10 冷たい校舎村9
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[ そうして、暮石に視線を向けた時には、 彼女は少し表情が柔らかくなっていた。>>169 物腰柔らか仕様の返答は、暮石に任せよう。
多分、俺とは違う黒沢をずっとよく知っていて、 今も見えている世界が違うんだろうと、思う。
暮石が包むように掌を重ね、>>169 文化祭の思い出を語り出すのを静観していた。>>170
この世界に来てから、 確かに見ていて惨いこともあっただろう。 でも、この世界に来てからいいことはあった。>>172 俺もそうだ。鳩羽も同じ気持ちだろう。>>4:221 それに柊のことも知れたし、>>4:230 向井と本音で話せたのも、>>2:414 この世界に来れたから、この世界じゃなければ、 きっと俺は、知らないままのことが多かっただろう。 ]
(191) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 頭に伸びた掌が、今度はピアノに向かう。>>173 暮石がピアノを得意とすることを知らなかった。 その音色を聞いたこともなかった。
魔法というにはあまりにも雄大で、>>176 お世辞にも完璧とは言い難い一曲だった。
しかし、音楽に詳しい訳ではないが、 技巧の高さだけでは乗せきれない思いが確かにあった。
一直線に黒沢に向かっていく、圧倒する何かが。 ]
(192) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 鍵盤から指が離れ、暮石の眸に涙が溢れる。>>179
きっと、親を亡くした暮石にしか 分からない感覚なのだろうと思う。>>180 黒沢に向けた懇願のような言葉の数々を耳にして、 もう前髪で隠されていない俺の表情も、 ほんの少しもらい泣きしそうになっていただろう。 ]
(193) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 俺も聞きたかったこと。>>184 仮説の話、───もしも手遅れじゃなかったら? ]
もしも、この世界が黒沢の最後のSOSなら 手遅れなんて言わせない、間に合わせてみせる
それに、少しくらいわがまま言ったって ここには誰も咎める人はいないだろ?
俺たちに気を遣う必要だってない 俺たちはいつだって対等な関係にあるんだ
[ 暮石のように、友達≠ニ俺の口からは 自信をもって言えなくてこんな言い回しになる。 ]
(194) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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俺もこのまま、黒沢を思い出にしたくない まだ黒沢の知らないところがたくさんあるんだ
でも黒沢は聡いから、このまま戻れても その先はどうして生きたらいいのかって悩むだろう
でも、俺も暮石も、 それに先に帰ったみんなもいる。 黒沢からのSOSはしっかりと受け取ったから、 もうひとりで悩まなくていいんだ
黒沢の生きる場所は俺たちに作らせてほしい
(195) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 暮石みたいに顔を歪ませるようなことはないが、>>185 やっぱり泣きそうになっている顔は変わらない。
それから、今ぐらいは触れてもいいだろうか? 暮石には気兼ねなく触れられたけど、 やはり黒沢に対しては、許可を取りたくなってしまう。
叶うなら、そうだな。 ほとんど同じ高さにある頭くらい撫でさせてくれ。 **]
(196) 2021/06/15(Tue) 17時頃
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[ 綿見と話せたこと、 それが黒沢の出した結論で、 向き合う努力をしたことを知れれば、 失望なんてする筈もなかったよ。>>210
いや、どんな結果を選んでも、 失望するしないの資格もないんだが。 ]
(213) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[ 三人で帰りたいと、暮石は言う。>>198 同意を求める言葉に、俺は頷いた。>>199
俺が此処にいられるのも、暮石のお陰だった。>>197 教室で動けないで居た俺を迎えに来てくれたのも、 こうして黒沢に近づくよう促してくれたのも、 俺が先延ばしにせず向き合えているのも。
俺にとっても暮石は、 今日限りだったとしても相棒だ。 同じ方向を向いている親しみを持った相棒だ。 ]
(214) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[ でも、黒沢は───… まだ同じ方向を向いてはくれないらしい。>>212
ピアノの演奏を聴いていた黒沢は、 確かに揺れていたように思ったのに、>>207 黒沢の口から溢れでたのは、 楽になりたいというわがままだった。>>208 ]
(215) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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……俺だったら、生きようと思う けど、楽になることが悪いこととは思わない 人は誰しも、楽な方に流れるものだろ
これまで頑張ってきたんだもんな、黒沢は これ以上頑張れとも言えないよ
(216) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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でも、それでも、生きて欲しいと思う これは命令でもなくて俺の我儘でお願いだから もちろんこの手を振り払ってくれてもいい
ただ、黒沢が怖くなくなるまで 俺は絶対に手を離すつもりはない
[ そう言って、片手を差し伸べる。 手を取ってくれなかったら? 多分、俺の顔はようやく歪む。 *]
(217) 2021/06/15(Tue) 21時頃
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[ 俺が言いたいことを、 あの日黒沢がピーマンに例えて説明してくれたように 暮石がかみ砕いて 言葉にしてくれるのを聞いていた。>>227
もしも、黒沢の中が空っぽのように感じているのなら 暮石が心残りをひとつ積み上げたように 俺たちが黒沢の中を埋めてあげたいと思う。 ]
俺も、わがままを言ってみたかったんだよ 人生ではじめてのわがままをここで使うとはな
(243) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 黒沢のひとつ目の願いは、>>234 俺も先延ばしにしてきたことだったから、 どこまで力になれるのか自信はないが。
二つ目の願いは、>>235 俺でも叶えられそうな内容だった。 ]
(244) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ べそべそとクレープを食べる姿が、少し可笑しくて ちゃんと食べ終わるのを待っていた。>>236
それから、黒沢がわがままを言う。 ]
分かった、約束しよう 絶対に叶えてみせる …俺のできる範囲にはなるが、善処しよう
俺の未来にも、黒沢が居て欲しい
[ 今回だけ、特別だからな。 わがままを全部、叶えてやろう。 だから、右手でも左手でもどっちでもいいから、 この手を取って欲しいと思う。
二本の腕は、手を取られるのを待っている。>>228 *]
(245) 2021/06/15(Tue) 23時頃
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[ 握られた手を、強く握り返した。>>250 ]
(253) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ 俺のはじめてを貰った責任は、 ちゃんと取ってもらわないと困る。>>249 だから、俺のわがままが叶うまでは 黒沢から目が離せない。
ところで、俺たちも帰る為には、 これまでの法則からすれば、 マネキンになる必要があるんだろうか?
……それとも、この世界の主が、 帰ると決めたのであれば、 もう少し違う帰り方があるんだろうか? ]
(254) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ そうだ、それから。 ]
帰る前に、言っておきたいわがままはあるか?
[ 現実世界の黒沢がどうなっているのか、 それを俺たちはまだ知らないけれど、 きっとすぐには会えないかもしれないから。
今、こうして話せるうちに聞いておきたい。 ]
(255) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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[ どうやって帰るのかは、黒沢次第。 ただ、この世界から帰る直前に呟くだろう。 ]
───… ありがとな
[ この世界に招待してくれて。 特別だと、思ってくれて。
反対側の腕が暮石の方に引かれれば、>>251 俺の腕も同じように引っ張られる。 黒沢へ視線を向ければ、向こうに暮石が見える。>>252
時の止まった冷たい校舎から、 みんなの待つ明日≠ヨ向かおう。* ]
(256) 2021/06/15(Tue) 23時半頃
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