手で僕を撫でてくれるのだから。
『恵一はボールを投げるのがとても上手いな。 野球をやったら活躍出来るかもしれない。』
(77) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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キャッチボールをしていた兄が、ある日そう言った。
野球ってみんなでやるんだよね?……ちょっと怖い。
だけど僕は中学で野球部に入部した。褒められたように出来るのか、試してみたいと思ったから。
僕はピッチャーの才能を見い出だされた。 肩が強く、スピードの乗った球を投げられる僕は将来有望だと。
『頑張ったら甲子園だって目指せるかもしれないぞ。』
監督の言葉に目を輝かせ、僕はがむしゃらに練習に励んだ。 ただひたすら鍛練に明け暮れ、やがてチームメイトたちとも仲良く出来るようになった。
コミュ障だった僕に出来た初めての友達。
ピッチャーを務めエースと呼ばれて期待されている三年間、僕は兄から離れていても寂しさを感じなかった。
でもーー
(78) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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悲劇は突然訪れる。練習中に僕は急に倒れた。マウンドの真ん中で、握っていたボールを落として。
意識が回復した時は病院でーー 僕は、肩に致命的な爆弾を抱えてしまったことを聞かされる。
投げられないわけじゃない。 だが、もう速い球は無理。 勿論ピッチャーは……。
他のポジションになり、打撃に力を入れる選択肢もあった。 しかし、僕は病院のベッドで虚ろな目をしていたんだ。
チームメイトは誰も見舞いに来なかった。 向こうの立場で考えたら、元気に野球が出来る人間が平気で顔を出す方が無神経と考えたのかもしれない。
僕の元に来てくれたのは、兄だけだった。
兄の優しい手が僕の手に触れた時、僕は思い切り泣いた。 泣いて泣いて、弱音を吐いて。 無理をさせた監督が悪いと八つ当たりをして、口汚く喚いた。
(79) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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そんな僕を兄は黙って抱き締めてくれた。全て、受け入れて肯定してくれた。
そうだ、僕は何故この温もりを忘れてたんだろう。 僕みたいな何をやっても中途半端なウジ虫が、兄の元を離れたのが間違いだったのだ。
僕は知らなかったが、兄と両親は僕が幼い頃に密かに兄弟がべったりすぎることに懸念を抱いていた。 だから野球を勧め、野球部に入り友達が出来るまでは上手くいっていたのだがーー。
全部元の木阿弥。僕はまた、兄におんぶされて生きることになる。天文部に入ったのは、そうしてまた兄に護られて生きるのが、自分みたいな矮小にはお似合いだと考えたから。
兄以外に僕は、心を曝した事がなかった。 必要がなかったから。 兄がいれば僕の精神の支えはそれで満ちていたんだ。
ーーそんな兄との関係を、僕が自ら壊してしまうまでは。
僕は兄の恋人に手を出した。 彼女を抱き、兄を心底傷つけた。
(80) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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いつも優しく僕を護り導いてくれた兄を、だ。 兄が僕から去るように留学を決めたのは当然の結果だった。 康生は「匡先輩は怒ったり嫌ったりしているわけじゃないよ」と言ったが、そうであったとて、僕が寄り掛かる場所を失ったのは事実だったのだ。
一年間、僕は根なし草のように生きて。 ただ呼吸を続けて。無意味に食べて、無意味に排泄して、いらない存在を維持してきた。
僕の傍には、兄と同じぐらいーー兄と変わらぬ魂の輝きを持つ人物が二人いた。
瑠璃川珊瑚と、柊木康生。 みんなに必要とされる、眩しくてたまらない二人の横で僕はいつも卑屈に笑ってたんだ。
そして、僕は。 合宿で花火が行われた日。 康生に秘密を打ち明けた。
(81) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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ずっと悩んで抱えていたこと。 苦しくて堪らなかったこと。 誰にも言えず、誰にも頼れなかったことを。
ーー楽になりたかったんだ。
僕は強くない。弱くてみすぼらしく、路上の草にも劣る価値しかない人間だから。
その重みに耐える力はない。
もし康生や珊瑚が僕の立場なら、もっと強く自身の問題に立ち向かっただろうけど。
辛ければ逃げたいし、重荷があれば放り出したいのが僕なんだ。
ーーだけど、最低な僕を。 康生が受け止めてくれた。
嫌いじゃないといい、励ましてくれた。 その一生懸命な姿に僕は強い思慕に溢れる。
(82) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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嗚呼、兄さんみたいだ。 兄さんみたいに僕を肯定してくれる人がここにいるじゃないかって。
それはーー強い執着、依存、欲望。
失った兄の代わりを求めた僕は、彼に狂ってしまったんだ。
ーー愛とはなんだろう。
様々な歴史において、賢人たちが議論してきてもその結論は様々だ。正解などない、人それぞれは軽い解答になるが、広すぎて千差万別すぎて、定義など出来ない。
1つ言えるのは求めている愛が得られない場合、愛情に飢えた人間は激しく苦悩する、という事だ。
相手が、相手なりの誠意や優しさで最大限の愛を示そうとも。 むしろそんなものはいらないとはね除けてしまう。
だから、これは自分が得たかった愛なのだと、無理矢理に納得する。
愛なんか幻想だとよく言うけれど。現実や事実より、幻想は優しくて甘いから。
(83) 2023/11/11(Sat) 17時半頃
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