9 ――今宵"秘密"で会いましょう
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「遠坂さんと友達で本当によかった」 「佳子ちゃんがいてくれて良かった」 「ねぇ佳子、今日はずっと一緒にいて」
[ 愛情の受け取り方を知らなかった。 知らなかったから。
欲しがるだけ欲しがって、 あなたの望むものはきっと、
何も返せていなかったのに。 ]
(108) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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こんばんは、マスター。
[ いつかと全く同じ靴音を伴って、 ドアを引く。マスターはいつも、やっぱり変わらない。
変わったのは、 ]
今日は、私が先ですよね よかった。
彼女が来るまでは飲まないって 決めているの。
ブラッドオレンジジュース、ソーダで割ってください。
(109) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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[ 私。 もしかしたら、私達。
出されたフレッシュなソーダを口に含む。 ぱち、ぱちと刺激が口の中を刺していく。
待ち合わせは午後八時二十分。 そして現在は午後八時十五。待ち合わせまでは 後五分。 ]
ねぇマスター、なんのことかは知らなくていいの。 ただ、そうかって、言ってください。
――あの日預けた秘密を、返してもらいに来ました。
(110) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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『……そうか』
[ そして私は残ったソーダを全て飲み干し、 グラスをマスターへ突き返すようにして渡した。
やがて彼女が姿を表したなら、やっぱりきっと 同じお酒を注文する。 ]
潮時かなって、思っていたの。
[ 乾杯の前に、挨拶もそこそこに私は ゆっくりと口を開く。 ]
だってもう、週の半分くらいは 一緒にいるでしょう?だから。
[ プラスチックで出来た安っぽいハートマークの キーホルダーを取り付けたキーを、 バーのカウンターに置くと、ふさわしい安っぽい音がする。 ]
(111) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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諦めて?
[ ああ、少し緊張している。 終わりの近づく音がする。
やめてまだ、しらないふりをしていたい 諦めの悪い友達の柳葉黒英がまだ そんな風に言って私の袖を引くけれど。
残念、もう遅い。
私は唇の両端を引き上げて、緩やかな弧を描く。 ]
(112) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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私に愛されて。 それとついでに、良かったら私を愛して。
[ 伝えたことはきっとなかったから 驚いたかも知れない。
だけどこんな冗談を、酒に酔わない私が 言うわけないってきっと貴方が、一番よく知っている。
誰に聞かれていたって別に良い。 だってここは秘密を閉じ込める場所だから。
貴方の手に、キーホルダーを握り込ませる。
……それでもやっぱり少しは不安もあるもんね。 要らなければ捨てても良いなんて、嘘でも絶対 言えやしない。 ]
(113) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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あ、生演奏始まるね 今日はどんなのかな?
[ 響く弦の音に耳を傾ける。 返事を聞くのが怖いわけじゃないし、 望む答えが返る自信があるわけでもないけれど。
私は視線を生バンドのほうへと遣る。
どう答えてくれてもいい。 どう答えたって、もう、貴方のいない世界なら 色の一つだって、わかりはしないんだから。
ああそれでもやっぱり願わくは 貴方と二人、死ぬまで色を数えていたい。* ]
(114) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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[ こんな時でも。 彼女の語気の強い言葉は変わらない。 そう、こういうところも好きなの。
それを言えるのは、きっと今夜、 柔らかいマットレスの上で。
降り注ぐ言葉の数々をぜんぶ、 取りこぼさないように拾うことに必死だったから
返す言葉は、う、とか、え、とか。 喃語か。
薔薇の本数で意味が違う、そういうの すてきだよね、そう言ったあのときは、 ただの雑談のつもりだったのに。 ]
(121) はたけ 2021/04/25(Sun) 15時半頃
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[ 覚えててくれたの、うれしい も 貴方の言葉への返事 も
今は未だ言えなくて。
私はただ静かに、頷いた。
そうして今夜は泊まってほしいと言えたか 言えなかったか、どちらにしても ふたりとも、やらかなマットレスの上。 ]
(122) はたけ 2021/04/25(Sun) 15時半頃
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